学習院OB管弦楽団の定期演奏会を鑑賞された天皇、皇后両陛下と雅子妃殿下。演奏会では皇太子殿下が震災ビオラを披露された=7日、東京都豊島区の東京芸術劇場(代表撮影)
天皇、皇后両陛下は7日、皇太子妃雅子さまとともに、東京都豊島区の東京芸術劇場で学習院OB管弦楽団の第67回定期演奏会を鑑賞された。楽団メンバーの皇太子さまは、東日本大震災の大津波にも耐えた岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」などを使って製作された「震災ビオラ」を弾かれた。この演奏の実現の陰には、皇后さまの細やかなお心遣いがあったようだ。
奇跡の一本松や震災の流木を使って製作したビオラやバイオリンを多くの人に弾いてもらい、各地に音色を届けるプロジェクト「千の音色でつなぐ絆」は、製作者の中沢宗幸さん(72)と、皇后さまと長年の親交があるバイオリニスト、黒沼ユリ子さん(73)が参画する一般財団法人「クラシックフォージャパン」が続けてきた。
側近によると、皇后さまは今年1月、黒沼さんが震災バイオリンを弾いたコンサートを鑑賞した際、中沢さんともお会いに。「皇太子殿下にお弾きいただければ」という希望を聞かれていたという。
ただ、ピアノの演奏者である皇后さまは、奏者が楽器をいかに繊細な感覚で扱っているかを知っているため、すぐには演奏依頼はされなかった。まず、中沢さん夫妻を皇太子さまと楽団の中村昭嗣団長に引き合わせられた。そこで震災ビオラを手に取られた皇太子さまは「優しい音色ですね」と話され、中村さんも震災バイオリンに納得。かくして、震災ビオラと震災バイオリンを使った演奏会が実現することになった。
当日は、皇太子さまがシューベルトの交響曲「未完成」で震災ビオラを演奏、中村さんらのバイオリンとともに鎮魂と復興の祈りを込めた音色を届けられた。客席では両陛下と雅子さまが拍手を送り、曲の前後には楽しそうに歓談される姿も見られた。
中沢さんは「被災者に心から寄り添われている両陛下と皇太子ご夫妻のお気持ちが重なり、流木に詰まった多くの人々の思いがより深く伝わったと思う」と話していた。
両陛下は8日、東京・上野で日本芸術院授賞式にご臨席。その後、受賞者らを皇居・宮殿での茶会に招かれた。東京都心で35・3度を記録する猛暑となったこの日、陛下は「きょうはなかなか暑いですね」と語りかけられた。 9日には皇居・桃華楽堂で、宮内庁楽部による洋楽演奏会を、皇太子ご夫妻、秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さま、常陸宮妃華子さまと一緒に鑑賞された。曲の合間には、両陛下と皇族方が楽しそうに言葉を交わされた。
両陛下は10日には、東京都世田谷区の東京農業大学で、森林の伐採と再生の歴史を振り返る写真パネル展「『日本の森林復旧』展-日本の山はハゲ山だった-」をご覧になった。12日には皇居・御所で、皇族方と旧皇族らの親睦団体「菊栄親睦会」会員との晩餐(ばんさん)を催され、皇太子ご夫妻と秋篠宮ご夫妻、眞子さま、常陸宮ご夫妻が出席された。
秋篠宮妃紀子さまは9日、東京都千代田区で「第60回産経児童出版文化賞」の贈賞式に臨席された。大賞に輝いた山崎充哲さんの「タマゾン川」は、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川に外来魚が増えている問題を取り上げ、命と環境の大切さを伝える作品。紀子さまは、山崎さんに「子供にも読ませました」と声をかけられた。
山崎さんは、ペットの魚類の遺棄を防止する活動に取り組んでいる。山崎さんによると、紀子さまは「命を大切にする活動がもっと広まっていくといいですね」と話されたという。
高円宮妃久子さまは10日、60歳の誕生日を迎えられた。