詐欺師・カンチョクト | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



【九州から原発が消えてよいのか? 第8部(5)】
菅元首相の大失策、欠陥まみれ買い取り制度 詐欺まがい
太陽光トラブル噴出


仙台市の不動産会社が建設を進めるメガソーラー。ロハス電力とのトラブルで工期は大幅にずれ込んでいる=長崎県雲仙市

雲仙普賢岳のふもと、長崎県雲仙市の山中でメガソーラー(大規模太陽光発電所)の建設が進む。仙台市の小さな不動産会社が遊休地約2万3千平方メートルを使い、総出力1900キロワットの太陽光パネルを設置し、稼働が始まれば、すべての電気を九州電力に販売する。

 だが、メガソーラー建設は一時、頓挫しかけた。

 不動産会社は昨年からメガソーラー事業に本格参入したばかり。用地や施工業者を探していたところ、コンサルタント会社を通じ、福岡市に本社を置く「ロハス電力」を紹介された。

 不動産会社は昨年9月、総工費7億円でメガソーラー建設をロハス社と契約し、前金として10~11月に2億円を支払った。

 当時、ロハス社は「エネルギー革命」をうたい文句に、太陽光発電に取り組んでいた。「脱原発」「再生可能エネルギー普及」の世論を追い風に、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。

 だが、実態は寒いものだった。ロハス社の創業者の代表(32)は事業への融資を歓楽街・中洲での高級クラブ運営資金にあてるなど、放漫経営が明るみになり、金融機関は融資をストップした。

 代表は昨年12月、突然退任した。不動産会社には今年1月に「諸事情で工事にかかわることができなくなった」と一方的に通告し、工事を中断したという。

 ロハス社は社名を「グローバル・エナジー・ジャパン」に変更し、本社所在地も実態のない東京都港区に移した。140人いた社員は今年2月までに全員解雇か退職した。5月には、東京地裁から破産手続き開始決定を受けた。

 ロハス社から不動産会社に2億円の説明はなく、代表とは現在も連絡が取れない状態だという。

不動産会社は雲仙市のメガソーラーについて、ロハス社から工事を受注した業者と契約をやり直し、建設を続ける。

 不動産会社幹部は「私たちと契約したときには、資金繰りが困難だという認識があったはず。やり方は詐欺まがいで、一時は刑事告発も考え、弁護士とも相談した。破産管財人に任せているが、2億円のうちどれほど回収できるか…。それなりの損失は覚悟している」と肩を落とす。

 ロハス社の負債総額は少なくとも13億5千万円にのぼる。他の企業とも同様のトラブルを抱えており、今後被害は拡大する様相を見せている。

   

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 家庭用の太陽光発電を巡るトラブルも多い。

 「執拗な太陽光発電の勧誘で契約してしまった」「解約を求めても応じてくれない」

 国民生活センターには、平成23年以降、こうした太陽光をめぐる相談が急増した。22年度は2692件だったが、23年度は3935件、25年度は4708件と年々増える。

 詐欺事件も全国で相次ぐ。

 今年5月、神戸市内の70代男性に兵庫県淡路市内に所有する土地に太陽光発電施設を格安で設置すると持ちかけ、頭金名目に150万円を詐取した別荘管理業の男が兵庫県警に逮捕された。

太陽光ばかりでなく、九州に多い温泉を利用したバイナリー発電をめぐるトラブルもあった。

 バイナリー発電はお湯を使って、沸点の低いアンモニアなどを沸騰させ、タービンを回す。熊本県内のある温泉地では今春、旅館経営者らを対象にバイナリー発電への投資を呼びかける説明会が開かれた。

 ところが、業者側が提出したデータが、バイナリー発電による発電量を過剰に算出していたことが判明し、紛糾したという。

 出席した温泉旅館経営者は「誤ったデータで、数百万円から数千万円の投資を呼びかけるんですよ。発電量が計画より少なければ損失です。詐欺としか言いようがない」と憤った。

   

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 再生可能エネルギーに関してトラブルが相次ぐ背景には、平成24年7月にスタートした固定価格買い取り制度(FIT)がある。

