自衛隊の医療体制 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



【国防最前線】自衛隊の医療体制にあるさまざまな問題

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20140119/plt1401190724000-n1.htm


新防衛大綱を読んで、注目した項目の1つに「衛生」がある。

 8行ほどの記述の中には、長年この分野が抱えてきた苦悩が凝縮されている。そこには「…防衛医科大学校病院等の運営の改善を含め効率的かつ質の高い医療体制を確立する」とある。この「改善」とは、どういうことなのか。

 実は、自衛隊の医療体制にはさまざまな問題があることは、自衛隊内でもあまり知られていない。

 まず、自衛隊医官についてご説明すると、医官になるためには、防衛医科大学校に入学し、卒業後、陸海空自衛隊の幹部候補生学校に進み、その後、国家試験をクリアするというプロセスを踏む。

 防衛医大は入学金や授業料が無料である。ただし、任官拒否をしたり、任官しても9年以内に退官すれば、そのお金は国庫に返還しなければならない。そうした制度の下、9年以上たち退官するケースも少なくなかったようだが、最近は、この9年を待たずに自衛隊を去る医官も後を絶たないという。

 その理由として、かねて指摘されていたのは症例が限られているということだ。

 「自衛隊は健康な人ばかりで、水虫の治療しかできないからでしょう」

 などと言われるが、原因はそう単純ではない。

確かに、多様な症例を診る一般病院と比べて、自衛隊の病院では経験値が限定されてしまう。以前、ある医官に「他の医大に入り、大学病院などに勤務する同世代の医師たちが、次々に経験を積み、またそれぞれの研究に没頭し、論文を発表しているのを横目で見ると、焦りを感じてしまう」という心情を伺ったことがある。

 それでも辞めずに医官を続けるのは、「自分がやらなければ誰がやるんだ」という自衛隊に対する思い一つしかない。医師としての立身出世を差し置いても国のために尽くす人々が、少なからず存在すると知り、私は心強く感じたものだった。

 しかし、その方もその後、退官したことを噂に聞いた。何があったのかは分からないが、自衛隊医療には、こうした崇高な志を持つ人材の流出をも阻めない問題構造が他にもあることが分かり驚かされた。

 実は、防衛省では自衛隊医療の抱える問題を改善するため、2009年に『自衛隊病院等在り方検討委員会』が発足し、報告書がまとめられた。

 「医療従事者の医療技術向上のためには、自衛隊病院、防衛医科大学校病院等において日常的に質・量ともに多くの症例を経験する必要がある」

 そこで、実施されたのがいわゆる自衛隊病院の「オープン化」であった。しかし、ここに大きな問題があったのだ。 
(ジャーナリスト・桜林美佐)