自国の歴史を傷つける愚かしさ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 

【産経抄】2月23日


 レニングラード攻防戦は第二次大戦でも屈指の激戦として知られる。1941年9月、ソ連に侵攻したドイツ軍が今サンクトペテルブルクと呼ばれるこの都市を包囲した。いわゆる「兵糧攻め」で、市民たちは砲弾や飢えや寒さに苦しめられた。

 ▼しかし43年1月にはソ連軍が封鎖を突破、秋から反攻に転じる。44年1月には陸や空などからドイツ軍に猛爆を加え、27日レニングラードを解放した。この日、街には何発もの祝砲が鳴り響いたという。ドイツにとっては東部戦線での敗北を決定づける戦いだった。

 ▼体制が変わってもロシアにとって「輝ける勝利」であり、「ケチ」をつけることはタブーだった。ところがロシアのテレビ局「ドーシチ」が、このタブーを破り、局閉鎖の危機にひんしているという。反政権派にも発言の場を提供するリベラル派なのだそうだ。

 ▼といっても、世論調査に「数十万に上った犠牲を避けるため、レニングラードを明け渡すべきだったと思うか」の設問があっただけだ。これに保守派の住民らが「戦死者に対する冒涜(ぼうとく)だ」などとして抗議した。大手のケーブルテレビ事業者らからも放送を拒否されているという。

 ▼大統領報道官まで「許容できる一線を越えた」と「ドーシチ」を批判した。プーチン政権の意向がはたらいているとすれば、許されない言論封殺だ。だが一方で自国の歴史に誇りを持とうとする「愛国心」そのものは、うらやましくさえ思えてくる。

 ▼日本では政治家らが先の大戦を「侵略戦争ではなかった」「戦うべき理由があった」と発言するだけで、マスコミから袋だたきにあう。ロシアとまったく逆だからだ。他国の尻馬に乗り、自国の歴史を傷つける愚かしさに、そろそろ気付かなければ。