「防衛生産・技術基盤戦略」に対する提言案のポイント
ZAKZAK 夕刊フジ「昭和45(1970)年のものなんてもう古い」
実は同年生まれである私は、確かにもう古くなってはいるが、使い物にならないほどではない…と思っている。しかし、「古い」と言われているのは防衛庁時代の事務次官通達で「国産化方針」と呼ばれているものだ。
これについて防衛省は「国産化方針」を見直し、国際共同開発・生産へと舵を切るとかねて明言しているのだが、新聞各紙を見ると、あたかも防衛省・自衛隊が「国産」を見直して、国際共同開発に転換するかのように書かれている。
しかし、防衛省によれば、これは昭和45年の「国産化方針」という名称の事務次官通達そのものを見直すということであり、「国産」をやめて、国際共同開発をするといった考え方ではないということである。
こうした中、自民党は10日、国防部会・防衛政策検討小委員会において、防衛省が5月に策定する予定の「防衛生産・技術基盤戦略」に対する提言案をまとめた。
その柱となっているポイントに驚いた人も多かったのではないだろうか。
「国産あっての国際共同開発…」
「『国産化方針』の理念を踏襲する…」
防衛省の定める戦略の方向性と、自民党提言はまるで正反対のようだ。防衛省vs自民党という構図と捉えられてもおかしくない。
自民党提言では、しっかりした国内技術がなければ共同開発に参画したくでもできないのだから、いわゆる「国産化方針」の考え方を踏襲した上で、新たな「国内生産基本方針」として(「国産化」はすでにかなり達成されたため)、防衛省が策定予定の「戦略」に盛り込み、それを政府方針とするべきだとしている。
自国に技術がないものは輸入をすることになるが、その場合でも国内企業が関与することで、「国内生産」の形をとるべきだとしており、それらをひっくるめて「国内生産基本方針」としている。
当欄でもかねがね述べてきたことだが、輸入もライセンス国産など自国に将来的にメリットが得られるような方法で取り入れればいいのだ。それに、世界では輸入する側が輸出国に何らかの見返りを要求する「オフセット取引」が主流なのである。
いずれにせよ、古い(?)通達を見直すことには変わりなく、防衛省と自民党が真逆の主張をしているわけではないのだろう。そうではないことを願いたい。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。