【目覚めよ日本】
ジンクス破った安倍首相の実力 消費税に手をつけた政治家は…。
ZAKZAK 夕刊フジ安倍首相はダボス会議で存在感を発揮した(共同)
今年60歳となる安倍晋三首相は、私(75歳)より随分若い政治家だ。私は、安倍首相と一度も会ったことがない。父の晋太郎元外相や祖父の岸信介元首相には、インタビューしたことがある。私としては、すでに鬼籍に入った2人の政治家よりも、この若き日本の首相の方が好きだ。
彼はハッピーマンであり、ラッキーマンだ。政治家としての運は抜群にいい。今月から消費税が8%に上がったが、大きな混乱は起きていない。数年前なら、消費税に手を付けた政治家はみなダメになってしまうというのが通説だった。そのジンクスを破った。
英語に「TIMING IS ALL」というのがある。「タイミングがものを言う」と訳すべきか。すべてが安倍首相に合わせて動いているような気がするくらいだ。
安倍首相が優れているのは勘どころだ。
先月末、安倍首相は核安全保障サミットとウクライナ問題をめぐるG7(先進7カ国)首脳会議に出席するためにオランダを訪れた際、博物館「アンネ・フランクの家」に足を伸ばした。ユダヤ人であるアンネ一家が、ナチス・ドイツから逃れて2年間隠れ住んだ家を博物館にしたもので、「アンネの日記」はここで書かれたものだ。
この訪問は、素晴らしい発想だった。
安倍首相がアンネの写真の前で「歴史の事実と謙虚に向き合い、事実を次の世代に語り継ぐことで世界平和を実現したい」と語ったことは、世界に良い印象を与え、書籍棄損事件や、自身の歴史認識でのマイナスイメージを払拭した。
実際、安倍首相は外国メディアにとても好意的に受け入れられている。例えば、今年1月のダボス会議だ。フィナンシャル・タイムズ紙の記者で、会議に参加した私の友人が話していた。
「参加した首脳の中で、特に目立った人物が2人いた。その1人が安倍首相だった」
ダボス会議には、世界中から政財界の要人が約2万人参加する。そのなかで頭角を現すのは、並大抵のことではない。
先の友人は、安倍首相が講演したとき、すぐ近くで聞いていた。親しい関係ではなく、ほとんど初対面だったが、安倍首相に魅了されたらしい。
私は、安倍首相は世界のリーダーの中で突出した存在だと思っている。
先のG7で、安倍首相はウクライナに1500億円の経済支援を行うと表明した。より大きな利害関係があるEUでも、支援総額で1000億円くらいだ。中国やロシアは拠出しないだろう。日本が世界に果たす役割が大きいことを示した。
英国の首相だったトニー・ブレア氏は、安倍首相と同世代の61歳だが、もう現役の政治家ではない。オバマ米大統領は52歳と安倍首相より若いが、すでにレームダックだ。国内経済を復活させ、安定した支持率を維持する政治家は、安倍首相以外に見当たらない。 (構成・安積明子) =おわり
■ヘンリー・S・ストークス 1938年、英国生まれ。61年、オックスフォード大学修士課程修了後、62年に英紙『フィナンシャル・タイムズ』入社。64年、東京支局初代支局長に着任する。以後、英紙『タイムズ』や、米紙『ニューヨーク・タイムズ』の東京支局長を歴任。著書に「英国人記者が見た 連合国戦勝史観の虚妄」(祥伝社新書)、共著に「なぜアメリカは、対日戦争を仕掛けたのか」(同)など。