西村眞悟の時事通信より。
No.962 平成26年 4月25日(金)
二十三日夜、アメリカのオバマ大統領が国賓として来日し、二十四日、首脳会談が行われ、本日離日する。
そこで、このオバマ来日と日米首脳会談に関して、ニュース的にではなく、私なりに思ったことを記しておきたい。
まず、この度の日米両国の接触において、
今さらのように、我が国の最大のものは
天皇の御存在であることが明らかになっているということ。
このことを、私は強く感じた。
今朝の産経新聞も読売新聞も、宮中晩餐会に於ける
「天皇陛下のお言葉」の全文を掲げている。
まことに適切な報道姿勢である。
外務省は、全アメリカ国民が、英文でこの「お言葉」を読めるような措置を講ずるべきだ。
この「天皇陛下のお言葉」の基に、
日米首脳同士の個々のやりとり、会談があったからである。
次に、我が国の外務省が全力を挙げて逆立ちしてもかなわない外交力を持った存在が我が国にある。
それは、十三歳で北朝鮮に拉致された横田めぐみさんのご両親、
横田滋さんと早紀江さんご夫妻である。
ご夫妻は、三月、ウランバートルに行って、めぐみさんの娘と孫に会った。
ウランバートルでご夫妻を待ちかまえる北朝鮮の戦略を思えば、
老夫妻が身に寸鉄を帯びずに「虎の穴」に入っていくようなものである。
しかし、ご夫妻は、驚嘆すべき気丈さで、北朝鮮の意図を見抜きそれを挫きながら、孫とひ孫に優しく接し続けて帰国したのだ。
そして、心身ともにしんどかったことはおくびにもださずに、
素晴らしい笑顔で、孫と会えた嬉しさを語って、日本中を喜ばせるとともに、改めて、全国民に拉致された被害者救出の重大性を強く自覚させたのである。
拉致被害者救出が、我が国の最優先の重大課題だとするならば、全日本人の心を救出に向かわせる目に見えない力をもつ横田ご夫妻は、まことに我が国の大切な存在である。
従って、この横田ご夫妻が、オバマ大統領と会ったことは、
実に意義深いことだ。
とはいえ、会談時間が十分と伝えられているが、外務省はこの大きな外交力を持つご夫妻の会談時間を、せめて三十分に出来なかったのか。そういうのが外務省の仕事ではないか。
横田早紀江さんは、かつてワシントンでブッシュ大統領と会見した。その時、公務多忙の中で予定を調節して早紀江さんとの会見時間を作った理由を聞かれたブッシュ大統領は、
「あの素晴らしいお母さんに会うことに優先する公務はない」と答えたという。
横田早紀江さんには、会う人の魂を動かす力がある。
彼女は、めぐみさんの母であり、日本の母の象徴である。
さて、日米首脳の個々のやりとり、会談のことに移る。
オバマ大統領が、
尖閣に日米安保が適用されると明言したことに関して、
「『安全保障は満額回答だ。こちらの要望は全部受け入れられた』
外務省幹部は胸を張った。」(産経新聞朝刊)
とは、何だ。
この外務省幹部の恥知らずが。
自国の領土を他国に守ってもらうことが我が外交の目的か、無邪気に喜んで胸を張るな。この外務省幹部は、属国の外交官か。
明治の陸奥宗光、小村寿太郎をはじめとする歴代外務大臣にどやされるぞ。
領土を守り、国民を守ることは国家の存立をかけた課題である。
従って、あくまで、領土と国民を自力で守ることが国家の仕事である。
外務省幹部は、横田めぐみさんを、アメリカが救出すると言ってもらえば胸を張るのか。そうではないのなら、領土に関して、まず、我が国の国防力を点検して課題を把握するべきであり、アメリカ様が守ってくれると無邪気に喜ぶな。
要するに、今回の首脳会談において、オバマ大統領が尖閣への日米安保適用を明言したことを、日本外交の「目的達成」と喜んで胸を張ってはならないのだ。
この首脳会談の結果を、我が国家体制の欠落が露呈したものと捉えて、改めてまなじりを決して軍事的実力増強に向かう覚悟を新たにしなければならないのだ。
とはいえ、こういう欠落した体制の中で、
外交を担当する者の苦労は分かる。
しかし、今の苦労は明治の苦労に比べればどうということはないではないか。
ともかく、その苦労があるからと言って、国家の本来のあり方を見失ってはならない。
次に、オバマ大統領が、国賓であるにもかかわらず、夫人を同行してこなかったことに関して、思うことを述べる。
結論は、同行してこなくてよかった、ということだ。
これは理屈ではなく、直感である。
オバマ大統領の夫人と娘二人は、先日、長々と中共を旅行していた。そして、習近平主席とその夫人の接待を受けて大満足したようである。
この情況を見ていて、私は、オバマという人物を疑った。
「この男は、国家というものが分かっていないのではないか」
と思ったのだ。
少年時代からの友人同士ならともかく、現実の国家間において、相手の領域に、女房と子供を送ると言うことは、相手に対して恭順の意思を表すということである。
このことは、我が徳川幕府が、各藩を従わせるために、江戸に誰を住まわせたかを考えれば容易に分かることだ。藩主の女房を江戸に送らせたのだ。戦国時代なら、女房を相手に送れば、「人質を差し上げる」ことを意味した。
中華人民共和国はアメリカ合衆国の友好国なのか。
そうではない。両者は、軍事的対抗関係に立っている。
中共軍首脳は、アメリカが中共に核攻撃を仕掛けるならば、アメリカの西海岸の全ての都市は破壊されることを覚悟せよと言っている。
その中共にオバマ大統領は、女房と娘を送った。
国家主席夫妻から、支那式の歓待をされて無邪気に喜んで帰ってきた女房と娘を見て、オバマも無邪気に喜んだであろうが、習近平は、貸しを作ったと、ほくそ笑んでいるだろう。
また、彼ら夫婦と中国共産党は、オバマの女房と娘を連日歓待しながら、中共のすばらしさと日本の悪さを十分に吹き込み、それは女房らの血液となって全身を廻っている。
何しろ、習近平は、直前にベルリンに行ってなりふり構わずに日本の悪口を言ってきた男である。
従って、こういう公私も分からないがさつな女房が、
我が国の宮中に来て、
天皇皇后両陛下といっしょに食事をして欲しくないと、
私は素直に思うのである。