【日本の解き方】不動産バブル崩壊で日本企業叩きも。
8日から北京で始まった中国共産党の第18回党大会で、胡錦濤体制から習近平体制による新最高指導部が始動する。
現在の中国共産党内には2つの大きな派閥がある。共青団派と太子党で、それらの政治思想は若干異なっている。
共青団派のトップは胡錦濤氏で、共産主義青年団の出身者を中心に構成されている。政策的には格差是正で大衆主義だ。
一方、太子党のトップは習近平氏で、中国共産党のエリートたちの子息が中心。政策的には格差容認で既得権を守る。こうした背景があっての政権交代なので、大会前に権力闘争が激化するのも納得がいく。
胡錦濤体制での温家宝首相の一族の秘密資産暴露報道はその権力闘争の結果であろう。最近の尖閣列島をめぐる反日デモも、習近平側が生ぬるい胡錦濤側を攻撃しているという見方すらある。
日本との関係では、当分の間、体制が安定するまでは厳しく当たってくるだろう。中国に進出している日系企業は安心できない状態が続くだろう。なにしろ反日デモも誘導できるほどの習近平体制なのだ。
それに、胡錦濤体制を批判するために、過去対中進出した企業が行ってきたことをほじくり返す恐れがある。例えば、対中進出後に日系企業が受けた許認可や課税上の扱いが「優遇」とされ、遡及(そきゅう)的に懲罰を受ける可能性もある。
習近平氏は太子党のトップであるが、沿海部の福建省や浙江省の党要職を務め頭角を現してきた。その地域は国内大手輸出企業が集まり人民元は安くしておくことが既得権を守ることになる。
このため、為替コントロールをしておかないと、国内基盤が揺らぐ恐れがあり、人民元の変動相場制への移行はできるだけ遅らせたいだろう。
その一方、為替管理を強化すれば、国内に過剰流動性が供給され、国内の金融政策が効かずに、インフレ傾向になる。前の胡錦濤体制では、インフレが格差を生むので、その抑制にも目配りがあって金融政策の自由度はそれなりに確保されていた。その結果、人民元レートは一定の弾力化が行われ、資産バブルもそれなりに管理されバブル崩壊も一歩手前で回避されてきた。
ところが、9月28日の本コラムで指摘したように、胡錦濤体制が末期を迎えた今、2年以内で不動産市場が崩壊の危機にある。これは、胡錦濤体制から習近平体制への「負の遺産=時限爆弾」である。習近平体制になって、人民元を固定化させようと思えば思うほど、この時限爆弾が破裂する可能性は高まる。
一方、さらに人民元を弾力化して、金融政策の自由度を高めようとすれば、今度は、習近平体制の既得権層に打撃を与えて、政権基盤が弱くなる。
こうした中で、日本の政局で安倍自民や石原新党という保守勢力の台頭があると、中国国内で強い立場を演じるために反日デモや無謀な尖閣諸島への挑発が頻発する可能性もある。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)