卑弥呼の墓…新たな発見は?奈良の2古墳20日調査。
http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/130216/wlf13021620130032-n1.htm
邪馬台国の女王・卑弥呼(ひみこ)の墓との説がある最古の巨大前方後円墳、箸墓古墳(奈良県桜井市)と、卑弥呼の後継、壱与(いよ)の墓ともいわれる西殿塚古墳(同県天理市)の研究者による立ち入り調査が20日、行われる。陵墓の立ち入り調査は平成20年に開始。国内2番目の大きさの応神天皇陵(大阪府羽曳野市)や飛鳥時代の女帝・推古天皇陵(同府太子町)などここ数年は有名な陵墓で立て続けに実施され、ベールに包まれた古代史の謎解明に期待がかかる。
箸墓古墳(全長280メートル)は、卑弥呼が亡くなった3世紀中ごろか後半の築造とされ、「考古学者が最も発掘したい古墳」といわれるほど。昭和40年代に宮内庁が後円部頂上などを調査したが、「皇室の祖先をおまつりする陵墓の尊厳と静謐(せいひつ)を守るため」(同庁)として同庁関係者以外は墳丘に立ち入れない。
40~50年前まで、地元の人たちが後円部と前方部の間の低くなったところを「里道」として歩いていたというが、その後、扉やフェンスが設置され、発掘も桜井市教委などが墳丘周辺で行っているが、調査の条件は限られている。
西殿塚古墳(同230メートル)も3世紀末の築造とされるが、詳細は不明。今回、日本考古学協会などの研究者が立ち入り調査することで、両古墳の築造順や墳丘構造など第三者の目を通した研究の進展が期待される。
調査は墳丘縁辺部を歩くだけで発掘や測量、遺物採取はできないが、古代学研究会陵墓委員の今尾文昭・奈良県立橿原考古学研究所付属博物館学芸課長は「古墳時代前期の王墓だけに、実際に現地を歩いて観察する意義は大きい」と話す。
陵墓の立ち入り調査は平成17年、日本考古学協会など15の歴史系学会が、箸墓古墳や国内最大の仁徳天皇陵(堺市、全長486メートル)など11カ所を要請。20年の神功(じんぐう)皇后陵(奈良市)から毎年続けられ、これまで7カ所で実施された。
23年の応神天皇陵(全長420メートル)では、墳丘を囲む堤(つつみ)に円筒埴輪(はにわ)が並んでいるのを確認。昨年の推古天皇陵では石室の一部とみられる石材が2つ並んでいるのを目視し、推古天皇と息子の竹田皇子が葬られた可能性が高まった。
一方、邪馬台国論争との関わりで注目度がひときわ高い箸墓古墳については、「宮内庁も簡単に許可してくれないのでは」との見方もあったが、西殿塚古墳と同時に許可されたことで関係者を驚かせた。
同庁の福尾正彦陵墓調査官は「関心の高い古墳であることは理解しているが、あくまで学会の要望を受けて安全管理上問題がないと判断した」と説明。今尾氏は「宮内庁が、文化財としての学術的意義を考慮してくれたと思う。毎年の立ち入り調査を通じて積み重ねてきた互いの信頼関係も大きいのでは」と話した。