国連に拉致調査委。
国連人権理事会は、拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害の実態を調べる調査委員会を設置する決議を全会一致で採択した。拉致が北の国家犯罪として世界に認定されたことを意味し、北への極めて有効な圧力となる。
決議は拉致のほか、北朝鮮で拷問などが組織的に行われていると強く非難し、北朝鮮に対して調査に協力するよう求めている。
菅義偉官房長官は「拉致問題の早期解決を含め北朝鮮の人権状況が改善されることを強く期待している」と述べ、古屋圭司拉致問題担当相も「問題解決に向けて大きな弾みになる」と話した。
安倍晋三政権は昨年暮れの衆院選での自民党公約に基づき、国連での拉致問題などに関する調査委設置を働きかけていた。日本の拉致被害者家族らもジュネーブの国連人権理事会に何度か足を運び、問題解決への協力を訴えた。
政府や家族会の粘り強い努力を評価したい。
横田めぐみさんら拉致被害者の救出を求める国際連携の輪は着実に広がっている。
今年に入り、2002年に脱北した朝鮮労働党の元工作員がドイツとシリアの拉致被害者に関する証言をしていたことが分かり、被害国が12カ国から14カ国に増える可能性が高まった。
すでに3人の被害者がいることが判明しているフランスで先月、拉致問題をテーマにしたドキュメンタリー番組が公共放送「フランス3」で放映された。
拉致問題解決への国際世論をさらに盛り上げたい。
国内でも、進展が見られた。
昨年暮れ、警察庁は北朝鮮に拉致された可能性を排除できない失踪者が868人(うち女性232人)に上る事実を開示した。
現在、政府認定の拉致被害者はめぐみさんら17人だが、これにとどまらないことは確実だ。捜査当局は民間の特定失踪者問題調査会とも可能な範囲で連携し、追跡調査を進めてほしい。
韓国の被害者家族会が平壌の外交筋から入手した情報によると、北朝鮮の金正日総書記が生前、後継者の金正恩氏(現第1書記)に「日本と絶対、拉致問題で協議するな」と命じたとされる。
北朝鮮は今も自国内での国連の調査を拒み続けている。国際社会はさらに結束を強め、国家犯罪の実態をあばく必要がある。