アルジェリア人質事件に心を痛められる両陛下のお言葉。
皇后陛下が明かされた「皇居のマイタケ」の味。
アルジェリア南東部イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件は今週末までに、日本人の死亡者10人が確認されるという最悪の結末を迎えた。天皇、皇后両陛下は、事件に巻き込まれた犠牲者たちのことを案じ、深くお心を痛めているご様子だという。
先週の【皇室ウイークリー】(262)では、事件が発生した翌日の17日に、陛下のおぼしめしで、岸田文雄外相が事件の対応に専念できるように、大使7人の認証官任命式で侍立大臣を別の大臣と代わったことを伝えた。
この段階では情報が錯綜し、犠牲者の具体的な人数や氏名ははっきりしていなかったが、側近によると、両陛下は、事件のことを気にかけ、連日、主要紙ほぼすべてに目を通し、テレビのニュースも熱心にご覧になっていたという。朝は午前6時ごろからニュースをご覧になることも。側近に事件について尋ねられたこともあったという。
18日には、昨年11月に77歳になられた常陸宮さまの喜寿をお祝いする会が、陛下のおぼしめしで延期となった。お祝いの会は、ごく私的な集まりだったが、事件を受け、陛下は「延期された方がいいのではないか」というお考えを示されたという。
21日深夜には、安倍晋三首相が日本人7人の死亡を確認したと明らかにしたが、翌22日の両陛下は「大変、心を痛めていたご様子だった」(側近)という。
側近によると、遺体搬送支援などのため政府専用機がアルジェリアの首都アルジェに到着した23日には、両陛下は側近に「政府専用機はいつ日本に戻ってくるのだろうか」と尋ねられた。両陛下は、犠牲者の遺体がいつ日本に戻ってくるのか、心配しているご様子だったという。
両陛下が大きな災害で、現地の知事などを通じてお見舞いのお気持ちを関係者に伝えられることは珍しいことではない。一昨年3月の東日本大震災の際には、陛下のお言葉やビデオ映像も発表されている。しかし、日本人が被害にあった海外のテロ事件などでは、今回のように両陛下のお言葉が、国民に伝えられた例は少ない。
2001年9月11日に発生した米同時多発テロの際には、当時の渡辺允侍従長が米国の駐日大使に「天皇皇后両陛下には、9月11日米国において、悲劇的な状況のもとに、極めて多くの無辜(むこ)の人命が失われたことを深くお悲しみである。両陛下には、心からの哀悼と同情の意を表したいご希望である」と、ご弔意を伝えたことが明らかにされている。
1996年にペルーで発生した日本大使公邸占拠事件では、陛下が誕生日の記者会見で「多くの人々が人質になっていることに、深く心を痛めていることをお伝えしたいと思います。平穏にすべてが解決され、ひとときでも早く人質が無事、解放されることを切に祈っております」と述べられた。
側近は「両陛下は、今回の事件で、人質として犠牲になった人への強い思いがあるご様子とお見受けした」と話した。
それは皇太子ご夫妻も、同じようだ。小町恭士東宮大夫は25日の定例会見で、「日本人を含む多数の犠牲者が出たことについて、深く心を痛めておられると承知している」と明かした。
小町東宮大夫は外務省出身だが、皇太子さまから事件についていろいろとご質問を受けることもあったという。
ところで、25日の会見では、皇太子ご夫妻の長女、敬宮(としのみや)愛子さまが通う学習院初等科のクラスが、インフルエンザで欠席者が増えたために学級閉鎖となったことも明らかにされた。
会見によると、愛子さまは元気なご様子だが、初等科では複数のクラスが学級閉鎖になっているという。愛子さまのクラスは22日2時間目が終わった後に、下校となり、翌23日から金曜日の25日まで学級閉鎖となった。
一方、天皇、皇后両陛下は23~25日、3日連続で、皇居・宮内庁病院で定例の健康診断を受けられた。
両陛下は22日、皇居・宮殿で農林水産祭の天皇杯受賞者の拝謁に臨まれた。恒例の拝謁で、両陛下は園芸、畜産、水産、むらづくりなど7分野の受賞者の説明をお聞きになった。
受賞者との間でキノコが話題になったときには、「皇居にもマイタケが出るんですよ」と両陛下が明かされる場面があった。
