北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会(上田清司会長、埼玉県知事)が、安倍晋三内閣総理大臣及び古屋圭司拉致問題担当大臣に対し、「致問題の早期解決に関する要望書」を昨日、1月17日に提出しましたので、参考情報として発信します。
■北朝鮮による拉致問題の早期解決について
北朝鮮が日本人拉致を認めて拉致被害者5名が帰国してから10年もの歳月が過ぎ去ってしまいました。その間、拉致被害者のご家族が帰国した以外、新たな拉致被害者の帰国はありません。昨年11月には4年ぶりとなる局長級の日朝政府間協議が行われ、拉致問題解決への期待が高まりましたが、その後、北朝鮮が人工衛星と称するミサイル発射を強行したことは断じて容認できるものではありません。このミサイル発射により今後の協議の目途は立っておらず、拉致被害者とそのご家族のお気持ちを考えると本当に胸が痛みます。
このような状況の中で誕生した新政権には、「対話と圧力」の基本方針を貫き拉致問題の完全解決に全力を傾注するとした公約や、安倍総理のこれまでの経験・行動などから、拉致問題の早期解決を大いに期待するところであります。
我々「北朝鮮による拉致被害者を救出する知事の会」は、拉致問題に対する国民の関心をさらに高めるため、引き続き、国民世論の喚起に努めてまいります。我が国政府におかれましては、高齢化している拉致被害者ご家族の期待に応え、一日も早くすべての拉致被害者の帰国を実現していただくよう、下記の事項について要望いたします。
記
1 一刻の猶予もない拉致問題の解決に最優先で取り組むこと。
2 国際情勢の変化を的確に見極めつつ北朝鮮との政府間協議を再開し、目に見える形で具体的な成果を出すこと。
以上
◆北朝鮮は自分に必要な時は動く
次に日本人拉致の状況について少しお話します。先ほど、今年の回顧がありましたが、今年の特徴は北朝鮮が日本にいよいよ接近を始めたことだと思います。
4年前に1度、拉致を議題にして交渉しようと北朝鮮から提案してきました。それが福田政権の時です。その時は、拉致を議題にしましょうと北朝鮮から言ってきたんです。6者協議の枠でもなかった。6者協議の外で、突然拉致問題を議題にして実務協議をしましょうと言ってきた。2008年6月です。
そしてそこでは「解決済み」ということを言わない、と。これは合意文があるわけではないんですが、私たちが聞いた説明によると、「生きている被害者を返すための調査やり直しをします」ということまで北朝鮮が言った、と当時聞きました。
そして拉致を議題にした実務協議が2回開かれました。6月と8月です。その時彼らが求めてきたのは、制裁の一部解除でした。つまり制裁を解除してほしいということが交渉の条件になったんです。
それは制裁が効いている証拠だと思いますが、彼らが何を言ってきたかというと、船舶の受け入れです。万景峰号を初めとする船を入れてほしい、と。色々やりとりがあって、船舶はだめだが、万景峰号が人道支援の物資を積みに入ってくることはいいのではないか、と。
それから、朝鮮総連の最高幹部6人は、北朝鮮に行くことはできますが、帰ることができないんです。それを再入国許可というんですが、永住資格を持っていても、一度日本から出てしまうと永住資格がなくなるんですが、出国前に再入国許可をもらっていくと、帰ってくることができるんです。
総連の幹部6人に対しては、彼らは北朝鮮の国会議員を兼ねているので、北朝鮮の政策にも責任があるということで再入国許可を止めています。その許可をもう一度くれと言ってきました。
もう一つ、チャーター便です。飛行機です。北朝鮮と日本の間には定期便はないんですが、ある飛行機をチャーターして、つまり1機借りて1回飛ばすことができるわけです。
朝鮮総連は時にそういうことをやっていたわけです。観光ツアーなどで、日本から直行便で行っていたんですが、今はそれはできなくなっています。そのチャーター便を止めていることを解除してくれ、と。
船と飛行機と人、この3つを解除してくれることを条件に、調査のやり直しをします、と。2回の交渉の中で様々なことがあって、当時中山恭子さんが福田政権の拉致問題担当補佐官でした。外務省の局長は、今事務方のナンバー2になった斎木(昭隆アジア大洋州局長)さんでした。そして薮中さんが次官だったんで
すが、薮中さんと中山さんと政権の中で激しいやりとり、私が見ていると喧嘩に見えるようなやり取りがありました。
