【聞きたい。】自衛隊で生きる生身の人間に脚光。
月刊「MAMOR」編集長・高久裕さん
月刊『MAMOR』2014年3月号
毎号、陸海空自衛隊の制服を着たアイドルが表紙を飾る異色の雑誌がある。
月刊『MAMOR(マモル)』(扶桑社)。れっきとした自衛隊広報誌ながら、巻頭グラビアや自衛官の婚活コーナー、「ミリキャラ占い」など、官公庁のお堅いイメージを覆す柔軟な誌面作りは反響が大きい。
「若い人たちに読んでもらいたいから」と編集長の高久裕さん。定価530円で現在3万部と、厳しい出版不況にもかかわらず、創刊時から部数を1・5倍に伸ばす健闘ぶりだ。
意外にも「もともと軍事や自衛隊に興味がなかった」という。生活情報誌や男性誌など、もっぱら柔らかい雑誌一筋の編集者人生を歩んできた。創刊のきっかけは、週刊『SPA!』副編集長時代に手がけた自衛隊の体験入隊企画。「ふざけた内容なので怒られるかなと思ったら、大笑いされて『これからは自衛隊もこういう柔らかい広報をやるべきだ』と言われて」。平成17年、社内でタイアップ雑誌を作る部署に異動した際にそれを思い出し、防衛庁(当時)に話を持ち込んだところ、折良く広報誌の民間委託を検討していた時期で、競争入札を経て契約を勝ち取った。
想定読者は、軍事マニアでなく一般人。だから兵器や防衛政策ではなく、自衛隊で生きる生身の人間に脚光を当てた誌面作りになっている。自衛隊の印象は「一言で言うと、外界から離れた聖域に古き良き日本人が純粋培養されている。きちんとあいさつし、お礼を言い、困っている人を助ける。当たり前の若者たちが育っているんです。姿勢もいいし、きびきびして気持ちのいい連中ですよ」。
今後は、自衛官の「弱さ」も描きたいという。「個々の自衛官は、僕らと同じ普通の人間。死ぬのは怖いし、つらいのは嫌。でも、そんな普通の人が、国を守るという責務のために弱さを乗り越えている。もし弱さのないスーパーマンだとしたら、国民としてはただ彼らにお任せすればいいだけ、ということになる。そうじゃなくて、僕らと同じ人間が、それでも身体を張って任務を果たしているのがすごいんだ、という視点を出したいですね」(扶桑社・530円)(磨井慎吾)
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【プロフィル】高久裕
たかく・ゆたか 昭和32年、愛知県生まれ。駒沢大卒業後、日之出出版、ダイヤモンド社を経て扶桑社に。『ESSE』『SPA!』編集部などを経て、平成19年の創刊時から『MAMOR』編集長。