自衛隊で格差のある“食”事情。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






【国防最前線】偽装米を見破ったけど…。

http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130508/plt1305080709000-n1.htm






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災害派遣された陸上自衛隊の、ある日の夕食。おかずが寂しい(桜林美佐氏撮影)





 わが国の防衛を考える際に忘れてならないのは「米」である。といっても「米国」ではなく、今回は「米穀=コメ」の話をしたい。

 「軍隊に入れば白いメシが食べられる」

 ということで、かつて1日1人6合という米飯が軍の士気高揚に一役買っていた。しかし、明治期前半からじわじわと脚気(かっけ)による死亡者が続出したことから、海軍では高木兼寛軍医が、その原因を「白米」(の食べ過ぎ)として、肉や魚のタンパク質の分量を増やし、米に麦を混ぜるなどした。

 するとたちまち状況は一変し、患者が激減した。それまで脚気は深刻さを増していて、遠洋航海時には半数以上が寝込んでいる状態だったという。

 一方、陸軍の森林太郎(=森鴎外)軍医は白米説を強く否定し、その結果、日清戦争では脚気による死者が戦死者を上回る事態となった。人員の多い陸軍では予算上おかずを充実させられなかったことも要因の1つのようだ。

 日露戦争では一般的に乃木希典大将が大量戦死者の責めを負うが、脚気による死者が3万人近くあり、ここにコメや森鴎外という名を連想する日本人はそんなに多くはないだろう。

 その後、脚気の原因はビタミンB1の欠乏と結論付けられたが、いずれにしても白米の量が著しく多いことに問題が多かったことが分かる。

 こうした歴史の教訓から、自衛隊ではさぞ栄養管理が徹底されている…と思いきや、陸海空ではやや格差があるように見える。

 実際、海自と空自は1日あたり(1食ではない)900円~1000円ほどであるのに対し、陸自は約850円と若干安い。そのためなのか、その時の材料価格などの状況によっては相対的におかずが少ない時があるようだ。

 山盛りご飯で満腹にしている様子を見るにつけ、つい、帝国陸軍時代を彷彿とさせてしまうのは私だけだろうか。真偽のほどは分からないが、駐屯地内の野草を取って出しているなど、涙ぐましい努力をしている所もあるという話も聞く。

 大阪府警は先日、陸上自衛隊・大久保駐屯地(京都府)に偽装米を納入したとして、米穀販売会社社長らを逮捕したという。炊事担当隊員が食べた際に味に違和感があり、検査を実施し発覚したというからお見事だ。「安かろう悪かろう」でさらに検査費用もかさむ象徴的な事例ではないだろうか。

 ともあれ、おかずが貧弱で頼みのご飯もこのありさまでは目も当てられない。給食業務、知恵を絞る栄養士の存在、それら自衛隊ならではの自己完結力が効率化の流れの中にあることも含め、自衛官の栄養源が気がかりだ。

 

■桜林美佐(さくらばやし・みさ) 

 1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。