【大阪から世界を読む】
韓国メディアが「愛国裁判」批判する“笑止千万”…。
アップル勝訴の米裁判所に噛みつく「偏狭な愛国心」
http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/131213/waf13121307000002-n1.htm米カリフォルニアの地方裁判所は11月下旬、韓国のサムスン電子に対し、特許侵害をめぐり、2億9千万ドル(約290億円)を米アップルに追加で支払うよう命じた。ロイター通信などが伝えた。これで賠償総額は計9億3千万ドル(約930億円)となったが、陪審員が下したこの評決に対し、韓国メディアが「愛国裁判」「町内会並み」との批判があると報じた。そもそも日韓関係を冷え込ませた元凶は、世論や政治に流されやすい「韓国司法」の歪(ゆが)んだ“愛国判断”ではなかったのか。その国が愛国裁判と他国を批判するとは…。片腹痛い。
戦時徴用訴訟と似通う論理立て
追加賠償の評決を下したのは、米カリフォルニア州サンノゼの連邦地裁の陪審員。地裁陪審は2012年、タッチパネルに指を置いて拡大・縮小するピンチズームと呼ばれる操作やデザインなどをサムスン電子が模倣したとして、アップルに対する特許侵害を認め、約10億5千万ドルの支払いを命じた。
しかし判事が今年3月、このうちの一部製品(約4億円分)について賠償額の再審理を命じた。約3億8千万ドルと訴えたアップル側に対し、サムスン側は約5300万ドルにとどまると主張したが、結果、追加賠償額は2億9千万ドルとの評決が下った。これで、すでに認定された分とあわせ賠償総額は計9億3千万ドルになった。
朝鮮日報は、この評決を「愛国裁判」「町内会並み」と報じた。理由はこうだ。
同紙によると、アップルの弁護側は、サムソンによる特許侵害について「米国企業の知的財産権を保護しなかったために起こった」などと主張した上で、「法を破った代価が数セントだとしたら、サムスン電子の模倣戦略は成功したことになる」と訴えた。
また、ロイター通信などによると、アップル社の幹部は法廷で「アップルの評判をサムスンが汚した」と証言している。
こうしたアップル側の主張が、陪審員たちの愛国心を揺さぶり、裁判に影響を与えたと朝鮮日報は主張している。大学教授の「今回の裁判は陪審員制度が持つ根本的な問題をよく示している。陪審員制度は愛国心や地域感情が介入する余地が大きい」との指摘も掲載した。
だが、どうもスッキリとしない。韓国が「愛国裁判」などと他人を批判できるだろうか。教授の発言も、「陪審員制度」を「韓国司法」に置き換えれば、戦時徴用をめぐる日韓の賠償請求訴訟の問題点に通じてしまうからだ。
歴史問題で投票は8%
2013年は日韓関係が一層冷え込んだ1年だった。
朝鮮問題の米専門家で、米ジョージタウン大教授のビクター・チャ氏はニューヨーク・タイムズ紙のコラムで、日韓関係と米国の国益について論じている。
その中では、安倍晋三首相に対し、慰安婦に会うべきだと提言する一方で、韓国のリーダーたち(政治家)が「反日」という世論を理由に日韓の関係改善が難しいと主張するのは明らかな誤りだと指摘。その根拠として、チャ氏らによる調査で、歴史問題や領土問題を投票行動と結びつけている韓国の有権者は、わずか8%しかいないことを挙げた。
安倍首相と慰安婦が面会したところで、関係改善には結びつかないだろうが、米国が中国や北朝鮮を念頭に、“戦略”として、日韓の関係改善を求めていることは分からなくもない。
ただ、首脳会談のような関係改善の場ができたとしても、「カネを寄こせ」だとか、「おまえの家の敷地も俺のものだ」とか、理不尽な主張を繰り返してきた事実は消しようがない。まして司法がそうした“ムード”に加担していたことも消えない。
偏狭な愛国心を振りかざすのは誰だ
サムスンとアップルの特許侵害訴訟で、サンノゼの連邦地裁の判事を務めたのは、実は韓国系の米国人女性、ルーシー・コー氏だった。
過去にシリコンバレーの企業特許訴訟で、企業側の法律事務所に所属。韓国系ということもあって、裁判が当初、サムスン側に有利に進むのではないかと指摘するメディアもあった。だが、実際は違った。
コー判事は実に冷静で公正な裁判官だった。訴訟の中で、無駄に時間をかけようとする両社の弁護士に対し、再三怒り、「ジャッジのための時間を浪費しないように」と注意。証拠採用をめぐってサムスン側の弁護士が反発した際には、「罰してほしいのですか。いすに座りなさい」と注意した。
コー判事は韓国系ではあっても、米国・ワシントン出身の米国人だ。ハーバード大のロースクールを卒業し、連邦検事補も務めた。今回の裁判でも、冷静な判断で賠償総額の見直しを命じた。きちんとした教育を受け、教養を身につければ、民族や事案にかかわらず、偏狭な愛国心などとは無関係な公正な判断ができるのだ。
韓国メディアでは、日韓関係改善を念頭に置いた報道が増えてきている。まるで自戒のような報道も少なくないが、騙(だま)されてはいけない。慰安婦問題であれ、戦時徴用であれ、公正な判断を働かせようという意識はない。態度の根底には、自身のしていることを忘れ、ただ要求だけをつり上げる「チンピラ風情の意識」があることを忘れてはいけない。