【突破する日本】
アンネ事件をめぐる論調と中国が展開する「安倍政権とナチスの結びつけ」
ZAKZAK 夕刊フジ東京や横浜の図書館・書店で、アンネ・フランクの関連書籍が破られる事件について、朝日新聞は「日本社会が右傾化」と題する「排外主義的な動きに詳しい高千穂大の五野井郁夫准教授」のコメントを掲載している(2月28日付)。
「(安倍晋三)首相の靖国参拝が一定の支持を集めるような社会の右傾化が背景にあるのではないか。(中略)その延長線上で、敗戦国が反省すべき象徴とも言えるホロコーストに関する本が狙われたのではないか」とし、安倍政権や支持する人たちが事件の土壌を作ったと言わんばかりだが、飛躍が過ぎやしないか。
安倍首相はもちろん、支持者を含む、普通の日本人には反ユダヤの感情はない。むしろ歴史的にも好意的でさえある。
この点、毎日新聞はまだ健全だ。2月28日付の紙面に「日本は確かにナチスドイツと同盟関係にあったが、ナチスの再三の要求にもかかわらずユダヤ人迫害に同調することはなかった」「日本の歴史に反ユダヤ主義を見るのは難しい。仮に今日の日本が『右傾化』し軍国主義が復活しつつあるとの前提に立っても、だから『アンネの日記』を破る者が出るのだという立論は乱暴である」との、「社説:視点」(布施広論説委員)を掲載している。
これは、中国人民解放軍の機関紙「解放軍報」(2月26日付)が「日本のサイトで『アンネの日記は(事実ではなく)小説だ』とする言論が大量に見いだされる」と批判し、韓国のテレビが「極右主義者の仕業である可能性が指摘されている」「日本社会にはヒトラーを追従する勢力が少なからず存在する」などと報道していることを受けた反論だ。
だが、日本の「右傾化」とさんざん煽ってきた点では毎日も同じで、今ごろになって、海外のあまりの反応に、手を焼き始めたということか。
中国は、昨年末の安倍首相の靖国神社参拝について、世界各国に駐在している中国大使らを約70カ国で現地のテレビ・新聞に登場させ、批判する作戦を展開した。
駐仏大使は「ヒトラーの墓に花を手向けることを想像してほしい」(1月16日付、フィガロ紙)とし、1月末のスイスのダボス会議でも王毅外相が「日本のA級戦犯はアジアのナチスだ。欧州の指導者がナチスの戦犯に献花したら、欧州の人たちは許せますか」と発言している。
中国は、安倍首相とナチスを結び付けようとしてきた。そういった中で事件が起きた。犯人が特定されていない朝鮮学校の制服(チマチョゴリ)切り裂き事件をも彷彿させる、出来過ぎの事件ではないか。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早大法学部卒業。同大学院政治学研究科博士課程中退。国家、教育、歴史などについて保守主義の立場から幅広い言論活動を展開。第2回正論新風賞受賞。現在、高崎経済大学教授、安倍内閣が設置した教育再生実行会議委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長。著書に「国民の思想」(産経新聞社)、「日本を愛する者が自覚すべきこと」(PHP研究所)など多数。