中山さんは「行動対行動」の原則を守らないとだめだ、と。北朝鮮が「調査やり直しをする」と言っているのは、口で言っていることで、それに対し、船を入れたり、人の往来を許したり、飛行機を飛ばしたりするのは行動だ、と。「行動対口約束」ではだめだと言いました。
外務省は、全部の制裁じゃなくて、貿易等はまだ残っているので一部を解除することで調査やり直しをしたい、ということだったです。
最初6月に実務協議を終えて、斎木さんが帰ってきて、外務大臣にも報告しないまま、福田総理大臣のところに行きました。中山さんは首相官邸にいたんですが、拉致担当の補佐官だったのにそこに呼ばれませんでした。
斎木さんが、「船と人と飛行機の解除で調査やり直しと話がまとまりました。総理これでいいですか」と決裁をもらいに来た時に、福田総理はその場を見て、「中山君がいないじゃないか呼びなさい」と言ったんです。後から中山補佐官が入った。
外務省のシナリオは中山さんを外したところで制裁の一部解除を決めようとしましたけど、中山さんはそこで反論し、その後我々の前で説明会をしてくれたんですが、そこでも斎木さんに対し、「外務省の説明のしかたはおかしいですね」と言って抗議しています。
普通、民間人の前で、政府の人間同士が違う意見を言うってことはないんですが、その時は、「外務省の紙はおかしいじゃないですか」というようなことを言ってまして、一体何が起きているのか私たちは最初よく分からなかったんです。
少なくとも、万景峰号を入れることは絶対だめだと言って、政権の中で中山さんは頑張って、自民党の当時の幹事長、今国会議長になった伊吹さんなどもそれを応援して、福田政権も船はだめだとして、チャーター便と総連の6人の幹部だけは残すと決めました。
そしたら朝鮮総連は、「日本は約束を破ったからもう交渉はこれで終わりだ」と言ってました。それでも福田政権は頑張って、8月の初めに内閣改造をして、中山さんを担当大臣にしました。
補佐官というのは権限はないんです。しかし大臣というのは権限がある。閣議に出るわけです。制裁は色々なものがありますが、大部分は閣議決定されます。だから解除する時も閣議で決定するんですが、そこで担当大臣が反対するということになったらなかなか解除できないわけです。
そういう権限を持つ人に福田さんは8月の初め、任命しました。外務省だけのやり方はしないという風にしたんです。福田総理も、2002年の官房長官時代に、外務省の言う通りにやって、調べてもいないのに「死亡」と通告し、あとで冷たいと大変批判されたのを少し反省したのか、家族のガス抜きのためかもしれ
ませんが、彼女の言うことを聞かないで拉致問題を進めたら世論の反発を招くということを分かっていて、担当大臣にしたんです。
担当大臣にしたのに、突然また北朝鮮が、朝鮮総連はもうこの交渉はつぶれたと言っていたのに、「もう1回やりましょう」と言ってきて、8月に北京で交渉しました。
そこで日本側の要求を北朝鮮が受け入れて、「船は制裁解除しなくてもいいです。飛行機と人だけでいいです」と北朝鮮が譲歩してきたんです。「そのかわり調査をやりなおします」と。それに対し、「やり直すという口約束だけじゃだめだ」と言って、「じゃあ調査委員会を立ち上げます」となった。
調査委員会を正式に立ち上げるということと、飛行機と人の制裁を解除することでお互いに合意ができて、「北朝鮮は何か焦ってるな」と。もともと北朝鮮は「拉致は解決済み」と言っていたのに、向こうから拉致を議題にしようと言ってきて、そして、一度万景峰号について一度いいと日本側がいいかけたにもかかわらず、また万景峰号をつぶした張本人の中山さんが大臣になって強硬になったにもかかわらず、譲歩してきた。彼らも焦ってるんだなあと思いました。そういう状況でした。
つまり、彼らが必要な時は動くんです。こちらが強硬なことを言ったからだめになるということではなかったのが、6月と8月の関係です。ところがその後、金正日が病気で倒れます。
そして9月になって福田さんが辞意を表明したら、「次の政権の政策をみたい」という口実を使って、北朝鮮は先ほどの約束を守れないと言った、ということが4年前にあったことです。
◆調査やり直し破棄-北朝鮮の内部で何が起きていたのか
まずそのことを頭に置いておかないと今年起きたことを評価できないので、そのことを申し上げたのですが、今年のことに行く前に、なぜ北朝鮮は焦っていて、船まで一度日本側か許すと言ってそれをくつがえしたのにもかかわらず、いいですよと言ったのか。
それなのにまた突然、約束を守れないと言ったのか。北朝鮮の内部で何が起きていたのかということについて、まだ正確な情報を私たちは持っていません。
