硫黄島の遺骨、国は「帰還」に総力あげよ。
先の大戦で激戦地となった硫黄島(いおうとう)(東京都小笠原村)の自衛隊滑走路下に眠る戦没者の遺骨収集に向け、安倍晋三首相が滑走路の移設を行う考えを表明した。
日本のため命をささげた英霊の遺骨を故郷に帰すことは、国の大切な責務だ。厚生労働省、防衛省など関係省庁は一体となって取り組んでほしい。
硫黄島には、昭和20年2月に米軍が上陸し、栗林忠道陸軍中将を最高指揮官とする日本軍守備隊は地下壕(ごう)を使っておよそ1カ月間、徹底抗戦した後、玉砕した。
約2万2千人の将兵が亡くなった。国は昭和27年から遺骨の収集を始めた。平成23年度から3年間を集中実施期間と定め、収集を強化した。それでもなお約1万3千柱の遺骨が残されている。
滑走路移設には、およそ10年で300億円以上の予算が必要とされる。政府は来年度予算に調査費を計上する方針だ。
滑走路は米軍が戦闘終了後に建設し、日本返還後は自衛隊が使用してきた。
政府は23年度から、地中探査レーダーで滑走路地区の遺骨、地下壕の探査を進めてきた。今年11月をめどに調査の概要をまとめるが、地下壕の可能性のある場所が8カ所見つかった。多くの遺骨が眠っていると思われる。
移設を含め遺骨収集の加速を要望した超党派議連「硫黄島問題懇話会」の逢沢一郎会長らに対し、首相は22日、収集の集中実施期間を、30年度まで、さらに5年間延長する考えも伝えた。
米国で地下壕などに関する新資料が見つかっている。調査・収集済みとされてきた硫黄島東部から西部にかけての外周道路外側の区域を改めて調査するための延長だ。促進を期待したい。
遺骨収集は、硫黄島だけの問題ではない。海外における日本の戦没者は約240万人に及ぶ。これまでに収集された遺骨は約127万柱で約113万柱が未帰還である。海に沈んだ遺骨などを除く約60万柱が収集可能とされる。
これだけ多くの遺骨が戦後68年経ても帰国できないでいるのは、政府の取り組みが不十分だったからだろう。帰還のための基本計画を策定して法制化すべきだ。
海外における日本の戦没者慰霊碑に中国語などで落書きされる被害も起きている。現地政府と協力し、再発防止に努めてほしい。
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マスコミは全く、取り組んでなかったではないか。