拉致被害者を救出する為に、今、何をすべきか。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

拉致被害者救出の現状

西村眞悟の時事通信より。


平成26年10月18日(土)

 拉致被害者救出の現状は、最大の危機に直面している。
 この危機を克服し、拉致被害者を救出する為に、今、何をすべきか。

それは、五月二十八日のストックホルムにおける局長級の日朝合意の路線を断固切断して、
 原点に立ち返ることである。
 問題の本質は、北朝鮮が、
 「拉致被害者の調査をして調査結果を日本に報告する」ことではなく、
 「拉致被害者全員を、日本に帰すか帰さないか」であり、従って、
  我が国が北朝鮮を、「日本人を帰さなければ北朝鮮の体制が崩壊するまで追いつめること」、
 これが原点である。

 五月二十八日の日朝合意とは、
 十二年前の日朝平壌宣言に則って、北朝鮮が日本人妻、日本人の遺骨そして拉致被害者の調査をしてその調査結果を日本に報告するとするものである。
 では、そもそも日朝平壌宣言とは何か。
 それは、日朝の国交を樹立することを目的として日本が北朝鮮に金を支払う約束であり、
 即ち、拉致被害者救出を目的とする宣言ではないのである!

さて、北朝鮮は、政権内の親中幹部を処刑した結果、対中関係が悪化した。これが北朝鮮がにわかに日本に接近し五月二十八日の日朝交渉に至った理由である。
 すると日本は、喜んで歩み寄り、北朝鮮が特別調査委員会を立ち上げると約束(言葉)しただけで、三分野の制裁を解除(行動)したのだ。
 つまり日本は、「行動対行動」の原則を簡単に捨て去り、「言葉対行動」に転じて北朝鮮を喜ばせたのである。北朝鮮は、「調査する」といっただけで、日本側に「制裁を解除」させた。
 しかも、北朝鮮は、日本人の骨の返還という金になる口実(骨ビジネス)を手に入れたのだ。

 これによって、北朝鮮は、日本からは、拉致被害者を出さずとも、日本人の骨を出せば金を取ることができる、また、拉致被害者に関しては、むしろ強硬に出ておいたほうが言葉だけで金になる、と判断した。
 従って、北朝鮮は、次の態度に出てきたのである。

①特別調査委員会の調査結果を先延ばしして日本に報告しない。
②担当大使のソン・イルホは、「死んだ者を生き返らせることはできない」と言い放ち、
十月七日、北朝鮮の国連副大使は、国連本部で各国大使に「拉致問題は完全に解決済み、日本が義務を果たすべき時」との暴言を吐いた。
③日本側が平壌にくれば、説明してもよいと日本を誘い、拉致被害者には触れずに日本人の骨と墓参を話題にして一体あたり数百万の金を取ろうとしている。

 これに対して日本側は、
 何たることであろうか、外務省の国交樹立の功名獲得優先・拉致被害者無視の路線を走るかの如く、
 此の③の北朝鮮の誘いに応じて、総理と官房長官の主導により、北朝鮮に代表団を出そうとしている。しかも日本側は、北朝鮮に日本人遺族の墓参を国の事業として実施してゆくと伝えた旨の報道がある。
 しこうして、このままでは、北朝鮮は拉致問題には触れぬまま日本から多額の金を獲得し、日本は拉致被害者を無視されたまま、次から次へと制裁を解除しつつ北朝鮮に対する「人道援助」を出す羽目に陥って行く。
 これまさに、北朝鮮の術策の大成功、我が国にとっては、拉致被害者放棄・見殺しではないか。

 よって、我が国は、今何を決断すべきか。
 それは、拉致被害者に関する報告を北朝鮮が為さない以上、これまでの外務省主導の交渉を打ち切ると共に、7月4日に解除した制裁を再び開始することである。その上で、さらに対北朝鮮制裁を強化する。
 そして、同時に、これは「外交交渉」ではないのであるから、
 交渉から外務省を外し、警察・公安を中心とした強力な交渉団を結成する。

 そもそも、犯人に、「何をしたか報告する」といわれて「報告を待っています」という馬鹿は外務省だけだ。
 犯人を問い詰めて「落とす」ことのプロである警察ならそんなことは言わせない。

 十月十六日の、拉致議連緊急総会で、
 特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は、
「外務省が、ソン・イルホを交渉相手にしているのは、先の大戦末期に、ソビエトを通じて和平交渉をしようとしていたのと同じ愚だ」と言った。
 私は、外務省のアジア大洋州局長の秀才的説明を聞いていて、
 急に十二年前の外務省の馬鹿さ加減と悔しさが甦り、腹が立ってきたので次の通り言った。
「貴官らは、何回、北朝鮮に騙されれば気が済むんだ。
十二年前、外務省は帰ってきた五人を本気で北朝鮮に送り返そうとしていた。
大真面目に拉致議連の我らに送り返さなければなりませんと外務省は言ってきたんだ。
 その時、君らの意見に従って、五人を北朝鮮に送り返せばどうなった。
 五人は、平壌で『首領様の元に返れて幸せです』とテレビカメラの前で言わされて、
 全拉致被害者は闇に葬られていたんだ。
 その時、政府内で、五人を北朝鮮に送り返してはならないと主張していたのは中山恭子先生だけではないか。
 貴官らが言うオールジャパン体制とは、外務省の報告を議員が超党派で聞くことではない。
 此の実績と能力のある中山恭子先生を筆頭にした我が国の拉致被害者救出団を編成することだ!」