2002年に何が起きていたのかということについては、最近、何人かの人たちから、当時北朝鮮にいた人たちから少しずつ聞けるようになってきて、かなり分かってきました。しかし、4年前のことはまだ分かりません。
ですから外部から推測をするしかないんですが、いくつかの仮説があります。それは1つだけでなく、2つ、3つと重なっているかもしれません。
第1の仮説は、先ほども言いましたが、金正日が倒れたということです。すべての外交交渉は金正日の決裁がなければできないのですね。そういうシステムだったのです。少なくとも2か月から3か月くらいは、かなり病状が悪かったようです。
日本と交渉して、被害者の何人かを出すとか出さないとかについての決裁がおりない状況で、そういう戦略的な交渉はできないと考えた、というのが1つの仮説です。
そのことをサポートするのが、北朝鮮が日本に最後まで要求してきた制裁の解除は飛行機と人だったんです。「船はいいです」と呑んだ。しかし、飛行機と人は最後までこだわった。それは何なのか。
実は4年前、2008年の9月9日、国家創建60周年ですね。朝鮮民主主義人民共和国ができたのが1948年で、2008年が国家創建60周年の大軍事パレードを準備していたんです。そこに朝鮮総連の幹部たちが大挙して参加する。飛行機をチャーターして行くという準備をしていたという情報があります。
チャーター便で許宗萬(ホ・ジョンマン)以下幹部たちがみんな行こうとしていた。その時はまだ許宗萬が第一副議長で、徐萬述(ソマンスル)という議長は病気でした。その人たちは行けなかったのですが、飛行機で9月9日の軍事パレードに参加できるということに固執していた可能性がある。
しかし、金正日が倒れたことによって、9月9日のパレードは大変規模が縮小されました。正規軍は出なくて、予備軍のようなものしか出なかったのです。当時も、平壌にいる大使館の人たちに、朝何時に来てくださいと、金正日が出てくることになっていたんですが、突然延期されて出てこなかったことが分かっています。
ですから、金正日が出てくるための大々的な準備をしていたんですが、突然病気になり、病気ということは言いたくないから秘密にしてたんですが、出てこないということで健康がおかしいということが分かったんです。
つまり健康がおかしくなって、日本に対して9月9日に総連のことをやろうとしていたが、それが必要なくなったから打ち切りになった。だとすると、9月9日に制裁解除をして行事に参加した後、彼らは(調査を)打ち切りにしたかもしれないですね。目標がそれだとすると、それかもしれない。
◆アメリカもだまされた
もう1つの仮説は、アメリカとの関係です。ちょうどその頃一番話題になったのが、テロ支援国家解除の問題です。2005年からアメリカは北朝鮮に対して金融制裁をかけたんですね。それは大変効いていました。
そして安倍さんが2005年に官房長官になって、朝鮮総連に対する厳格な法執行をやり、日本からの送金を厳しく取り締まりました。送金だけでなく、ミサイルの部品等も含めてです。それとアメリカの金融制裁とが効いて北朝鮮は大変困ったんです。
当時、韓国の盧武鉉大統領が、ブッシュ大統領に金融制裁を解除しろと10分くらい演説したという話がありますが、それだけ北朝鮮が困っていたということです。盧武鉉は誰の大統領なのかということです。
そして北朝鮮はアメリカに対して接近したんです。金融制裁を解除してほしい、と。核開発を止めます、と言ったんです。口約束をして、口約束だけでなく、寧辺の核施設の煙突を一つ爆破するショーまでやったんですね。
煙突は何のためにあるかというと、核施設本体ではなく、核施設の熱を冷やすための空冷式なんです。その空気を最後に出す煙突なんです。だから煙突一つ爆破しても、空冷する外側の煙突がなくなるだけで、あそこに川がありますから、水冷式でもできるんです。水で冷やすこともできて、付属施設一つを爆破しただけなんです。
でもそれでライス国務長官、ヒル国務次官補は、北朝鮮が譲歩してきたと、このチャンスを逃してはならないと言って、ブッシュさんを説得しようとした。当時、チェイニー副大統領等は反対していた。我々がしょっちゅう会っていたマイケル・グリーンさんとか、ボルトン前大使とかみんな反対していたんですが、ヒルさんが他の反対意見を押しのけて、北朝鮮の言っていることを信じようとしたんです。
その時ブッシュ大統領は(横田)早紀江さんとも会っていましたので、「拉致問題が全然動いてないのはだめだぞ」と言っていたそうです。何か進展がないとだめだ、と。実はあの時、安倍さんが病気になってなくて、安倍政権だったら解除されてなかったと思います。
