誠に畏れ多い、両陛下のお気持ち。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





「国民念頭の両陛下だからこそ」

東大名誉教授(日本思想史)小堀桂一郎氏

http://sankei.jp.msn.com/life/news/131114/imp13111422080003-n1.htm



 天皇、皇后両陛下が、御陵造営や御葬儀にあたって国民に負担がかからないようにとのお気持ちをお示しになり、御自身の崩御後についてまで国民を念頭においてお考えになっておられることは、誠に畏れ多い。

 天皇と国民との絆のあり方に深く思いを致され、東日本大震災直後、ビデオメッセージで国民へ直接呼びかけるなど、「国民のために祈る」とのお姿を行動で示されてきた両陛下だからこその意向の御表示ではないか。

 本来は、江戸時代初期以来、一貫して続いてきた土葬という従来の形が守られていくことが望ましい。しかし一方で、国民のために、なるべく葬儀を簡素化するという「薄葬(はくそう)」の思想もまた、皇室の伝統である。なにより、お二方の御意向に沿うことが最も大事だ。国民は重みを持って受け止めなくてはなるまい。

 火葬は大きな変化だが、民間の神葬でも現在は火葬のものが多く、火葬が即ち神式を排して仏式を取ったという訳ではない。両陛下の御陵は昭和天皇の御陵と比べて小さくはなるが、天皇という地位の品位が損なわれるような改革ではないと考える。合葬は避け、それぞれの御陵での祭祀(さいし)も、従来通り行うとされているからだ。両陛下のお気持ちを踏まえつつも、伝統は守られていると思う。


合葬を避けながらも陛下と皇后陛下の御陵を並べるという設計からは、お二人の寄り添われるお気持ちがよくわかる。皇后陛下が合葬を「畏れ多く感じられる」として、陛下のお気持ちに深く感謝しつつ御遠慮された事実からは、中庸の節度を重んじておられることがわかる。御自身のお気持ちと、伝統を守る節義との間でなんとか調和を図ろうとされたことは、とても尊い。

 国民は、今回の方針を軽く受け取ってはならない。この機会に、長らく続いてきた「伝統」の重みを改めて考える必要がある。近年、皇室祭祀やその他行事の簡素化が憂慮されているが、今回はあくまで御陵のあり方や御葬儀の方法に限定されたものであって、皇室において最も重要である祭祀の改変につながってはならない。

 ましてや、万世一系の事実の上に立つ皇位継承の原則の考え方に影響するものでもない。国民の側から、皇室の伝統に変更を強いるような動きをおこしてはならないことを、国民は改めて自覚することが必要だ。