【国防最前線】新生安倍政権でも変わらない防衛費増の「からくり」
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20140115/plt1401150724000-n1.htmハッキリ言ってしまう。世の中では「防衛費が大幅に増えた!」などと批判したり、あるいはこれを称賛する声もあるようだが、いずれも全くの事実誤認をしている。または、「意図的なのか?」ともとれるミスリードである。
それよりもむしろ、私はこれが、「現在の自民党政権で起きている」事実に失望感を禁じ得ない。
毎度のことながら、この防衛予算に内在する絶妙な「からくり」には感心させられる。同時に、それを知っていながら、喜んだり、怒ったりしてみせる人たちがいることに、正直申し上げて防衛問題を真面目に考えることのバカバカしさを感じてしまうものである。
日本の国防を案じる皆さんには、ぜひこれから私が申し上げることを、しっかりと受け止めていただきたい。
まず、時を民主党政権時代に戻してみたい。実はこのころに、それまでの自民党政権で減らし続けてきた防衛費を「増額」したと「誤解」された。実際、一見すると増額となっていたが、この予算には隊員に支給される「子ども手当て」が含まれるなどの仕掛けがあったのだ。
しかし、実はこうした「からくり」は、それ以前の自民党政権では長年、続いてきたことだった。だからこそ、生まれ変わった安倍晋三政権には、こうした過去を反省し、まやかしではない真の意味での「防衛力強化」実現を期待していたのである。
ところが、今回の予算を見ると、仕組みは何も変わってなかった。
前年度比2・8%増の4兆8848億円というが、ここには東日本大震災の復興財源確保目的の国家公務員給与削減が3月末で終了するための人件費増額2%分が入っている。また、4月からの消費税3%増額分、さらに円安の為替差益分ものみ込まれていて、それらを差し引けば実態は、ほんの「微増」でしかないのである。
それどころか、装備品に関しては、水陸両用車など米国からの購入が増え(来年度からは、もっと増えるであろう)、国内防衛産業にとってはマイナス要素の方がはるかに多い。
国内防衛企業の体力を奪っておいて、「これからは輸出をしましょう」などと言うのは、棍棒(こんぼう)でたたきのめした後に戦場に送り出すようなものではないだろうか。
それから、「人員増」とされているが、陸自の場合は看護学生の身分変更に伴うものが多くを占めており、かろうじて「下げ止まり」の域を出ないだろう。それなのに「増やすなんてけしからん」などという偉い人もいるようで国防への無理解に悲しくなってくる。
まだまだ書き足りないので、続きはまた次回に!
■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。