安倍さんが訪米した時、このテロ国家指定解除の問題になった時、「ライスにもよく言っておくから最後は俺とお前で決めよう」とブッシュさんに言われたんだそうです。そういう信頼関係があったので、安倍さんが「止めてくれ」と言ったら、ブッシュ大統領は止めたと思うんですが、福田さんになって、福田さんはそれほど一生懸命「止めてくれ」と言わなかったこともあった。
そういう状況でしたが、ブッシュ大統領は気にはしていて、「全く動いてないんじゃだめだ」と言ったんです。そういう時、突然北朝鮮から、「拉致問題で話し合いしましょう」と言ってきたんです。
何にも話し合いをしていないというと動いてないわけですが、話し合いになった、と。そして調査やり直しまで決まった、と。これは一応形式的には動いたことになるというので、ブッシュ大統領も早紀江さんに対して一応面子は立つと思ったのかどうか知りませんが、しかし一応形が整った。
北朝鮮からすると、とにかく金融制裁を解除してもらいたかった。そしてテロ支援国家指定を解除してもらいたかった。その流れの中で、拉致問題が利用されたんじゃないか。
そうすると、8月の合意の直後に、アメリカはテロ支援国家指定解除をするという方針を決めてたんです。解除自体はちょっと後になります。10月くらいだったと思います。しかし、その方針が決まったということを見て、北朝鮮がその後約束を延期しても、アメリカは結局解除してしまったわけです。
金融制裁が効いていた。それを解除したいと思った。1つ目の仮説は朝鮮総連への制裁は効いていた、チャーター便で飛ばしたかったわけですが、2つ目の仮説は金融制裁が効いていたということです。
結局、2つ目の仮説の方に立つと、「行動対行動」の原則を守らなかったために、アメリカはだまされてしまったんです。煙突は一つ爆破されましたが、その後北朝鮮は核実験をして、核保有宣言をし、そして寧辺でのプルトニウム生産は止まっていますが、濃縮ウラニウム生産をしていると公然と言っているわけです。
濃縮ウラニウムの生産は、天然ウラニウムがあれば、原子炉はいらないんです。北朝鮮には天然ウラニウムはたくさんあるんです。あとは電気さえあれば、遠心分離機を廻せば濃縮ウラニウムは作れるんです。どこでやっているか、未だに我々は分かっていないんです。今も、どこかの地下施設で濃縮ウラニウムの生産が続いているわけです。
つまりアメリカが金融制裁を解除したけれども、核開発が続いてしまったということです。「行動対行動」の原則を守らなかったためにだまされちゃったんです。
◆知っている秘密が少ない人を何人か返そうとしたのか
3つ目の仮説は、当時、本当に拉致問題を動かそうとしていたということです。色々な情報がありました。何人かの人たちを返すために訓練しているという情報もありました。
でもその時の情報でも、「死亡」と言われた8人について返すという情報は全くありませんでした。そうではない人たちを何人か準備しているのではないか、と。あと、嫌な話ですが、本物の遺骨を準備しているんじゃないかという話もありました。つまり、被害者を殺してですね、本物の遺骨を作るという情報もありました。
我々は意図的に、「日本の技術を甘く見るな」と。「その骨が誰の骨かだけでなく、いつ死んだのかも分かるんだぞ」ということを言っていて、大変緊張しながらあの時過ごしていたのを覚えています。
何か拉致そのものを動かそうとしていて、日本の制裁を、1回だけチャーター便を飛ばすだけでなく、万景峰号を来させるようにする。それから経済制裁も解除させる、あるいは食糧支援を取ろうと考えていた、というのが3つ目の仮説です。
その時も、「死亡」と言われた8人については、動かそうという兆候はありませんでした。そうではなく、もしかしたら特定失踪者と言われる人たちの中か、あるいはよど号関係者の中で自分で北朝鮮に入った人がまだいると言われていることがあります。はっきりはしません。
もう一つ言われていたのは、松本京子さんの話です。松本京子さんは政府認定の被害者ですが、北朝鮮が「死亡」と言った8人には入っていない。ですから認定被害者について出すことができる。そして2002年に金正日が「死亡」としろと言った人を変えなくてもいい。北朝鮮の中で、金正日が一度「死亡」と言ったことを変えるというのは大変なことですから。
そしてこれも非公式の情報ですが、松本さんは工作機関の外にいる。知っている秘密が少ない。こういうことを準備していたかもしれない。これが3つ目の仮説です。
朝鮮総連のチャーター便で9月9日に行かせようとしていただけだ。それが金正日のことでだめになったのか。2つめは、もう少し日本との関係を動かそうとしていた。それも金正日の病気でだめになったんじゃないかと思います。3つ目はアメリカの金融制裁解除、テロ国家指定解除をとろうとして、拉致が動いてい
