【国防最前線】
「官舎家賃値上げ」のその後 自衛隊員の生活に影響
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20140117/plt1401170720000-n1.htm昨年の「国防最前線」で官舎の値上げについて書いたので、その後、どうなったかをお知らせしておきたい。
まず、官舎家賃値上げの話が持ち上がった経緯についておさらいすると、民主党政権下での国家公務員宿舎の家賃値上げの流れを受け、財務省が今年4月から家賃を最大2倍に引き上げるということであった。
「○○区の不動産屋さんには、自衛官が殺到しているらしいですよ」
そんな噂を聞き、ちょっと大げさではないかと思った。だが、実際、週末ともなると物件を探しに行く隊員やその家族が増えたのは事実のようだ。
家賃が倍になるならば、古い官舎に我慢して暮らさなくても、家を購入したり、あるいは賃貸でも住みやすい所に移りたいと考えるのは当然だろう。
この問題については、自民党からも厳しい指摘がなされた。非常時における隊員の即応態勢が崩れかねないことや、官舎を出た隊員に対する住宅手当などがかさめば、結果的に歳出増になることなどへの懸念の声が高まることになった。
そうしたことから、昨年12月、財務省と防衛省は当初案よりも自衛官の負担が軽減される案で折り合ったのだ。
まず、これまでは、駐屯地や基地から100メートル未満であれば無料であったものを、約2キロの範囲内は無料、2キロ圏外の官舎については、2倍としていた家賃の引き上げ率を1・3倍程度に抑制することになった。
「少しホッとしました…」
防衛省関係者は、しかし複雑な表情だ。「少し」というのは、2キロを少しでも出ている隊員には適用されず、2倍は免れたが値上げは避けられないからだ。「ここまでマシになったのだからいいじゃないか」と一般の方は感じられるかもしれないが、24時間365日を公務にささげている自衛隊(警察や海保も)の立場を考えれば、地区によって差別化することは、かえって不公平になってしまう。
それに、現在、官舎がある場所も、そもそも財務省や自治体などから指定され、建てられたケースも多いという。そうした経緯も考慮されて然るべきであろう。
とはいえ、当初の案よりは抑えられたことは朗報であった。これを契機に、2キロより外の官舎を圏内に建て替えるなど整理してもいいのではないだろうか(防衛予算外でお願いしたいが)。
この時期、古い官舎住まいだと寒くて、なかなか寝られないなどという声をよく聞く。なにも好んで隙間風の入る家に住んでいるわけではないということを、多くの人に知ってもらいたい。 (ジャーナリスト・桜林美佐)