 電力会社が支払った買い取り費用は、すべての家庭や企業が払う電気代に上乗せされる。

 FITは東日本大震災当時の首相、菅直人が原発ゼロを目指し、導入に執念を燃やした。菅は23年8月、自らの首相退陣と引き替えに再生可能エネルギー特別措置法を半ば強引に成立させた。

 このFITが「太陽光バブル」を引き起こした。

 太陽光について、1キロワット時あたり42円(26年度は34・5円)と高値がついたからだ。石炭火力の1キロワット時あたりの発電コスト9・5円と比べると、いかに高値で買い取られるかがわかる。

4人家族の標準的な家庭が、1カ月に使う電力量は300キロワット時程度だ。

 メガソーラーは稼働から平均して10年で費用を回収できるとの試算もある。買い取り価格は20年間固定なので、残り10年は利益を出し続ける。

 FITは、初期投資さえすれば、後の利益を国が保証する制度といってよい。このメリットに多数の企業が飛びつくのは当然の成り行きだった。

 九州7県で稼働している太陽光発電の総出力は、平成24年12月末の14万キロワットから、26年2月末には171万キロワットと10倍以上になった。全国794万キロワットの2割を占める。

   

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 急成長に伴うトラブルばかりでなく、もともとFITは制度自体に大きな矛盾をはらむ。

 一番は原発が停止する中での電力需給の不安解消にまったく役立たないことだ。

 太陽光の総出力が全国の2割を占める九州であっても、昨夏の発電量は最大60万キロワットだった。需要1600万~1700万キロワットの3%でしかない。この数値は、晴天の正午前後4時間の「瞬間」発電量であり、夜間や雨天はほぼゼロだ。需要に応じた発電など夢のまた夢というほかない。

 全国の原発が停止したまま迎える今夏も、太陽光発電の発電量は昨年並みだ。

 さらに、FITの認定を受けながら、事業を始めない業者も多い。

 実際、経産省が認定した全国の太陽光発電の総出力は3904万キロワット(今年2月末)だが、稼働しているのは3分の1に過ぎない。

慌てた経産省は今年2月、事業に進展がみられない672件の調査に乗り出した。土地を買って認定を受けた後、権利を第三者に転売する事業者の多いことがわかった。経産省は6月末までに144件の認定を取り消した。

 経産省による認定の甘さが浮き彫りとなった形だが、認定された設備が稼働すれば、今度は家庭や企業の負担が急増する。

 電力中央研究所(電中研)の試算によると、FITの認定を受けた再生可能エネルギーの設備がすべて稼働した場合、各家庭への電気料金の上乗せ額が現在の3倍に膨らみ、年間1・9兆円になるという。この結果、標準家庭の電気料金は1割上昇する。

 原発停止に伴い、LNGなど燃料費の増加が3・6兆円。その半分程度もの巨額な費用が電気利用者の負担となり、しかも電力不安にはほとんど寄与しない。

 震災後のドタバタの中で、「再生可能エネルギー普及」という一見高邁な理想を掲げ、欠陥だらけのFITを実行した民主党の菅政権の罪は重い。

 先の電中研の試算によると、この先20年間でFITによる国民負担は総額38兆円に上る。

 経産省は今年6月に有識者委員会を設立し、買い取り制度の見直しに向けた議論に着手した。再生エネ導入で先行する海外の事例を参考にし、買い取り量に上限を設けることも視野に負担軽減策の導入を検討する。(敬称略)

     

 再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT=Feed-in Tariff) 太陽光や風力発電で起こした電力を、国が定めた価格で一定期間にわたって買い取るよう電力会社に義務付けた制度。再生可能エネルギーへの参入を促すのが狙い。日本では平成24年7月に導入された。買い取り価格は、経済産業省の有識者委員会が発電設備の導入コストの動向などを踏まえ、毎年見直す。太陽光発電の買い取り価格は、24年度は1キロワット時あたり42円(出力10キロワット以上)、25年度は37・8円、26年度は34・5円だった。買い取り費用は、賦課金として、すべての電気利用者が支払う電気代に上乗せされる。平成26年度の賦課金は月額225円となっている。