皇后さまが「初めて去年…」と話されると、「もう少し前から…」と陛下は訂正された。続けて皇后さまが「おいしかった」と述べられたため、横で聞いていた記者たちは一様に驚いた。
宮内庁によると、皇居ではさまざまなキノコが確認されており、食べられるものではキクラゲの存在が知られていた。両陛下が食べた「皇居のマイタケ」は、毎朝のように散策している吹上御苑で見つけられたものだろうか。
24日の宮内庁の風岡典之長官の定例会見では、官邸側からの要望を受け、長官が新内閣に対して先週、宮内庁の所管事項の説明を初めて行ったことが話題となった。
風岡長官によると、この日は菅義偉官房長官が対応したが、アルジェリアの事件対応などで多忙のため、1時間弱の予定だった面会時間は20、30分程度に。「両陛下や皇族方のご健康問題、両陛下のご負担軽減の問題、両陛下のご陵、葬送のあり方などの当面する課題」について、簡単に現状を説明した程度だったという。
安倍晋三首相は就任直後の昨年12月、野田政権がまとめた「女性宮家」創設を柱とした論点整理を白紙にする方針を産経新聞のインタビューで明らかにしたが、風岡長官は「皇室制度については、宮内庁の立場は説明した。時間の制約があり、立ち入った説明まではしていない。制度のあり方については、内閣官房、国会に任せることなので、特段申し上げるべきことではない」と述べた。
記者側からは、「政府に議論するようお願いするのは構わないのではないか」とする質問も出たが、風岡長官は「陛下のお立場というのは、国事行為以外は、国政に関する権能を有しないという立場。制度論についても、触れることについては慎重に考えている」とした。
また、風岡長官はこの会見で、女性週刊誌「女性セブン」1月31日号の「天皇・皇后両陛下困惑!」「『女性宮家白紙』安倍首相へ談判使者」と見出しをつけた記事に苦言を呈した。
記事の「談判使者」とは風岡長官のこと。長官は先述した官房長官とのやり取りを踏まえ、「今のような考え方なので、使者として談判に向かうというのは、仰々しい話。あまり推測に基づいて書かれるとちょっと困るなという気がする」と不快感を示した。
記事では、「女性宮家創設」の議論が始まった際、皇后さまが親しい知人に対し「いろいろありましたけど、たくさんの方々の努力のお陰があって、少しずつ動き始めているようです。これで私たちの気持ちも、少し楽になりました」と発言したと掲載しているが、風岡長官は「皇后陛下は、どんな親しい人であろうと、このような気持ちを語るということは考えられない」と述べた。
宮内庁は24日、発熱や上腹部の痛みなどのため、2日から京都市の京都府立医科大付属病院に入院していた寛仁親王家の長女、彬子さまが同日午前に退院し、市内の自宅に戻られたと発表した。宮内庁によると、明確な原因や病名は判明していないという。
各宮家は今週もさまざまな公務を果たされた。
秋篠宮さまは21日、総裁を務める山階鳥類研究所(千葉県我孫子市)の所員会議に出席された。23、24日には広島県を訪問し、同研究所の「中国・四国地区拡大賛助会員の集い」に臨席された。24日午後には、東京大学総合研究博物館(東京都文京区)の研究会に出席された。
秋篠宮妃紀子さまは23日、国立能楽堂(渋谷区)で「30周年記念公演第32回手話狂言・初春の会」にご臨席。24日には東京ドーム(文京区)で「東京国際キルトフェスティバル~布と針と糸の祭典2013~」開会式にご臨席になった。
22日にはご夫妻で玉川大学(東京都町田市)を訪問し、企画展「石に描かれた鳥たち-ジョン・グールドの鳥類図譜」をご覧になった。同展は、秋篠宮さまの妹、黒田清子さん(43)が監修などに協力しており、14日には両陛下もご覧になっている。
常陸宮妃華子さまは19日、グランドプリンスホテル新高輪(港区)で平成24年度日本馬術連盟表彰式と祝賀会に臨席された。
高円宮妃久子さまと次女の典子さまは同日、ホテルニューオータニ東京(千代田区)で「平成25年衣紋道高倉流衣紋はじめの儀」に臨席された。
久子さまは22日、ホテルオークラ東京(港区)で国際福祉協会(ILBS)の60周年記念午餐(ごさん)会に臨席された。