中朝行き交う手紙に「マツモト・キョウコ」 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【再び、拉致を追う 第8部 国境の情報戦(1)】

中朝行き交う手紙に「マツモト・キョウコ」




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韓国の自由北朝鮮放送に中朝国境から届いた手紙。「マツモト・キョウコ」という名前が記され、日本人が収容されているとする施設の画像も添えられていた




■秘密警察名乗る男から届いた3通

 対岸の河原で洗濯する女性の姿は疲れてみえる。夏だというのに、緑はまばらだ。荒涼とした風景を望む国境線は約1300キロ。北朝鮮住民から見れば、極限の逃避行先ともいえる。中朝当局の目をかいくぐり各国の人間がひっそり行き交う。民家には情報機関の拠点が隠れている。その中でブローカーは情報を売りさばく。国境から手紙が届いたのは3年前だった。

 《朝鮮労働党中央委員会直属の15号文献室に6人の日本人が働いており、その中にマツモト・キョウコという女性が含まれている》

 ◆画像も添えられ

 受け取ったのは、韓国で北朝鮮の民主化運動を進めている「自由北朝鮮放送」の金聖●(キム・ソンミン)代表。朝鮮人民軍出身の脱北者だ。金氏の放送局では北朝鮮に向けた西側情報に加え、日本人拉致事件に関するプログラムも流している。北朝鮮北部の国境都市の秘密警察、国家安全保衛部の地方幹部を名乗る男から「日本人の情報がある」と連絡が入ったため、詳しく手紙で送ってくれ、と依頼したところ断続的に3通が送られてきた。

 《日本人たちは当局の徹底した審査を経て非常に信頼できると検証された人物で、日本の文献の翻訳・分析を主要業務とし、外出も厳しく禁じられている》

 「マツモト」とは1977(昭和52)年10月に鳥取県米子市で行方不明になった松本京子さん=拉致当時(29)=とみられる。「15号文献室」などの画像も添えられていた。

それ以外にも《日本の通信を傍受する施設で働いている》特定失踪者女性の情報や、《日本人二十余人が集団で暮らす平壌の施設》の情報も記されていた。

 ◆日本通告見送る

 北朝鮮内部の情報をウオッチしている金氏は、中朝国境を通じた独自のネットワークを持つ。日本人拉致被害者に関する国境情報をこれまで何度か日本政府にも提供してきた。だが、この3通の手紙の内容は日本への通告を見送った。

 「出来過ぎている」。金氏は作為的なものを嗅ぎ取ったという。この人物からの情報提供は初めてではなかった。2008年ごろ、松本さんの可能性がある「日本人」の毛髪などを持ち込んできたため、日本政府に連絡し、調べたが、本人と合致しなかった。

 一方、韓国の拉致被害者家族でつくる「拉北者家族会」の崔成龍(チェソンヨン)代表(61)が、松本さんとみられる女性が03年に北朝鮮北東部の清津(チョンジン)にいたという国境情報を入手。北朝鮮内部の協力者に照会したところ、「女性は北朝鮮に渡った在日朝鮮人か日本人男性と結婚し、子供はいない。2年前から平壌にいる」との情報も得られた。崔氏がこれまでに国境経由で得た情報のいくつかは正しかったことが確認されている。

 拉致被害者について長年調べ、中朝国境情報にも多く接してきた特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は言う。「百パーセント事実と一致する情報はないが、百パーセント嘘ともいえない」

●=王へんに文



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