うちは壁が崩れてきたんですよ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【国防最前線】

自衛官の官舎家賃値上げで即応態勢が崩れる…。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130922/plt1309220737000-n1.htm



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自衛官の官舎も来年4月から値上げされるという =東京・市谷本村町



「今日は久しぶりに主人が帰ってくるのにお風呂が壊れていて…」

 「うちは壁が崩れてきたんですよ」

 自衛官の奥様たちの間では、よくこんな会話が交わされる。住居である官舎は驚くほど古くて使いにくい所が多いのだ。それでも官舎に住むのは自衛隊ならではの事情がある。家にいることの少ない夫の代わりに、同じ官舎の妻同士が助け合っているのである。

 「子供が大ケガをしたとき、お隣の方が病院に付いてきてくれて気持ちが落ち着きました」

 留守家族が支え合っているからこそ、夫は安心して任務に赴ける。それが自衛隊の組織基盤となっているのだ。

 ところが、民主党政権下で国家公務員宿舎の家賃値上げが推し進められ、財務省は2014年4月から家賃を最大で2倍に引き上げるという。これにより賃料収入が約280億円から約550億円に増えると試算されているが、それが額面通り当てはまるのか疑問である。

 「官舎が値上げされたら? そりゃあ引っ越しますよ」

 ただでさえ築数十年という建物を、だましだまし使っているのに、もっと負担してまで住まねばならないのかという気持ちになって当然だろう。

 この施策はそもそも、都心部では民間住宅との家賃格差があるから是正するというものであったが、地方については格差は必ずしもあてはまらない。そして、自衛隊は都心部よりもむしろ地方にいる場合が多いのだ。

 例えば、北海道では現在、官舎が2万円台だが、値上げ後は3、4万円程度となる。一方で民間賃貸アパートなどは7万円ほどが相場で、もし民間住宅に入れば上限2万7000円までの住宅手当と通勤手当が付くので自己負担分は大差なくなることが考えられる。

 そうなると、官舎住まいの隊員の多くが流出すると見込まれ、非常時の速やかな参集が困難になり、即応態勢が崩れる。住宅手当や通勤手当だけでも結果的に歳出増になる可能性も指摘されている。

 また、全国各地を転々とする幹部自衛官から「引っ越す度にお金がかかる」と聞いたことがある。手当ても出るが十分でないため、かなり自腹を切っているのだという。これで家賃値上げとなれば、地方勤務を拒否する人が増えてもおかしくない。

 給与や退職金の削減、そして官舎値上げ…。高尚な安保論議もいいが、その一方で自衛官がまるでロボットのように扱われていないか? 今一度論議をお願いしたい。

 

■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 

 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)、「武器輸出だけでは防衛産業は守れない」(並木書房)など。