視野の狭い報道にダマされるな。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 





【日本の解き方】

住宅ローン金利上昇にはしゃぐ視野狭い報道にダマされるな。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130605/dms1306050709000-n1.htm





 大手銀行が6月の住宅ローン金利を5月に続いて引き上げることについて、朝日新聞は5月30日朝刊の1面トップで「『アベノミクス』の中核を担う『大胆な金融緩和』の副作用が、家計に及び始めている」、日本経済新聞は「量的・質的金融緩和で貸出金利の押し下げを狙った日銀の思惑が外れる結果になっている」と報じている。

 住宅ローンの新規契約や借り換えを考える消費者は、こうした報道をどのような観点で判断すべきなのか。以前の本コラムでも住宅ローン金利の引き上げについて書いたが、あらためて解説したい。

 銀行の住宅ローンには、大きく分けて2種類ある。毎月金利が変動する変動金利型と、期間中の金利が一定の固定金利型だ。両者の中間として、一定期間が固定でその後は変動というものもある。

 それぞれの金利がどのように決まるかといえば、変動金利は短期プライムレート(短プラ)プラスアルファ、固定金利は10年であれば新発10年物国債の流通利回りを基準とするのが一般的である。

 問題になっているのは、固定金利型だ。それは長期国債金利が上がっているからだという。ただし、その水準は歴史的に見ても低い。これまでデフレ経済であまり低すぎたのが、デフレ脱却に応じて、少しずつ正常化する過程にあるだけだ。

 それでは長期国債金利の先行きはどうなるのだろうか。金利と名目GDP(国内総生産)成長率の関係であるが、理論的にどちらが大きいとはいえない。2000年以降のOECD(経済協力開発機構)35カ国のデータを見ると、平均はほぼゼロであり、プラスでもマイナスでもほとんどがゼロの近辺になっている。ということは、金利は名目GDP成長率の上昇とともに上がることを意味している。

 要するに新聞が金利の上昇とはやし立てるのは、同時に進行している経済成長率のアップを無視した記事だ。こうした記事を書く記者の視野は狭いので、5月16日に発表された1~3月期のGDP速報値や国際機関の見通し改善などはすっかり忘れて、目の前の名目長期金利の上昇という現象にだけとらわれている。

 先日の本コラムで紹介したように、金利には「名目」と「実質」の2つがあるという事実さえ理解していれば、こうした偏った報道に惑わされることはない。名目金利は上昇しても、実質金利は低下している。予想インフレ率が高まっているからだ。賃金の上昇率はインフレ率を上回るのが普通。であれば、名目金利の上昇は賃金の上昇率を下回り、大した話でない。

 視野が狭く、名目と実質の区別のつかないマスコミは、「日銀が名目金利の低下を狙っている」というがこれも間違い。予想インフレ率の上昇による実質金利の低下を通じ、デフレ脱却、経済成長を狙っているのだ。

 住宅ローンを考える場合、自分の所得がどの程度、景気に連動しているかで判断したらいい。景気より早く賃金が上昇するなら心配はいらない。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)