日銀はマイナス金利に転換を。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 









【日曜経済講座】編集委員・田村秀男 

「インフレ目標」だけでは不十分。





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日銀はマイナス金利に転換を


 銀行にカネを預けると金利がつくし、借金すると金利を払うことが当たり前になっている。ここで言う金利とは、プラスの数値である。ならば貸し手が金利を払い、借り手が金利をもらえるマイナスの金利があってもよい。

 よく引き合いに出されるのはドイツなど欧州の一部の信用力の高い国債の金利がマイナスで市場取引されるケースである。ギリシャ、スペインなどユーロ圏で政府債務危機にあえぐ国の国債を持つよりは、金利を払ってでも優等国の国債を買って様子をみる投資家がいるのだ。この場合、実体の経済活動には影響をほとんど及ぼさない。


貸し出し需要増の効果


 銀行の中の銀行である中央銀行がマイナス金利政策に踏み切ったらどうだろうか。市中銀行が余った資金を預ける中央銀行の当座預金の金利をマイナスにする政策をとればよい。すると、銀行間で資金を貸し借りする短期金融市場金利がマイナスに誘導される。銀行の資金調達コストがゼロ以下に下がるので、貸出金利に反映するはずだ。

 ただし、中央銀行がよほど大きくマイナス金利にしないと、貸出金利はマイナスにまでは下がらない。残念ながら住宅ローンなど消費者向けや中小・零細企業向け貸出金利をゼロ以下にするのは困難だ。それでも、中央銀行がマイナス金利政策をとれば貸出金利低下により、貸し出し需要が大きく増える効果が見込める。

このことにいち早く気付いた政治家が安倍晋三新首相である。安倍氏は昨年11月15日、都内の講演で日銀の政策金利について「ゼロにするか、マイナス金利にするぐらいのことをして、貸し出し圧力を強めてもらわなくてはいけない」と述べた。まさに正論である。

 今の日本のようにデフレ不況下では、現金や金融資産のモノに対する価値が上がる。そこで金融機関は安全な国債を買い、残る資金を日銀の当座預金に寝かせる。わずかでも焦げ付きリスクのある借り手に背を向けて、貸し出しを増やさない。

 日銀は表向きこそ、脱デフレのために包括的な「金融緩和」のアクセルを踏んでいると言うが、同時にブレーキをかけている。何しろ、日銀は0・1%のプラス金利を当座預金に付与しているのだ。利回りが0・1%以下に下がった金融資産を日銀に売って、そのまま代金を日銀当座預金口座に預けておけば、銀行員が昼寝していても金利を稼げる。ドブ板を踏んで貸し出し先を探すはずがない。

 安倍提案の5日後、日銀の白川方明総裁は記者会見で「一般論として」と断りながら反論した。マイナス金利による「副作用」について4点ほど挙げたが、中でも「金融機関がマイナス金利のコストを貸出金利に上乗せすることになり、結果的に企業が直面する金融環境が引き締まるという指摘もなされています」と言う。つまり、貸出金利は逆に上がるか、それとも貸し出しを渋るようになる、というのである。プラス0・1%の当座預金の現行政策を死守しようとする意図はありありだが、白川氏は金融機関をそこまで甘やかせ、中小企業などの苦境を放置して平気なのだろうか。

日本では日銀が無視するせいかほとんど注目されないが、欧州では「テストケース」として金融界で広く注目されているのが、デンマーク中央銀行が昨年7月に踏み切った「マイナス金利」政策である。


デンマークで機能発揮


 同中銀は金融機関から預かる預金商品をマイナスにし、銀行間の短期金利(翌日物)をマイナスに誘導している。同時に資金供給量を大幅に増やす量的緩和政策にも踏み切った。銀行の企業向け貸出金利は下がり、全体の貸し出しも拡大軌道に乗った。「デンマークは小国で参考にならない」とけなす向きもあるかもしれないが、先進的な金融市場制度を持つデンマークでは正常な市場機能が発揮されていると読み取れる。

 安倍首相と白川総裁はこのところ、「2%のインフレ目標」設定で妥協しつつあるように見える。半面で、安倍氏は「マイナス金利」発言を控えているようだ。だが、インフレ目標をかたくなに拒否し続けてきた白川氏を譲歩させるだけで、首相は矛を収めるべきではない。

 安倍政権の大目標は脱デフレ・超円高是正なのだが、民間の生産と投資を活性化しないと実現しない。それにはまず、日銀の当座預金に張り付いたまま動かない金融機関の余剰資金を中小企業など一般向けに流すよう、日銀政策を転換させる必要がある。日銀の小手先の対応にごまかされてはならない。




現在の値動き更新 01月06日 10:30

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