朝日の自己正当化と責任転嫁 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



特集「慰安婦問題を考える」を8月5、6両日付の朝刊に掲載した朝日新聞。これで歴史を直視したと言えるのか?


朝日新聞「慰安婦問題を考える」を検証する
随所に自己正当化と責任転嫁



■朝日よ、「歴史から目をそらすまい」

 朝日新聞が5、6両日に掲載した特集「慰安婦問題を考える」はいくつか視点の欠落があり、「検証」と言うにはあまりに不十分な内容だった。朝鮮人女性を強制連行したと証言した自称・元山口県労務報国会下関支部動員部長、吉田清治氏の証言に関する記事16本を取り消したのはよいが、その他の論点に関しては自己正当化や責任転嫁、他紙の報道をあげつらう姿勢が目立つ。歴史を直視しようとしない朝日新聞の報道姿勢に改めて疑念を抱かざるを得ない。(阿比留瑠比)

 5月19日、北九州市内のホテルで、朝日新聞社西部本社の旧友会(OB会)が開かれた。OBで北九州市在住の伊藤伉(つよし)氏は手を挙げて来賓に招かれた木村伊量社長にこう訴えた。

 「慰安婦と女子挺身隊の混同、吉田清治氏の嘘の2点については訂正・削除して朝日の名ではっきり示してほしい。それを何としてもやるべきではないか」

木村社長は「貴重なご意見をいただいた。詳しいことはここで言えないが、いずれ検証したい」と応じたという。この出来事は、朝日新聞社内でも、自社の慰安婦報道に問題があることが認識されていたことを物語っている。

 にもかかわらず、2日間にわたる特集に謝罪の言葉はなく、言い訳に終始した。

◆  ◆  ◆

 5日の特集では、見開きで「慰安婦問題 どう伝えたか 読者の疑問に答えます」と大見出しを打ち、【強制連行】【「済州島で連行」証言】【軍関与示す資料】【「挺身隊」との混同】【元慰安婦 初の証言】-の5つのテーマを検証している。

 ところが、「虚偽」と断じて記事を取り消したのは、吉田氏による強制連行に関わる証言だけだった。

 挺身隊と慰安婦の混同については「まったく別」で「誤用」と認めながらも当時の「研究の乏しさ」を理由に釈明を重ね、「1993年(平成5年)以降、両者を混同しないよう努めてきた」とむしろ胸を張った。

果たしてそうなのか。朝日新聞の4年3月7日付のコラム「透視鏡」ではこう記している。

 「挺身隊と慰安婦の混同に見られるように、歴史の掘り起こしによる事実関係の正確な把握と、それについての(日韓)両国間の情報交換の欠如が今日の事態を招いた一因」

 つまり、この時点で挺身隊と慰安婦が全く別の存在だと把握しながら、自らの誤用を認めることも、訂正することも拒んできたことになる。

 産経新聞が今年5月、朝日新聞広報部を通じて、慰安婦と挺身隊の混同や強制連行報道について「今もなお正しい報道という認識か」と質問したところ、こんな回答を得た。

 「従軍慰安婦問題は最初から明確な全体像が判明したという性格の問題ではありません。(中略)お尋ねの記事は、そのような全体像が明らかになっていく過程のものです。当社はその後の報道の中で、全体像を伝える努力をしています」

 初めは全体像が分からなかったから間違いを書いても訂正しなくてもよいと言わんばかりではないか。しかも、今回の特集まで朝日新聞に慰安婦問題の「全体像を伝える努力」はうかがえなかった。

今回取り消した吉田証言についても、5月の段階で「訂正する考えはあるか」と質問したところ、次のように答えている。

 「弊社は1997年(平成9年)3月31日付朝刊特集ページで、証言の真偽が確認できないことを詳細に報じ、証言内容を否定する報道を行っています」

 実際はどうだったか。9年3月の特集ページでは、吉田氏について「朝日新聞などいくつかのメディアに登場したが、間もなくこの証言を疑問視する声が上がった。済州島の人たちからも、氏の著述を裏付ける証言は出ておらず、真偽は確認できない」と記しただけだ。吉田証言を16本もの記事で取り上げておきながら「真偽は確認できない」の一言で済ませ、「証言内容を否定する報道」を行ったとは言えない。むしろ過去記事の過ちを糊塗(こと)しようという意図が浮き上がる。

