【産経抄】与那国島、陸自の配備計画をめぐり波紋。
日本の最西端の島、与那国島は終戦直後の一時期、「東洋のハワイ」と呼ばれていた。本土はもとより、沖縄本島より台湾の方が近い地理的条件から、密貿易の中心地として栄えたからだ。
▼そんな時代への追憶が、独特の金銭感覚につながるのだろうか。陸上自衛隊の沿岸監視部隊の配備計画をめぐり、与那国町の外間守吉(ほかま・しゅきち)町長が要求している10億円の「迷惑料」が、波紋を広げている。
▼後に、「市町村協力費」と言い換えたものの、「反対派が動き始めた」ことを理由に、金額は「譲らない」という。防衛省が用地取得費として提示している最大1億5千万円とは、隔たりが大きすぎる。交渉は継続されるものの、新たな配備先として石垣島が浮上してきた。
▼そもそも町議会が自衛隊誘致を決めてから、5年が経過している。国境の島の安全がたった2人の警官によって守られている危うさは、以前から指摘されてきた。民主党への政権交代が障害になったとはいえ、もっと実現を急げなかったのか。
▼与那国島を含む八重山諸島といえば、「平和と人権」の名のもとに、特定の中学公民教科書に常軌を逸した攻撃が加えられた騒動が、記憶に新しい。その実態に迫った地元紙「八重山日報」の仲新城誠(なかしんじょう・まこと)編集長によれば、問題の背景には、与那国島への自衛隊配備計画がある。反対派の暴走をあおったのは、沖縄本島の主要マスコミだ(『国境の島の「反日」教科書キャンペーン』産経新聞出版)。
▼そういえば今回の10億円と迷惑料について「スクープ」したのも、「琉球新報」だった。おかげで防衛力の空白状態は今後も続く。漁夫の利を得るのはもちろん中国だ。それが沖縄の利益につながるという理屈が、どうしてもわからない。