日本の外交・安全保障体制の強化に向けて、安倍晋三首相が日本版国家安全保障会議(NSC)の早期設置に意欲を表明した。
NSC構想は、米国の例を参考に政治主導で外交・安全保障分野の首相官邸の司令塔機能を再編強化するための機構改革だ。第1次安倍内閣時の平成19年に安全保障会議設置法改正案(設置法案)が国会に提出された後、廃案となっていた。
中国の攻勢や北朝鮮の脅威が強まる中で、新たに国家戦略を構築する必要性は一層高まっている。安倍氏の意欲を歓迎し、速やかな設置と実働開始を求めたい。
安倍氏は26日の会見で「総合力としての外交を戦略的に展開する。日本の安全保障は今そこにある危機だ」と強調した。菅義偉官房長官に国家安全保障強化を担当させ、NSC担当に礒崎陽輔首相補佐官を充てるなど、外交・安全保障重視を明確にした。
また、内閣官房参与に谷内正太郎元外務事務次官、外交担当の官房副長官補に兼原信克・外務省国際法局長を起用したのも、NSC設置へ向けた布陣といえる。
当初の設置法案によると、NSCは首相を議長とし、官房長官、外相、防衛相、国家安全保障担当補佐官が出席する。緊急事態や防衛計画大綱などの審議には総務、財務、経済産業各相や国家公安委員長らも加わるという。
米国のNSC設置は1947年と歴史が長い。国務、国防総省、軍、情報機関などの縦割りに陥りやすい政策決定過程を統合し、大統領府を司令塔に機動的な決断を下すためだ。英国でも日本と同じ時期に設置構想が生まれ、一足先に2010年に発足した。
日本が出遅れたのは、安倍氏の後を継いだ福田康夫政権が設置法案を撤回したためだ。参院のねじれなどで成立が困難とされた事情もあるが、政府自ら撤回したことには疑問が残る。
ただ、会議の設置だけでは機能をフルに発揮できない。優秀な人材、省庁間の情報共有、閣僚間の連携に加え、日本に情報機関がないことも早急に是正が必要だ。
NSC型の即断が求められるのは、とりわけ東日本大震災型の大災害や大規模テロ、外国の侵略などの緊急事態だ。米英の経験から学べることも多い。課題を克服して、真に効果を発揮できる組織に育ててもらいたい。