【誇れる国、日本】
「中国の思い通りにはさせない」張氏処刑に込められた北のメッセージ。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20131222/dms1312220718003-n1.htm北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第1書記が、叔父の張成沢(チャン・ソンテク)前国防副委員長を処刑し、側近らを次々と粛清していることが話題となっている。
ソ連のスターリンや、中国の毛沢東は、自らの権力を守るために反対派を徹底的に処刑・排除した。犠牲者数は数千万人とも言われる。独裁国家は、冷酷かつ無慈悲に粛清を行うことで、体制を維持している。
今回の粛清劇を見て、私は北朝鮮で2004年4月に発生した「龍川駅列車爆発事故」を思い出した。北朝鮮は直後、「燃料を積んだ貨車と肥料を積んだ貨車が衝突し、電柱から垂れた電線がショートした火で爆発した事故」と報じたが、高性能爆薬800トン相当という爆発が、こんな事故で起こるはずがない。
私は最初に見たネットの写真で、爆破孔(穴)がV字型となっていたため「地下で爆発した」と確信し、「金正日(キム・ジョンイル)総書記の特別列車を狙った爆殺未遂事件だ」と、自著『報道されない近現代史』(産経新聞出版)に書いた。中国が、朝鮮人民軍の一部をそそのかして起こした可能性が高い。正日氏は事故後、朝鮮労働党や軍の幹部多数を粛清したと伝えられる。
北朝鮮は、米国などの軍事的圧力よりも中国からの脅威を取り除くために、核兵器の開発を進めていたのだ。中国は、北朝鮮の核ミサイルが北京に向けられる恐怖から、正日氏排除を狙ったのではないか。北朝鮮が不完全ながら小規模核実験に成功したのは事故の2年半後である。
正日氏は生前、正恩氏に「中国を最も警戒せよ」との遺訓を残したとされる。正日氏の棺に手を添えて葬送した軍高官を粛清・排除するとともに、中国首脳部に近く、改革開放派だった張氏を処刑したことは、北朝鮮ナンバー2に登りつめた崔竜海(チェ・リョンヘ)総政治局長が主導したクーデターと言ってもいい。正恩氏を担ぐ崔氏の「中国の思い通りにはさせない」という強いメッセージとも言える。
中国の習近平国家主席は、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が「反日」ですり寄ってきたため、朝鮮半島を傀儡の「南北朝鮮連邦国家」とし、日本列島に向けた「刃(やいば)」にしようと狙っていた。ところが、北朝鮮で張氏一派が粛清されたことで、日本の危機は少し遠のいた。
ただ、東アジアが今、世界で最も危険な地域であるのは確かだ。北朝鮮が力の緩衝地帯として、中国にもロシアにも米国にもくみしない独立国家であることは、日本の国益に合致する。国際政治は冷徹かつ無慈悲、そして複雑である。自国の国益を守るための権謀術数が渦巻いている。
現在、米国の国際影響力が低下し、リーダーなき「Gゼロ」の世界が現出しつつある。日本は大きな視野を持つべきだ。米国との同盟関係を維持しながらも、この機会に北朝鮮の拉致問題を生存者全員を取り戻すことで解決し、国交回復の道を探ってはどうだろうか。
米国が仕組んだ東京裁判史観から脱し、1日も早く日本を「民族の歴史に誇りと自信を持てる国」にしよう。
■元谷外志雄(もとや・としお) 石川県小松市生まれ。信用金庫勤務後、27歳で注文住宅会社を創業し、その後、ホテルやマンション、都市開発事業などを手がけるアパグループを一代で築き上げる。同グループ代表。国内外の多くの要人と交友関係があり、政治や経済、軍事に関する知識も豊富で、社会時評エッセーも執筆する。著書に「誇れる祖国『日本』」(幻冬舎)、「報道されない近現代史」(産経新聞出版)など。
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