日本版NSC  | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 








国家の安全保障戦略を一元的かつ継続的に構築する機関が存在していないという戦後日本の「歪(ゆが)み」を一刻も早く正すべきだ。「日本版国家安全保障会議(NSC)」創設に関する有識者会議への期待である。

 日本版NSCは首相官邸を司令塔に、目前の危機への対応や中・長期的な外交・安保課題に備える。米国の制度を参考に設置を目指す。

 安倍晋三首相は第1次内閣時にも関連法案を提出したが、尖閣諸島への中国の攻勢や北朝鮮の核・ミサイルなど、日本の安保環境は格段に悪化した。政府と有識者会議は速やかに議論を進め、早期実現に全力を挙げてもらいたい。

 当時の法案では、NSCは首相を議長に官房長官、外相、防衛相らで構成することとし、外交・安保を含む国家戦略の基本方針や有事対応に関する重要事項などの審議を柱としていた。

 有識者会議はこれをたたき台としつつ、その後の安保環境の激変を踏まえて、有事に迅速かつ的確に対処するための組織のあり方やその権限、態勢を検討する。国家の防衛と安全に不可欠な情報についても、その収集と分析の進め方などを議論する方針だ。

 アルジェリア人質事件では、各省庁の縦割りが原因となって首相への報告が遅れ、十分な情報集約もできなかった。首相は「さまざまな情報の断片を集めて一つの絵を描く」ために「横串にした危機管理」が重要と強調している。

外務、防衛、警察などが情報を抱え込み、互いに権限や権益を争うようでは、国を挙げての一元的対応はとれない。各省庁の情報を吸い上げ、横断的・重層的に分析できるスタッフも不可欠だ。

 具体的にはNSC担当首相補佐官を常設し、情報集約権限を法的に明確化しておくべきだ。その下に当初は20人前後のスタッフを想定しているが、情報分析にはさらに多数の要員が必要だろう。

 米NSCは1947年に創設され、長い歴史を誇る。国務省、国防総省、軍、情報機関などの縦割りに陥りやすい政策決定過程を統合し、大統領が総合的、機能的に決断できる。日本もこうしたシステムを学ぶべきだ。

 有事や災害時などの緊急事態に首相官邸を司令塔に対処方法を問いかけ、国の総力を発揮できる答えがすぐに返ってくる。そうした組織を作り上げてほしい。