「これまでの苦しみが消えました」
両陛下、ハンセン病元患者と握手してご懇談。
皇太子殿下、滞在6時間半の“超過密日程”でサウジへ。
天皇、皇后両陛下は28日、お住まいの皇居・御所で、国内外のハンセン病の元患者らと懇談された。両陛下は長年にわたって偏見や差別に苦しんできた元患者や家族を気にかけており、この日も一人一人に寄り添って励まされた。
ハンセン病はらい菌による感染症。日本では明治40年から平成8年まで隔離政策がとられ、患者は15カ所の療養所に強制収容された。全国ハンセン病療養所入所者協議会の森和男会長(74)によると、現在も平均年齢83歳の約1750人が入所している。両陛下は昭和43年以降、療養所の訪問を続け、昨年7月の東北新生園(宮城県登米市)ですべての療養所の入所者との面会を果たされた。
両陛下がこの日懇談されたのは日本、インド、米国、フィリピン、エチオピア、インドネシアの元患者8人。指先に後遺症が出たインドのヴァガヴァタリ・ナルサッパさん(46)は家族にも握手をしてもらえずにいるが、両陛下から手を差し伸べられた。懇談後の会見で「これまでの苦しみが頭から消えました」と感激した様子で語った。
同席した日本財団の笹川陽平会長によると、天皇陛下は「(初期の治療薬の)プロミンが随分効果があったのでしょうね」と詳しく質問もされ、予定を上回る40分間にわたって交流された。最後に、陛下が「みなさんの生活がより良くなるよう願っています」と声をかけられた。
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」による日本人殺害脅迫事件は、皇室のご公務にも影響を及ぼした。両陛下は29日、外務省の平松賢司総合外交政策局長から定例の進講を受ける予定だったが、平松局長が事件に対応できるようにとの配慮で取りやめられた。皇太子さまも28日、同省の岡浩国際情報統括官からの進講を岡統括官からの申し出で中止された。
明治天皇の父、孝明天皇が崩御した日に当たる30日、皇居・皇霊殿で「孝明天皇例祭の儀」が行われ、陛下と皇太子さまが拝礼され、秋篠宮妃紀子さま、次女の佳子さまをはじめ皇族方も参列された。京都・後月輪東山陵(のちのつきのわのひがしのみささぎ)での儀式では、三笠宮家の彬子さまが参拝された。
皇太子さまは25、26日、サウジアラビアのアブドラ前国王の弔問のため、政府特派大使の福田康夫元首相を伴って同国を訪問された。
23日朝に前国王死去の報が伝わり、同日夜にはご弔問を閣議で了解。皇太子さまは25日午前9時ごろに政府専用機で羽田空港をたち、現地滞在は6時間半程度で26日午後4時ごろには帰国するという過密日程を無事にこなされた。
宮内庁などによると、皇太子さまは首都リヤドの空軍基地で、アブドラ前国王の子息のトルキー・リヤド州知事らの出迎えを受けられた。ヤママ宮殿を訪れて、アブドラ前国王の異母弟であるサルマン新国王らと面会し、陛下のご弔意を伝えられた。
サウジアラビアは平成6年、皇太子ご夫妻がご成婚後に初めて訪問された外国。皇太子だったアブドラ前国王とも親交を深められていた。皇太子さまは「懐かしく思い出します」と振り返り、ご自身の弔意も述べられた。新国王は「殿下(皇太子さま)は親友であり、日本を愛しています」と応じたという。
佳子さまは28日、日本橋高島屋(東京都中央区)で「現代女流書100人展」をご鑑賞。幼少期に書道を習った経験もあり、笑顔でご覧になった。30日は紀子さまと豊島区内で開かれた「関東東海花の展覧会」を訪ねられた。高円宮妃久子さまの長女、承子さまも同展をご覧になった。
「現代女流書100人展」をご覧になる秋篠宮同妃両殿下の次女、佳子内親王殿下=28日、東京都中央区の日本橋高島屋