いつまでもあると思うな日米同盟。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





始まっている日中戦、心理戦に負けた日本メディア。

いつまでもあると思うな日米同盟、永遠にあるのは国益だけ

~織田邦男氏

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38577



マット安川 元空将の織田邦男さんを迎え、自衛隊の置かれている現況を伺うとともに、外交政策やそれを報じるメディアの悲惨な実態まで、幅広くお聞きしました。

教育は強制から始まる。日本人のDNAを開花させる自衛隊教育

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:織田邦男/前田せいめい撮影織田 邦男(おりた・くにお)氏
元・空将。1974年、防衛大学校卒業、航空自衛隊入隊、F4戦闘機パイロットなどを経て83年、米国の空軍大学へ留学。90年、第301飛行隊長、92年米スタンフォード大学客員研究員、99年第6航空団司令などを経て、2005年空将、2006年航空支援集団司令官(イラク派遣航空部指揮官)、2009年に航空自衛隊退職。(撮影:前田せいめい、以下同)



織田 米軍の司令官に食事に招かれたとき、自衛隊には軍法会議がないという話をしたら、そこにいたみんなにびっくりされました。なのにどうしてこんなに志気が高く、不祥事もなく、仕事をきちっとし、だれ一人逃げ出さないのか、と。

 実際、自衛隊の規律正しさは、世界の軍隊の中でも最高水準です。自衛官の犯罪率を見ても、犯罪白書の数字の10分の1から15分の1ですしね。

 私はその理由を自衛隊の教育がいいからだと思っています。そもそも特殊な人が入る組織だからだと言う人がいますが、それは誤解です。

 日本人のDNAというものがあって、自衛隊に入るとそれが育つように教育されます。するとだれでも見違えるようになる。コンビニの前で地べたに座っているような若者でも、親が泣いて感激するくらいの人間になります。

 35年間自衛隊で教育され、大勢の若者たちを教育してきた私からすると、今の教育は本当に間違っていると思います。子供の人権や意志を尊重するとか言う。しかし、教育は強制から始まるんです。

 ある先生など、私が挨拶を教えるのは子供たちがそれを必要だと思ったときです、なんて言います。挨拶も強制しちゃダメだというわけですが、挨拶なんかは強制するしかない。強制されてしたがっているうちにその重要性を体得して、人にいい印象を持ってもらうために挨拶しようと考えるようになります。

 挨拶、整理整頓、身だしなみ、時間を守ること、目上の人への言葉づかい。最初は何もできなかった若者が、自衛隊でそういう人間としての基本をしっかり教えこまれることでまっとうな人間になる。テレビも新聞も決して報道しないことだからこそ、ぜひ知ってほしいと思います。


集団的自衛権だけじゃない。個別的自衛権に関わる法整備も急務

「マット安川のずばり勝負」スタジオ風景/マット安川、織田邦男、加藤知華/前田せいめい撮影

 


 しっかりした軍事力を伴う毅然とした体制を保持していれば、軍事的衝突は起こりません。小競り合いが起こる可能性はありますが、起きたらできるだけ小規模に抑え、悪化しないようにする必要があります。しかし今の日本の防衛法制ではそれができないのです。自衛隊が動けないように、がんじがらめに縛っていますから。

 問題は、いざというときに最高指揮官である総理大臣が決断を下しても、自衛隊が即動ける仕組みにはなっていないことです。

 個別的自衛権ならいつでも行使できるように思われていますが、実際には国会承認を経て防衛出動が下令される必要があります。これには言うまでもなくかなりの時間と手間がかかる。安倍(晋三総理)さんに自衛隊出動しろと言われても、出動する根拠がありませんと言わざるを得ないのが現状なのです。

 冷戦時代なら、ソ連が攻めてくる兆候を掴んでから3カ月かけて国会承認を取り、防衛出動を下令すればよかったかもしれません。しかし今はそういう時代じゃない。明日にでも尖閣周辺で海上保安庁の船が中国海軍に攻撃されるかもしれません。仮にそうなったとき、すぐ近くにいるのに海上自衛隊は何もできないのです。

 おそらく中国側は、日本人のことだから法的にはどうあれ動いてくるだろうと思っています。日本の政治家の中にもそういう期待をしている人がいますが、それは大間違いです。シビリアンコントロールと言うならしっかりコントロールしてくれよというのが、自衛隊員たちの本音です。

 ここにきて集団的自衛権の問題がクローズアップされていますが、個別的自衛権についても併せて議論する必要があることを強調したいと思います。

力を信奉する中国の前に力の空白を作ってはならない

 中国ははっきり三戦、スリー・タイプ・オブ・ウォーを戦うということを言っています。それは心理戦、法律戦、世論戦。

 今は心理戦を仕掛けてきていますが、メディアの中国寄り報道からも読み取れる通り、日本は押される一方です。戦後、軍事を忌み嫌い、タブー視してきたツケが回ってきているということでしょう。

 中国はどういう国かということを、まず押さえないといけません。背景には華夷秩序の伝統があるんですが、中国には自分の実力の及ぶ範囲がテリトリーだという考え方が根付いています。経済力がつき国力が高まれば、自分の領域が広がるということですね。

 私がスタンフォード大学にいたころ中国から亡命した人に教わったのですが、彼によると中国は2人のカールを愛する国だというんですね。2人というのは、カール・マルクスとカール・フォン・クラウゼヴィッツ。どちらも力の信奉者であり、したがって中国もまたそうなのだ、と。


鄧小平のころは国力が弱かったから、あくまで下手に出るモミ手外交でした。しかし経済力も軍事力もついてきた今、俄然強気に転じています。南シナ海にも東シナ海にも進出し、ウイグル、チベットなんかにも勢力を広げた。その延長線上にあるのが、尖閣であり沖縄なんです。

 力の信奉者である彼らに対処する上でわれわれが気をつけるべきは、力の空白を作らないことです。米軍がベトナムから撤退して空白ができた途端に、中国は西沙諸島を占領しましたが、同様のことがカムラン湾や南沙諸島でも起きています。力の空白ができてここが弱いと見たら出てくるわけです。

「永遠の同盟国も永遠の敵もない」――日本は自前の軍備を

「マット安川のずばり勝負」マット安川、織田邦男/前田せいめい撮影

 


 日本の安全保障は自衛隊と日米同盟で成り立っています。しかし近年アメリカの足元がおぼつかなくなってきている。2年前、アジアに集中するという戦略転換に踏み切りましたが、これを実行に移せるかは疑問です。

 アメリカは今後10年で国家予算を1兆2000億ドル、日本円にして約120兆円も削減します。その半分は国防費です。したがってアメリカの力はこの先確実に弱まります。

 アジアを重視するといっても、アメリカのDNAからして中東を放り出すわけにはいきません。ただでさえエジプトもシリアもイランもきな臭い今、どうしたって中東に目が向く。するとアジアは手薄になり、日米同盟の比重は軽くならざるを得ないでしょう。

 日本はアメリカがいつまでも同盟国でいてくれると思わないほうがいい。チャーチルは「永遠の敵も永遠の同盟国もない。永遠にあるのは国益だけだ」と言いました。

 要はアメリカも国益で動いているということです。戦闘機にしても日本はアメリカから買っていますが、アメリカが補給の道を閉ざしたらお手上げです。アメリカ頼みではいられなくなるこれからの時代に向けて、自前で軍備を持つ、自分の国を自分で守るということを考えないといけません。