る様子を見せなければならなかった。そしてそれは成功したということです。もしかしたらこの3つともが正しいのかもしれません。
◆北朝鮮は今2.5段階
そういうことを頭に置いて、今年起きたことを考えてみたいんですが、今回北朝鮮は日本に対し、戦後の帰国者の中で亡くなった人の遺骨があります、と。その墓が工事で出てきて荒らされてますよという話をしてきた。
拉致については表向きは「解決済み」と言っている。9月17日にも北朝鮮は声明を出しましたが、「拉致は解決済み」、「対策本部や救う会のような拉致産業のような人間が自分たちのために拉致がまだ解決していないと言っているんだ」と。そして、「そういう悪い政治家が安倍さんみたいな極右の政治家だ」と。
だから4年前に比べると、「解決済み」と言っている点では元に戻っちゃったわけです。しかし、北朝鮮の態度は、第1段階は全く日本を無視するということです。「拉致は解決済み」と言って、昔は「拉致はでっちあげ」と言ってましたが、全く交渉しない。
その段階ではなく、「交渉はしたい」と言ってきた。しかし拉致は議題に入っていない。4年前は3段階目でした。拉致を議題にして話し合いをするというところまできた。今年は、最初始まった時は2で、日本側は頑張って、「遺骨の問題なら赤十字レベルでやりましょう」と。しかし、赤十字だけで遺骨の問題はできませんので「局長級の会談をやるんだったら、こちらは拉致の話もしますよ」と。
北朝鮮側は、「明示的に拉致を議題にするとは言えない」と言ってもめたんですね。それで予備会談をしようということになって課長級を2日でやることになっていたのが3日目になったのは、議題を明確にするかどうか、表現をどうするかでもめたんです。
結局妥協して、「双方が関心を持っていること」として、当然日本は拉致の関心を持っているんだから出しますよということになったんですが、北朝鮮は、「拉致を議題にするなんて言った覚えはない」というような声明を出したり、記者会見して日本に対して牽制してきました。
しかし一応、ウランバートルで行われた局長級の協議では、日本側が拉致を出したわけです。全く無視、拉致が議題に入らないということと比べると、北朝鮮は一応聞いた、正式に議題にしたかどうかというところで、2.5くらいまで降りてきた。
「お互いの立場の違いは分かった。継続的に協議しましょう」と言ったわけですから、2.8くらいまで。それでも4年前の水準までは来ていないんです。4年前は最初から、拉致を議題にしましょうと言ってきたんです。起きたことはそういうことです。
なぜこういうことを今回やってきたのかということですが、今回は金正日政権ではなく、金正恩政権が日本に初めて接近してきたわけです。様々な漏れ伝わってくる情報を総合しますと、金正恩政権は日本から大規模な支援をもらいたいとかなり切実に考えている。
大規模な支援の中身は、彼らは100億ドルと言っているようです。100億ドルというのは、彼らの中では常識で、小泉さんが2002年に行った時に約束した金額が100億ドルだと。それは2002年に平壌の中枢にいた5人くらいの人たちがみんな言っています。聞いている、と。
先ほど名前が出た飯島さんは、「そんなことしない」と言って、櫻井よしこさんが『週刊新潮』にそのことを書いたら、抗議してきたのですが、私はこの人と、この人に聞いたと言えるんですが、その100億ドルを考えています。
◆金正恩も側近も戦々恐々
今金正恩政権は表面的には安定しているように見えますが、しかし本人も、側近たちも戦々恐々としている。2つの理由があって、1つは、今大規模な粛清をやっています。軍人の幹部をかなり代えています。4割代えたとか6割代えたという話がありますが、軍団長が9人いて6人が代わっています。その下の人たち
もどんどん代えています。
代えたことによって軍の中が不安定になっていて、金正恩は自分の警護に大変気をつかっている。装甲車まで出して自分の警護をしているという情報が最近出てきました。幹部たちも、いつ自分が粛清されるか分からない。だから情報を売ったりしてお金を稼ごうとしているんですが、そういう点でも不安定です。
そしてもう1つ不安定なのは、金敬姫という金正日の妹が今病気です。これは今回ソウルで聞いて来たんですが、長くともあと2年ではないかというのが、西側の情報機関の見方なんだそうです。何年ということが言えるということは、多分癌なのかと思います。モスクワの病院等で治療を受けているので、そういう資
