両陛下、“文化の秋”ご堪能。
映画「くじけないで」の試写会で、出演した武田鉄矢さん(右)と言葉を交わされる皇后陛下。中央は八千草薫さん=12日、東京都千代田区(財満朝則撮影)
天皇、皇后両陛下は今週、多くの展示会や各種行事に足を運び、“文化の秋”を堪能された。
陛下は13日、東京都墨田区の江戸東京博物館で、大森貝塚の発見者の米国人、エドワード・モースのコレクションを展示した開館20周年展「明治のこころ モースが見た庶民のくらし」を鑑賞された。モースが収集した火鉢や玩具など当時の日本の品を展示。陛下は、ちょうちんの部品を見て「かなり精巧ですね」と感想を語られた。
皇后さまは11日、秋篠宮妃紀子さま、三笠宮家の彬子(あきこ)さまとともに、明治天皇の意向に沿って設立され雅楽の保存活動をしている「絲竹(しちく)会」の演奏会を、皇居・東御苑の音楽堂「桃華楽堂」でご鑑賞。宮内庁楽部の楽師らも加わった演奏に耳を傾けられた。
皇后さまは12日には都内の映画館で、92歳から創作を始め今年1月、101歳で死去した詩人、柴田トヨさんの半生を描いた映画「くじけないで」を鑑賞された。トヨさんは本紙「朝の詩」への投稿が評判を呼び、98歳で出版した詩集「くじけないで」などがベストセラーとなった。映画は、幼少期や戦争、子育て、老いなどの歩みを明治から平成の時代に重ねつつ、詩に込められた心を描いている。
詩人、まどみちおさんの作品を英訳されるなど、詩に造詣が深い皇后さま。映画でトヨさんを演じ、この日は皇后さまの隣で鑑賞した八千草薫さん(82)によると、皇后さまは「とてもいいものを見せていただいて」と語り、懇談の場ではトヨさんの詩を複数そらんじられたという。
トヨさんが東日本大震災被災地へエールを送る詩も書いたことから、八千草さんらが映画公開に先立ち宮城県石巻市を訪ねたことを話題にすると、皇后さまは「上映する施設は大丈夫ですか」と復興を気にかけられていたという。
皇太子ご夫妻は12日、東京都渋谷区の国連大学を訪れ、国際シンポジウム「生態系を基盤とした防災・減災」を聴講された。宮内庁東宮職によると、シンポジウムでは震災からの復興も話題となり、小町恭士東宮大夫は15日の定例会見で「ご関心を持ってお聴きになられた」と述べた。
秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまは10日、東京都渋谷区で行われた中学生の弁論大会「少年の主張全国大会」にご臨席。昨年までは紀子さまが臨席されたが、眞子さまは成年皇族となり海外留学も終えたことで引き継がれた形だ。
大会では約56万人から選ばれた12人が壇上に。生徒会活動や親子の絆などのほか、いじめや母親の死など重い体験に基づくテーマもあり、眞子さまは真剣に聴き入られた。
12人との懇談で眞子さまは、学習院女子中等科時代の7年前、紀子さまと同大会に出席した際に「私もこんな風に伝えられているのかな、と思ったことがあります」と明かされたという。内閣総理大臣賞を受賞した宮城県気仙沼市立小原木中学校3年、梶川裕登さん(15)は、震災前の故郷の街並みを忘れぬよう「海抜表示板」の取り付け活動をしていることを語った。眞子さまは懇談の中で、「すばらしいですね」と声をかけられたという。
彬子さまは12、13日、宮城県南三陸町を訪れ、震災からの復興を願ってチリから贈られたイースター島のモアイ像などを視察された。9月のチリ滞在時に同島で寄贈関係者と面会したことから、同町へも訪問を希望された。町によると、彬子さまは像の前で「町の復興のシンボルになりますね」と語り、仮設の「南三陸さんさん商店街」でモアイ像をあしらったストラップなどを購入されたという。