空理空論、中国で生かせ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【古典個展】立命館大フェロー・加地伸行




参議院議員の選挙が終わった。テレビ報道で自民大勝の開票状況を見ながら、「諸行無常の響きあり」の感があった。

 それは、社民党の落ちぶれた姿を見たからである。「みどりの何とか」といったような泡沫(ほうまつ)諸政党のことはどうでもいい。老生にしてみれば、50年前、60年前の社会党(社民党の前身)の勢いを覚えている。自民党に対抗できるだけの議員数がいた。しかし今や、泡沫政党並みになっている。これを「諸行無常」と言わずして何と表現できるのであろうか。

 ではどうしてそんなことになってしまったのかと問われたとしても、老生の知ったことではない。何の関心もないからだ。

 さはさりながら、辞任を表明した社民党女性党首の「別に?」という感じの無邪気な笑顔を見ていると、同党ができもしない政策を「言うのはタダ」と気楽に述べてきた無責任と重なり、なにやら哀れを覚え、お気の毒という感じは否めない。

 この調子でいけば、いずれ同党の消滅は確実。となると、どうすれば再生可能かということになろう。

 しかし、傍目八目(おかめはちもく)ということもある。当事者よりも傍(そば)で見ている者のほうが、いい見通しを持つことができる。言わば、起死回生の妙手もあるわなということだ。

 それは、どういう案か。

 衰えたりといえども、社民党にも面子(めんつ)があろう。今さら保守派の物まねをすることはできまい。それでいい。

 となると、社会党以来これまで、喚(わめ)き続けてきた主張の中から、〈具体的にして、かつ現代に有用な政策〉を前面に出すことだ。そうすれば、面子も立つし、再生もあるいは可能かもしれない。

 では、そういう政策があるのか。ある。その政策は、かつては机上の空論であったが、今や最も説得力がある。

 ただし、その政策をわが国に対してではなくて、中国に対してぶつけてこそはじめて光り輝き、日本人の心を捉えうる。

 すなわち「軍備をなくして国民の生活を豊かにしましょう」と中国政府に言え。

 このスローガン、かつて社会党は日本政府に振り回していた。もちろん空理空論。まともな人は相手にしなかった。社会党が国民の支持を得なかった諸スローガンのひとつだった。

 しかし、このスローガンを今こそ中国外交においてぶつけてゆくと言えば、今日では現実性のある政策として日本人に支持されよう。中国の膨大な軍事費と同国農村の貧困とは、対照的である。このスローガンを対中政策として掲げるならば、いや掲げるだけでなくて実際に声を出し要求してゆくならば、日本人の心を捉えうる。

 社民党よ、これまでの対中土下座を改め、自分たちのかつてのスローガンを活(い)かし、死中に活を求めよ。幸せも不幸せも自分の態度ひとつで決まるのだ。

 『孟子』公孫丑(こうそんちゅう)上に曰(いわ)く「禍福は己(おのれ)より之(これ)を求めざる者なし」と。

(かじ のぶゆき)