料があるのかもしれません。
張成沢が力を持っていると言われますが、それはあくまでも金敬姫という金一族と結婚しているからです。金一族と結婚しているその奥さんが亡くなった時に力のバランスが崩れるだろうと言われています。
さらに経済の問題があります。今年日照りで雨が降らなくて、その後大雨が降ったりして例年になく不作のようです。10月、11月の闇市のコメ、トウモロコシの食糧の値段が昨年に比べて2倍になっています。
秋はそれでも物はあるんですが、春、特に4月、5月のじゃが芋の収穫までが一番大変だそうです。この春、また大量の餓死がでるかもしれないと内部で言われています。
そういう中で、1月に金正恩の誕生日があります。2月に金正日の誕生日があります。4月に金日成の誕生日があります。その時何か配らないといけない。人民の支持を得るためには、その時くらいは配らないといけないのです。そういう中で韓国の大統領選挙では、無条件で援助する人が勝てなかった。
そういうことを背景にして、先ほど言った4年前の水準を3とすると2.5くらいまでしか来てないと言いましたが、一方で平壌から流れてくる話によると、4年前に一部準備したといわれる何人かの人たちを返すために訓練しているという情報が、また出てきています。
そうなると4のレベルですね。議題にして、委員会の立上げだけで黙っているんじゃなくて、実際に何人か返すわけですから。準備の段階では4まで来ています。
◆すべての人を取り戻す
しかし我々が求めるのは5で、「死亡」と言われた8人を含む全員を返すという決断を彼らにさせなければならない。
そこで考えなければならないことですが、なぜ彼らがその8人にこだわっているのか。秘密をたくさん知っているからなんです。それは今回の国際セミナーできてくれた李さんが言っていましたが、作戦部の幹部から聞いた話として、「めぐみさんは返せない」と。「なぜならたくさんのことを知りすぎている」と。
同じことを金賢姫さんも、「私が会ったことがあるめぐみさんと田口八重子さんは、帰ってくるとしても一番最後になるのではないでしょうか」、と東京に来て言っていましたが、それは秘密をどれだけ知っているかの度合いです。
田口さんやめぐみさんは工作員を教えていたんです。金賢姫と金淑姫を教えたことは分かっていますが、それ以外にも教えていたわけです。その人たちは日本人になりすます教育を受けていたんです。
なりすました工作員が、パスポートを偽造したり、身分を盗んで日本に入っている可能性はゼロじゃありません。原敕晁さんがなぜ拉致されたか分かったのか。日本の警察が調べて分かったんじゃないんですね。辛光洙(シン・ガンス)が韓国で捕まったから分かったんです。
じゃあ、完全になりすましに成功している人は辛光洙一人なのか。分かっているのは氷山の一角だと思った方が合理的だと思います。そして辛光洙が韓国に行ったように、日本人になって、日本のパスポートを持って韓国に入っている可能性がある。
実際ソウルでマレーシア料理店をやっていた、マレーシアパスポートを持った北朝鮮の工作員が一人、潜水艦に乗って帰る時に、それが沈没させられて揚げてみたらその人の死体が入っていた。マレーシア人としての外国人登録証が出てきた、ということがありました。でも実際はマレーシア人ではなくて、北朝鮮人だったのです。
日本人になりすました人が、ソウルで日本料理店をやっている。それがめぐみさんの教え子だったり、八重子さんの教え子だったりすると、その人がソウルにいる間はなかなか返せないと思います。
2002年に、作戦部がめぐみさんたちを返すのに断固反対した理由は秘密がばれてしまうからです。具体的には、自分たちの仲間がスパイとして派遣されているのに、それが捕まってしまうということは絶対避けようとすると思います。
そして今回金賢姫に直接聞いたんですが、金賢姫さんの本によると、田口八重子さんは、「金正日の誕生日に行われた秘密パーティに出ました」と金賢姫に話した。「そのパーティでは有名な女性の歌手も出た。淫乱なことも行われていた。日本人の夫婦もいた」ということを、田口さんは酔っ払って、金賢姫に1回話して、「このことは絶対秘密だから忘れてくれ」と言ったということです。
「その夫婦が誰なのか聞いてないですか」と私が金賢姫に聞いたんですが、「1回酔っ払って聞いただけで、そのことは言っちゃいけないことになっていたのでこれ以上聞いてません」と言いました。金正日の私生活を知っているということも、絶対公開できない秘密を知っていることです。
