大津・今津両駐屯地。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 



【関西の議論】

「96式装輪装甲車」「120ミリ迫撃砲」「ボリュームカレー」
見えてきた自衛隊員の生活ぶり…。
女性入隊希望者も、大津・今津両駐屯地を取材して。

http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/140106/waf14010607010002-n1.htm

駐屯地内では、96式装輪装甲車のような特殊車両に次々と出くわす=大津駐屯地 

国土の防衛や災害救助、海外での平和維持活動など国内外で活躍する自衛隊。昨年11月の台風30号で甚大な被害を受けたフィリピンで過去最大規模の国際緊急援助活動を展開し、現地から称賛の声が上がったことは記憶に新しい。しかし、隊員たちが日々どんな訓練を積み、どんな生活を送っているのか、よく分からないというのが実情だ。基地に近づいても、高い柵に取り囲まれ、迷彩服姿の人たちが警戒に当たっていて立ち寄りがたい雰囲気がある。「世界で活躍する自衛隊をもっと知りたい」。そんな思いで、滋賀県内にある陸上自衛隊の大津駐屯地(大津市)と、今津駐屯地(高島市)の2つの駐屯地を“ハシゴ”できる見学会に参加した。(海住真之)

特別生産のパジェロ

 午前8時半、大津駐屯地の正門前に車を止めると、警備中の隊員が駆け寄り、要件を尋ねられた。見学会に参加する旨を伝えると、正門に置かれたバリケードを動かし、駐車場まで誘導してくれた。国防の拠点となる施設を厳重に警備しているという責任感がひしひしと伝わってくる。

 広報室を訪ね、小池孝典広報室長から深緑色のヘルメットを2つ手渡された。1つはプラスチック製で、もう1つは鉄製。「自衛隊の車両に乗るときは、かぶらなければならない規則になっているんです」

小池室長にプラスチックの方をかぶるよう指示され、自衛隊車両に乗り込み、約60キロ離れた今津駐屯地へ向かう。どんな車両に乗れるのか、尋ねてみると「パジェロです」との返答。パジェロといえば三菱の四輪駆動車。せっかく駐屯地見学に来たのだから、見たこともないような車に乗せられると期待していたのに…と少し残念がっていると、目の前に止まったのは、パジェロをベースに特別生産された車だった。

 戦闘時には後部座席に機関銃などの装備を搭載できるよう、屋根の代わりに幌で車内が覆われ、車体の色はヘルメットと同じ深緑だ。訓練や移動などで隊員が最も多く利用するのが、この車だそうで後部座席に乗り込んだ。

実弾を使った訓練

 約1時間半かけて今津駐屯地に着き、さらに隣接する饗庭野(あいばの)演習場へ。この演習場は昨年10月、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが加わった初の日米共同訓練が行われたところでもある。

 演習場に行くと、プラスチック製ヘルメットの上に鉄製のヘルメットを重ねてかぶるよう指示された。ここで、「鉄のヘルメット」の意味がようやく分かった。実弾を使った訓練が行われているのだ。

 演習場内にある林の中に設けられた砂利道を、パジェロでゆっくり進む。道路脇にある茂みから、葉っぱや木の枝を身につけ、小銃を持った隊員たちがこちらを見ている。行ったことはないが、まるで戦場のように感じた。

林を抜けると、左右に車輪が付いた長さ2メートルほどの砲身が並んでいた。口径の大きさから「120ミリ迫撃砲」と呼ばれ、敵地を制圧するための兵器だ。

 若手隊員たちが迫撃砲の使い方を学んでいるところで、砲弾を両手で頭上まで持ち上げ、砲身の先でその動きを止めた。上官の「撃て!」の号令で手放し、砲弾を砲身の中に落とし込むと、すかさずしゃがみ込んだ。

 それから1秒も経たないうちに「ド、ドーン」という轟(ごう)音が響き渡り、炎や煙とともに砲弾が勢いよく砲身から飛び出した。30秒後、パジェロでついさっき通った林の向こうで煙が上がり、しばらくして「ボーン」という音が聞こえてきた。

