脱原発公約、電力供給の責任果たせぬ。
参院選の政権公約で、自民党を除く主要政党がそろって「原発ゼロ」や「脱原発」を掲げた。
6月29日に大阪市で行われた与野党9党の幹事長討論会で、石破茂自民党幹事長が原発への依存度を下げるとしても「経済へのマイナスを考えなければ無責任だ」と述べたのは理解できる。
電力の安定供給に責任を果たす政党の姿勢が問われている。原発ゼロに伴う電気料金の上昇も日本経済に悪影響を与える。それをどう回避し、現在の電力不足を解消していくのか。
昨年暮れの衆院選に続き、ほとんどの政党が「原発ゼロ」などを掲げるのは東京電力福島第1原発事故で広がった不安に訴えようという判断だろう。
政権時代に「2030年代に原発ゼロを目指す」とした民主党は今回も同じ目標を掲げた。太陽光などの再生可能エネルギーで賄うとしているが、天候などに左右され、電力を安定的に供給できるかどうかは不透明だ。
当時の政府試算でも、コスト高の再生エネルギーの比率が高まれば電気料金は2倍程度に上がるとされた。
これでは国民生活だけでなく、企業活動に深刻な影響が出かねず、産業空洞化の加速で雇用と所得が失われる恐れもある。
日本維新の会は「既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウトさせる(徐々に減らす)」と主張する。
また、自民党と連立を組む公明党は、原発の新規着工は認めず、可能な限り速やかに「原発に依存しない社会・原発ゼロ」を目指すとうたっている。
1日からは全国で節電がスタートした。原発に代わってフル操業が続く火力発電設備の故障にも備えておかねばならない。突発的なトラブルで予想外の大規模停電を招く可能性もある。余裕のある供給体制が欠かせない。
自民党は公約で「安全性を確認した原発の再稼働は、地元自治体の理解が得られるように努力する」とした。早期の再稼働には自治体の協力が欠かせない。政府と与党が一体となって自治体からの信頼獲得に努めてほしい。
エネルギーは毎日の国民生活や産業活動を支える基盤である。各党には、より現実に即した総合的なエネルギー政策を論じ合ってもらいたい。