政治犯収容所に入れられてる人たちの中で、金正日の私生活を知っているということだけで入れられてる人たちが何人かいます。それくらい徹底的に秘密にしているわけです。
金正日は寿司も好きだし、日本製品が大好きだけど反日です。そして人民のために朝早くから質素な生活をして一生懸命働いているという嘘を人民に信じさせて、秘密でぜいたくな暮らしをしているんです。そしてそのことを知っている人間は収容所に送るということをやってきたわけです。
こういう秘密を知っている8人について、なかなか返せない。われわれはそこまでどうやって決断させるのか。5の段階まで決断をすれば、私は特定失踪者問題については若干、楽観的です。一番難しい人を出すという決断をした場合には、それが全体で50人とか100人になっても、それ以外の人を残す合理的理由はあまりないと思います。
もちろん分かりません。特定失踪者と言われる人たちの中に、もっとすごい秘密を知っている人がいれば別のことだと思いますが、彼らが出してきたものを我々が検証することを続けなければならないと思います。
先ほど言った5までもっていくために、向こうは5を隠しているわけですから、秘密という問題について少し楽観的な状況が出てきたと思います。金正日が死んだということです。金正日の私生活は、金正日時代は絶対の秘密だったわけです。しかしもう、死んだ人の私生活になったわけです。
◆金正日の私生活を知っていても、既に故人
そして金正恩のスタイルは、私生活を公開するというスタイルです。彼は分かってないんです。歌手出身の美人の奥さんを、ブランドもののきれいな洋服を着せて公開して、モランボン楽団とかいう楽団を作って、ミニスカートでエレキギターを弾かせて、ディズニーのぬいぐるみを躍らせてということをやりましたよね。あれは北朝鮮のテレビに出たわけです。
金正日も自分の楽団をたくさん持っていたんですけど、絶対出さなかったです。金正日は日本の寿司が好きで、ずっと(日本人の寿司職人を)側に置いていたんですが、そのことは絶対秘密だったのです。ところが金正恩は、その秘密の寿司職人を、週刊誌に写真を売るにもかかわらず、自分で呼んで、一緒の写真を撮らせて日本の週刊誌に出したんです。スタイルは完全に別です。
金正恩が今何をやっているかというと、人民が飢えているのに、全国に遊園地を作れと言って、病気の金敬姫と一緒に、ジェットコースターに乗っている写真を新聞に載せました。
独裁者というのは、やりたいことをやっていいんだということを多分父親から学んだんです。側にいて。しかしもう一方で、人民には私生活を見せてはいけないということを学んでないんです。
そうなると、私生活を知っているということは、絶対に出すことができない秘密かというと、相対的に低くなります。父親の私生活だし、自分も日本から寿司屋さんを呼んだりしているわけですから。日本人と一緒にパーティで何かしているということを公開しているわけですから。
もう一つ。工作員についても、めぐみさんたちが教えたのは80年代です。その時20代だったとすると、20数年から30年経っているわけで、40代から50代になっています。そろそろ現役から引退して幹部になってもいい歳です。そういう人たちを引き揚げたということになれば、ということになります。
金賢姫もこの間のセミナーで言っていましたが、「私も実は中国人に化けて日本に入るということだった」と。日本に入ってどういう使命が与えられるんですかと聞いたら、「はっきり聞いてなかったけど、自分の推測だけど、日本に入っている固定スパイがちゃんと活動しないので、その人たちを監視する役割を与えられると思った」と言ってました。
つまり日本に、北朝鮮の固定スパイがいて、その監視役のために、めぐみさんや八重子さんに教わった工作員が日本に入ってきているということです。金賢姫が来なければ、別の人が来ているということです。そういう人たちがそろそろ帰る歳になっていれば、ということです。
私は最近意図的にこういうことを言おうと思っているんですが、秘密というのは暴露されてしまったら秘密じゃなくなるんです。分かっていますよ、と。無理して隠す努力をするのは、まだ向こうが「分かってない」と思っているからです。日本の警察は、誰が工作員か知っていますよということです。向こうが疑心暗鬼になるでしょう。そういう人たちは帰した方がいいですよ、と。
対話と圧力で、圧力をかけて彼らを対話に追い込むというのが前の安倍政権が作った方針ですが、その圧力の中には、制裁もありますが、もう一つ秘密を暴露するということがあります。それをして、もう隠しても隠し切れないなら帰してしまって、30年前の話だから帰してしまって今の利益を得た方がいい、5のところまで行かせることができる可能性が高まることになります。
