参院民主党「何でも反対」に戻ったか。
民主党は、3年余に及んだ政権与党の経験から何も学んでこなかったようだ。
公正取引委員会委員長に、杉本和行元財務事務次官を充てるとした政府の人事案提示を拒否し、衆参両院の議院運営委員会理事会を途中退席したことだ。
公取委員長は昨年9月から空席が続いている。これ以上の混乱が許されないことは、政権を担った政党ならば十二分に承知しているはずである。
国会攻防を有利に運ぶために何でも反対する「抵抗野党」では通用しない。即刻、政府提案を受け入れ、空席解消に責任を果たすべきである。
事前に報道された人事案の国会提示を認めないとする与野党の申し合わせルールに抵触するというのが拒否の理由だが、全く理屈になっていない。
政権当時の民主党が原子力規制委員会の人事をめぐって、ルール見直しを求めたことを忘れてもらっては困る。杉本氏を候補とすることも、民主党政権当時からの既定路線ではなかったのか。
そもそも、「事前報道ルール」に意味を見いだせない。国会同意人事の対象ポストは、国民生活と深く関わり、影響も大きい。その情報をいち早く国民に知らせ、判断材料を提供することは報道機関の重要な役割だ。それを否定するようなルールの方こそ、廃止されるべきである。
人事案提示への拒否には、輿石東参院議員会長の意向が働いたとされる。民主党は参院第一党であり、衆参ねじれ国会において安倍晋三政権を揺さぶる材料にしたいとの思惑もあろう。
だが、多くの有権者は「決められない政治」に愛想を尽かしている。先の衆院選で民主党が惨敗したのも、党内がまとまらず課題先送りを続けてきたからだ。
民主党の「何でも反対」路線は公取委員長人事だけでない。
憲法改正をめぐる国会の議論も妨害している。参院憲法審査会は6日に幹事懇談会を予定していたが、民主党が直前にキャンセルしたため、延期された。衆院側でも7日に行われた日程調整で開催に反対した。
輿石氏はいつまで同じ愚を繰り返すつもりなのか。海江田万里代表ら党執行部が輿石氏の「暴走」をこのまま許したならば、党の再生はないと言わざるを得ない。