日本は歴史戦争に負けることは出来ない。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【河村直哉の国論】
産経ウェスト

中国が流す「戦犯供述書」は宣伝謀略そのものだ。
もはやこんな歴史戦に負ける日本ではない。
正確な事実を積み重ね、反論すべし。



中国共産党の機関紙「人民日報」のニュースサイト「人民網」日本語版。旧日本軍の戦犯45人の自筆「供述書」を読めるが、紙面とネット版の差、そして日本語版の編集担当による“バイアス”を微妙に使い分けて“歴史戦争”を展開している


7月来、中国が公開を続けてきた旧日本軍の戦犯45人の自筆「供述書」が出そろった。中国共産党の機関紙「人民日報」のニュースサイト「人民網」日本語版で読める。中国による歴史戦争の一環だが、宣伝戦の域を出ない。

過去にも朝日・岩波が

 歴史戦争とは心理戦であり世論戦であると、改めて認識しておきたい。歴史という国民のアイデンティティーを攻撃し、内からも外からも揺さぶることで、兵を交えることなく屈服させるという、中国の古典兵法の考え方をなぞるように行われている。

 敵が親しんでいるなら分裂させよ、交わりをうて、とは、すでに「孫子」に書かれている。現代でいえばその国の内部でその国を否定する世論を作って分裂させ、また外交関係を傷つけようとする。兵を交えないで相手を屈服させるという古典兵法の考え方なのである。

 最近それが典型的に見られたのが慰安婦問題であり、多くの日本人が憤っているのもこの間、見られている通りだ。

 実は今回中国が取り出してきた供述書は、すでに平成10(1998)年、日本の写真家が入手し、日本の新聞などで取り上げられている。同年4月5日付の朝日新聞は1面、4面のほか、社会面のトップでも取り上げた。社会面の見出しは「わび続けるのが使命」「軍国主義 洗脳された」など。さらに供述書は、「侵略の証言」「中国侵略の証言者たち」という本となって岩波書店から出版されている。

 もはやこのような日本の偏向、すなわち左傾は、大きく修正されようとしている。今回、この供述書が日本でほとんど取り上げられないのも、それを示していよう。かつてのように同調する左傾勢力を見かけないのである。

印象操作を狙うも逆効果…「供述書」も岩波コピペ、中国による洗脳が露呈

中国大陸であった過去、ときには残酷な行為も、筆者は正面から見るべきと考えている。しかしそれは中国の一方的なプロパガンダに乗るようなものであってはならない。一方に偏らずまず事実を見ることから始め、批判、共感すべきものだ。

岩波コピペ…加えて洗脳

 念のため筆者は、今回「人民網」で公開された45人と、岩波の「侵略の証言」にある45人の一覧表を比べてみた。漢字の誤記と思われるものが2件あるが、全員同じだった。かつても日本に持ち込まれた資料が、プロパガンダ戦のために改めて取り上げられたわけだ。

 それはさておき、供述書の内容を少し見てみよう。 「人民網」で最初に取り上げられるのは鈴木啓久(ひらく)第117師団長。「農民約100名を惨殺しました」などと「供述」している。妊婦の腹を割く、などの記述も出てくる。

 実はこれら供述書には、「検証 旧日本軍の『悪行』」という本で史家の田辺敏雄氏が検討を試みている。帰国後、出身の仙台陸軍幼年学校の会報で答えたインタビューで、鈴木師団長はこういっている。

 「ありもしないことを住民が何だかんだといいますからね。“鈴木部隊が、ここにこういう風に入って来た”と住民がいうので、“そんな所に私の兵隊を配置したことはありませんよ”といったって、“住民の言うことに間違いはない”と言うんだから。まあ、他隊の者がやったこともあるでしょうし、広い場所だから、やっぱり止むを得ないんですよ。罪を犯した本人が居らなければ、そこにおった司令官が罪にされるのは当然だと思って“ああ、そうですか”って」

 長い拘留生活、徹底した思想改造の末の「供述」である。客観的に見て、戦犯たちはあらぬ罪状を認めるよう洗脳されていた可能性が極めて高い。

中国共産党60年間も不変の思想工作…徹底し反論せねば第2の朝日新聞が

徹底した思想工作

 田辺氏前掲書は、1950年以降の戦犯収容所での「学習」「思想改造」についてまとめている。朝鮮戦争が始まっており、中国共産党が対資本主義国とのイデオロギー闘争に力点を置いていたことにも注意を払っておきたい。

 学習班が組織され、レーニンの「帝国主義論」や日本共産党編集の資料が回し読みされ、討論される。次に自らの「戦争犯罪」の告白へと移り、尋問が始まる。収容所の管理所長が設定した議題は、「現在の監禁生活を抜け出して新しい人生を始めるにはどうしたらよいか」など。進んで罪を認める者には寛大な措置が期待され、逆の者には刑が重い、と思い込ませた。自白書を書いては戻され、また書き直すということが続いた。

 前掲書が引くある軍曹の回想はこうである。「『学習』『認罪』『自己批判』、とめどもないこの運動、朝起きると寝るまで、一ときたりとも頭の休まる時がない」「一体、国に帰れるのか、それとも殺されるのかと不安な空気が部屋中に充満する」「多くが抹消神経症にかかり、重症者は小便の出るのもわからない始末であった。また、記憶にも錯覚が起こってくる」

 このような中で作られた「供述書」の信頼性は極めて乏しい。

日本も反論の準備を

 ただし、信頼性が乏しいからといって放っておくのはよくない。虚偽が積み重なり、一人歩きしてゆゆしき事態になっているのは、現在の慰安婦問題に見る通りだ。反論すべきことがらにはしっかりしておくべきである。

 日本は左傾という長い病から解き放たれつつある。歴史戦争に負けることはできない。

(大阪正論室長)

=随時掲載します