◆厳格な「行動対行動」原則を守るべき
北朝鮮は今、2.5くらいですが、最初にやってくるのは「調査委員会の立上げ」だと思います。「調査委員会の立上げ」に対して制裁解除をやってしまったら、アメリカのライス、ヒルが陥った詐欺にあうと思います。彼らの手段はそうですから。厳格な「行動対行動」原則を守るべきだと思います。
安倍さんは就任前に、いつでも協議をするというのは前提ですが、「調査委員会の立上げ」では制裁解除しない、と言っています。正しい政策だと思います。話し合いはいつでもする。しかし、なんらかの物を彼らにあげるには、「行動対行動」で、調査委員会を立上げましたではだめだ。調査をした結果、めぐみさん
ここに生きていましたとか、田口さんがいましたとか。そして何人か帰ってくるということです。
但し、「調査委員会の立上げ」で何人か帰ってくる4の段階になったとしても、まだ気をつけなければならないと思います。我々は4年前、それも想定していたんですが、「8人」じゃない人が何人か帰ってきたら、その調査委員会は大変有効なものということになりますね。
北朝鮮はその調査委員会を稼動し続けますと言います。拉致問題が進展した。だから国交正常化交渉をしましょうと言って、その後何も出てこない。「8人」については調べても分かりませんという。あるいは「死亡」と言い続ける。
しかし、何人か帰ってきたし、調査委員会が動いているんだから朝鮮も誠意を見せたと言って、制裁は解除され、国交正常化が進むということになると、事実上の棚上げになってしまうかもしれない。その辺は大変難しいと思います。
しかし、帰ってきたということはいいことですから、それを拒否することはできないですし、動いたとしても彼らはいつでもだまそうとしますから、難しい。今こちら側は、安倍さんが総理になり、古屋さんが担当大臣になるという体制ができたので、だまされないように一番のベテランがなったという点では、危ない時期ですが、こちら側の体制も整ったと思います。
私の読みでは、4月、5月、6月くらいに何かあるのではないかと、今の感触では思っています。そしてこの1回が勝負です。向こうも困ってきている。ですから、1ではなくなったわけです。全く無視はしなくなった。2と3の間に来た。それが「調査委員会の立上げ」という福田政権のところまで来るかもしれない。
そこからが勝負です。むちろんそこまで持っていくのも大変なことですが、しかしそういう動きが出てきたということで、その後だまされないようにどうするのかということを、政府の動きを監視しながら、また応援しながら、我々としてできる限りのことをやりたい。
そのためにも、一番必要なのは、全員帰ってこない限り解決ではないという国民の世論です。そして我々にとって一番いいのは、横田さんたちが前代表で、飯塚さんが現代表で、「死亡」と言われた人たちが帰ってこない限り、世論は一段落なんか絶対しないわけです。
そういう体制で来年も世論を盛り上げて、拉致問題について日本人は絶対あきらめてないと、それも全員取戻すということだと。松原さんが言ったみたいに、被害者と家族が面会できるということでなければだめということを言い続けて、彼らのレベルをどうやって上げさせていくのか。これではだめなんだとあきらめ
させていくしかないと思うんですが、そういう戦いを続けていきたいと思っています。以上です(拍手)。
(以上)
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■安倍首相にメール・葉書を
首相官邸のホームページに「ご意見募集」があります。
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葉書は、〒100-8968 千代田区永田町2-3-1 内閣総理大臣 安倍晋三殿
■救う会全国協議会ニュース
発行:北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会(救う会)
TEL 03-3946-5780 FAX 03-3946-5784 http://www.sukuukai.jp
担当:平田隆太郎(事務局長 info@sukuukai.jp)
〒112-0013 東京都文京区音羽1-17-11-905
カンパ振込先:郵便振替口座 00100-4-14701 救う会
みずほ銀行池袋支店(普)5620780 救う会事務局長平田隆太郎
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