親が寄り添い育てる環境を。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【解答乱麻】参院議員・山谷えり子





今年は癸巳(みずのとみ)、物事が新たに出発する年、原理原則のもとに協力して進めていく年巡りといわれている。

 「解答乱麻」のこのコラムで昨年末にジャーナリストの細川珠生さんがゼロ歳児には「親が寄り添って育てることができる環境の整備」という自民党選挙公約の子育て支援に共感の文章を記してくださったが、これは大いに議論し、たとえ選挙中にマスコミにたたかれても仕方がないとの覚悟で記したものであった。

 というのも少子化対策といえば“待機児童解消”がもっぱら報道され、愛着形成が必要な乳児期の家庭の役割についてはあまり取り上げられない。従って、保育所整備だけを訴えるほうが“政治的リスク”はないとほとんどの政党が考えているからである。

 昨夏の参議院の「社会保障と税の一体改革に関する特別委員会」公聴会では、日本ではゼロ歳児保育、長時間保育のマイナスの研究が十分なされていないことにより、経済協力開発機構(OECD)加盟国34カ国中、問題意識のないまま最も長時間保育がなされる国となっていることが指摘された。オランダやデンマークでは保育所開所は夕方4時か5時頃までで、ゼロ歳児保育を国策として推進する国は先進国には見当たらない。日本が行っている10時間保育も当たり前、とは大違いである。

 また、保育費も国と地方と保護者負担を合わせると約2兆円となっている。特にゼロ歳児の保育料は、公費と保護者負担を合わせると1カ月につき平均30万円ほどで、母親の月給をはるかに超える。そしてこれだけの金額をかけて赤ちゃんは幸せかといえば決してそうではないことを考えれば、専門家は保育の量と質の適正化を指摘すべきであろう。

育児の社会化が過ぎれば、赤ちゃんは愛着の形成ができないままに世に出されていくことになる。父性・母性の豊かな開花も置き去りにされる。

 乳幼児を見つめることは神仏の光を見つめることでもある。空や風や草花を驚きをもって乳幼児がまじまじと見つめる姿を見ながら大人もまるで初めてその美しさに気づくような気持ちにさせられることがある。

 平成22年の「育児・介護休業法」改正では、3歳までの子を養育する親が1日6時間勤務や残業免除を求めた場合は企業側は応じなければならない義務を課した。この法改正が隅々に行き渡るように国は予算支援を広げていくべきだろう。

 また、祖父母力も復活させたい。3世代同居、近居の優遇策の議論はもっとあっていい。

 私は少女時代、鬱屈を抱えたときは、乳幼児期に同居していた祖父母の家によく遊びに行った。ままならぬ出来事の説明をすると、いかにも面白そうに聞いて、「20代前をさかのぼれば100万人のご先祖さまの味方がいる」「禍福はあざなえる縄のごとし」「脱皮しないヘビは滅びる」などと笑い飛ばしてくれるのだった。時代が変わっても、人が人らしく育つうえで愛情は欠かせない。

 あづかれる宝にも似てあるときは吾子ながらかひな畏れつつ抱く

 皇后さまの昭和35年の御歌であるが、子育て中にこの御歌にどれほど励まされたことだろう。今も街で母子の姿を目にすると、この御歌をつぶやき、祝福をそっと送っている。

 すべての子供の成長を祈ることは年配者に与えられた恵みである。

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【プロフィル】山谷えり子

 やまたに・えりこ サンケイリビング新聞編集長、首相補佐官(教育再生担当)など歴任。1男2女の母。