国連調査委
拉致問題などを調べる国連北朝鮮人権調査委員会メンバーが来日し、日本での調査を行った。
拉致問題解決の国際世論を一層喚起し、被害者救出の願いを世界のより多くの人が共有することによって、北朝鮮に誠意ある対応を迫りたい。
日本で初めて開かれた国連による公聴会では、拉致被害者、横田めぐみさん=拉致当時(13)=の母、早紀江さん(77)が「めぐみは煙のように消えた。自分の子供がこんな目にあったとき、どんなにつらいかを伝えてほしい」と訴えた。
また、田口八重子さん=同(22)=の兄で、家族会代表の飯塚繁雄さん(75)は「何人拉致されたか実態を最もよく知っているのが北朝鮮当局。拉致した人の名簿を出させるのが筋だ」と要望した。
これに対して、調査委のカービー委員長(元豪州最高裁判事)は「いただいた証言は世界で共有したい」と答えた。
北は故金正日総書記から金正恩第1書記に権力が移行した後も、「拉致は解決済み」と頑(かたく)なな態度を続けているが、被害者家族の声に真摯(しんし)に耳を傾けるべきだ。
安倍晋三首相もカービー委員長と会い、「拉致問題は安倍政権で必ず解決する決意だ」と述べた。調査委は、安倍政権の強い働きかけで日本と欧州連合(EU)が今年3月に共同提案し、設置されたものだ。今回の訪日調査は、安倍政権の拉致問題をめぐる対国連外交の成果の表れともいえる。
安倍首相は、9月上旬にロシアのサンクトペテルブルクで開かれる20カ国・地域(G20)首脳会合や、9月下旬の国連総会などあらゆる機会をとらえ、拉致問題解決を強く訴えてほしい。
調査委の一行は、岸田文雄外相と古屋圭司拉致問題担当相の説明会に出席したほか、超党派の国会議員でつくる拉致議連の平沼赳夫会長らとも会い、日本人拉致被害者の人数についても、実態に近い数字を報告すると述べた。
現在、日本政府認定の拉致被害者は17人だが、警察庁が拉致の可能性を否定できないとしている特定失踪者は、868人に上る。詳しい追跡調査が必要だ。
調査委は来日に先立ち、韓国を訪れ、韓国での拉致被害の実態を調べた。現時点で拉致被害が確認されている国は日韓を含め12カ国に及ぶ。被害国間の連携を強める外交努力も不可欠である。