「日本」の解き方 予想超える景気回復の動き。
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20130521/dms1305210709003-n1.htm
内閣府は16日、今年1~3月期の国内総生産(GDP)の1次速報を公表し、実質で前期比年率プラス3・5%、名目で年率プラス1・5%と2四半期連続でプラスとなった。
その要因として、甘利明経済財政担当相は、家計のマインドが改善する中で、外食や自動車などを中心に個人消費が大きく増加したこと、海外景気の底堅さなどを背景に輸出が増加に転じたことなどが挙げられると指摘している。
たしかに、消費の好調は、政府の統計でも確認されていた。内閣府が発表している消費者態度指数で1月は4・1ポイント改善と過去最大で、2月も引き続き1ポイント改善になっている。総務省の家計調査でも消費支出も1月は前月比1・9%増、2月は2・2%増と2カ月連続の大幅増。資産効果が出てきている雰囲気だ。
こうした諸統計を受けて、民間シンクタンクの予想の平均は、年率2・8%だった。1次速報とはいえ、それより高い数字が出たので、市場が好感する場面もあった。
実質年率3・5%の内訳をみると、民間消費と輸出が大きく寄与している。民間消費の伸び率は3・7%、輸出は16・1%となっている。これは、アベノミクスの効果が予想以上に早く出ていることを示している。
アベノミクスではデフレ予想をインフレ予想に転換することで、実質金利を下げている。この効果は、円安や株高などの資産市場で早く表れる。ただ、それが輸出や消費につながるのはもう少し遅くなって、せいぜい4~6月期ごろだろうと思われていたが、少し前倒しのようだ。
民間住宅も7・9%増と、消費税増税の前の駆け込みもあって好調だ。政府消費や公的固定資本形成(公共投資)は、昨年度の大型補正予算の執行がなかったので、それぞれ2・3%、3・4%増どまりだ。民間企業投資は2・6%減と、ここ5四半期ほどマイナスが続いている。企業はまだまだ設備投資には慎重だ。
今後のGDPはどうなるのか。消費と輸出が伸びていけば、そう簡単には景気の腰は折れない。そのうちに、消費と輸出増に対応するために現在は低調な設備投資も出てくるだろう。
そうなってくれば、民需だけの成長も持続できる。
まして、大型補正予算の「弾」(執行残)もまだ残っている。その執行が順調にいけば、4-6月期でも同じような経済好調が続いている可能性が強い。
ただし、問題は消費税だ。今の景気はアベノミクス期待で円安、株高となって、それが予想以上に輸出、消費の実物経済を引き上げている。それが消費税増税になると、期待がしぼむ可能性がある。
いくら日銀が金融緩和しても、その一方で足を引っ張ることで景気マインドを悪くする可能性がある。消費税増税分を財政支出に回せば大丈夫という意見もあるが、それなら増税せずに民間に使ってもらうほうがはるかにましだ。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
消費増税は、企業が設備投資を本格化し、中小・零細企業が景気を実感してからだ。