 今回の特集でも、自社が吉田氏のどの証言をどう取り上げてきたかについてはほとんど触れていない。これでは、何のことだか分からない読者も少なくないだろう。

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 「強制連行」に関する検証も、朝日は平成3~4年ごろは自明の前提として報じており、4年1月12日付の社説「歴史から目をそむけまい」では「『挺身隊』の名で勧誘または強制連行」と断じている。

 その後、強制連行説の雲行きが怪しくなってくると、徐々にトーンを弱め、「強制連行の有無は関係ない」というふうに変えていった経緯があるが、そうした事情も説明していない。

 今回の特集では「読者のみなさま」に「軍などが組織的に人さらいのように連行したことを示す資料は見つかっていません」と言いながら、こうも書く。

 「インドネシアや中国など日本軍の占領下にあった地域では、兵士が現地の女性を無理やり連行し、慰安婦にしたことを示す供述が、連合軍の戦犯裁判などの資料に記されている。インドネシアでは現地のオランダ人も慰安婦にされた」

 兵士の個人犯罪や、冤罪(えんざい)の多い戦犯裁判の記録を持ち出し、なおも「日本の軍・官憲による組織的な強制連行」があったかのように印象操作していると受け取られても仕方あるまい。

「軍関与示す資料」とは、朝日新聞が4年1月11日付朝刊で大きく展開した記事「慰安所 軍関与示す資料」を指す。

 政府の河野談話の作成過程検証チームは6月20日、この「主として朝鮮人女性を挺身隊の名で強制連行した。その人数は8万とも20万ともいわれる」と事実ではないことを書いた記事についてこう指摘した。

 「朝日新聞が報道したことを契機に、韓国国内における対日批判が過熱した」

 ところが、朝日新聞の5日の特集では、自社の報道が日韓関係を悪化させたという認識は欠落している。朝日が繰り返し取り上げたことで吉田証言が韓国でも広く知られるようになり、それが対日感情を悪くしたことへの言及もない。

 6日付の特集では、わざわざ1ページを割いて「日韓関係 なぜこじれたか」と題する解説記事を載せたが、ここでも自社の報道が両国関係をこじらせたことへの反省はみられない。

 「元慰安婦 初の証言」は、元朝日記者の植村隆氏(今年3月退社)が3年8月11日付朝刊で書いた「元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀重い口開く」という記事を指す。

韓国メディアより先に、初めて韓国人元慰安婦の証言を伝えたもので、これも「母に40円でキーセン(朝鮮半島の芸妓(げいぎ))に売られた」と別のインタビューなどで語っている金学順氏について「『女子挺身隊』の名で戦場に連行」と記している。

 この誤った記事が慰安婦問題に火が付いた大きなきっかけとなったが、朝日は検証で「意図的な事実のねじ曲げなどはありません」と非を認めなかった。少なくとも事実と異なることを流布させたのだから、せめて謝罪や訂正があってしかるべきだが、それもない。

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 問題点はほかにもある。朝日新聞は「他紙の報道は」という欄を設け、産経、読売、毎日各紙もかつて吉田証言を取り上げたり、慰安婦と挺身隊を混同したりした例もみられたと指摘した。「お互いさまじゃないか」と言わんばかりなので、朝日新聞の9年3月31日付の慰安婦に関する社説「歴史から目をそらすまい」を引用したい。

 「ほかの国は謝っていないからと、済まされる問題でもない」

 朝日新聞の慰安婦報道により国際社会での日本の評価がどれだけ失墜したか。国民がどれほど不利益を被ったか。今後も検証していかねばならない。