 迫撃砲の近くにある高台にはテントが張られ、他の隊員たちが双眼鏡を使って着弾地点を確認し、書類に数字を書き込んでいた。

 2・5キロ先にある着弾地点に正確に着弾したかどうかを観測し、迫撃砲を操縦している隊員に砲身の角度などを指示しているのだという。

 訓練には、入隊希望者や入隊を検討している人たちも見学に訪れ、約50人のうち10人ほどは若い女性だった。「東日本大震災の復興支援を見て、人を助ける仕事がしたいと考えたり、女性自衛官にあこがれたりした女性が増えてきたんです」。小池室長の表情が心なしかにこやかに変わった。

迫撃砲について説明する隊員=饗場野演習場

迫撃砲で砲弾を発射する訓練=饗庭野演習場 

見学には女性も多く訪れる=饗庭野演習場

ボリューム満点の「駐屯地カレー」

 実弾訓練を目の当たりにしたあと、今津駐屯地に戻り、食堂に案内された。トレーを持ち隊員たちの列に加わり、調理員から差し出されたのは鶏の竜田揚げがのった大盛りのカレー。ヨーグルトやサラダ、野菜ジュースも付いてきた。

 「なかなかの味ですよ」と太鼓判を押すのは、見学に同行している大津駐屯地の上原敏彦二等陸佐。確かに味も良かったが、驚いたのが、ボリュームだ。長径30センチの深い皿にごはんが山のようによそわれ、その上にカレーがなみなみとかけられている。隊員たちは体力が求められるだけに、食べる量も半端ではない。

 隊員たちと一緒に食堂で昼食を取るのも見学の一環で、今回だけ特別に設定されたわけではない。見学を申し込む際に「昼食が必要」と伝えればよい。メニューは日替わりで、ソースカツ丼やビーフシチュー、長崎ちゃんぽんなど多彩で「メニューに合わせて見学の日を決めてもらうのもオッケーですよ」と小池室長。食事は382円で2週間前までに申し込む必要がある。

この日のメニューは大盛りカレーだった。しめて1427カロリー=今津駐屯地の食堂

人気のミリタリーグッズ

 昼食後、駐屯地内のコンビニエンスストアを訪れた。お菓子や日用品などが売られていて、どこにでもありそうなコンビニだが、店舗一角には「ミリタリー(陸軍)コーナー」があった。水分補給用のリュックサックや迷彩服、さらに顔面に迷彩を施す化粧グッズまであった。

隊員の装備は、原則支給品だが、さらに機能性を求めて、たいていの隊員が自費でさまざまなアイテムを購入しているとか。

 「ベルト部分に重い装備をぶら下げるため、腰にかかる負担を和らげるパッドが人気です」とコンビニの店員。この日も多くの隊員が「ミリタリーグッズ」を手に取り、品定めをしていた。

「支給品だけでは心細く、コンビニでさらにグレードの高い装備品を調達するんです」と上原二等陸佐=今津駐屯地のコンビニ

96式装輪装甲車に遭遇

 再びパジェロで大津駐屯地に戻ると、敷地内で「96式装輪装甲車」に出くわした。この装甲車が配備されている今津駐屯地の第10戦車大隊が、隊員移送などで訪れていたのだ。

 大津駐屯地の隊員たちが装甲車の周りに集まり、車内をのぞいたり、装甲車談議に花を咲かせたりしていた。日頃は厳しい表情で訓練に臨む隊員たちのほほえましい一面がうかがえた。

 大津駐屯地には、大津海軍航空隊など旧日本軍時代に駐屯していた部隊の制服や武器、装具などに加え、当時の訓練風景の写真なども展示されている。こちらも事前の申し込みで見学できる。

 小池室長は「駐屯地に来てもらえるのは、隊員たちにとって大きな励み。興味があれば、ひとりででも気軽に申し込んでください」と話している。問い合わせは大津駐屯地((電)077・523・0034)。