日銀短観にみる期待の広がり。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130705/dms1307050717013-n1.htm
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業については製造業でプラス4、大企業非製造業もプラス12となり、3月の前回調査よりそれぞれ12ポイント、6ポイント上昇した。中小企業については、製造業でマイナス14、非製造業でマイナス4と大企業ほどの回復ではないが、それぞれ前回調査より6ポイント、4ポイント改善した。
短観は日本銀行が行う統計調査であり、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としている。調査対象は、全国の21万社から1万社程度を抽出している。このため、全国の企業動向を十分にカバーしている。
短観の中で、DIとは、企業の業況感について「良い」と回答した会社比率から「悪い」と回答した会社比率を引いて得られる。これがプラスというのは、「良い」と回答した会社が多いことを意味している。
DIを業種別に見ると、大企業製造業16業種中、プラスが8業種、ゼロが1業種、マイナスが7業種だが、前回調査と比べると15業種で業況判断が改善している。これは円安のおかげである。改善しなかったのは円安で業績が悪化する石油・石炭製品だけだった。
大企業非製造業では、12業種中プラスが11業種、マイナスが1業種で、9業種が改善した。マイナス1業種は電気・ガスだった。
アベノミクスの金融政策の効果を一言で言えば、予想インフレ率の上昇によって実質金利が低下し、それが実体経済に与える影響だ。実質金利は最近多少動きが鈍いが、傾向的には低下となっている。その結果、予想されることは円安による業績変化と設備投資増加である。
業況判断指数を見る限り、円安の効果が広範の業種に及び、経済全体の景気判断に好影響を与えているのがわかる。設備投資はどうなのか。
短観には設備投資計画も書かれている。大企業の2013年度の設備投資計画は全産業で前年度比5・5%増となった。前回の3月調査の2・0%減からプラスに転換した。中小企業等を含めた全産業でも前年度比5・5%増、前回調査の3・9%減からこれもプラスになった。
これをみると、設備投資にも良い効果が出始めていると考えることもできる。もっとも、業況感や設備投資計画は、これからの見通しに関するものなので、まだ実需が出ているわけでない。この意味で、将来への期待が高まりつつあるという段階である。
気になるのは雇用であるが、「過剰」から 「不足」を引いた雇用人員判断では、全産業でマイナス1、前回調査と同じであるが、3カ月後の先行きではマイナス5だ。これは先行き人員不足となるとみていることを意味する。雇用環境も徐々に良い方向になる見通しである。今の段階で断定は慎重にすべきであるが、アベノミクスの効果を否定するものでないことは明らかだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)