秋の園遊会の天皇、皇后両陛下と皇族方=25日午後、東京・元赤坂の赤坂御苑(矢島康弘撮影)
「サザエでございます」両陛下に逆質問。
雅子妃殿下、皇后陛下お誕生日行事にご出席。
秋の園遊会が25日、東京・元赤坂の赤坂御苑で行われ、天皇、皇后両陛下や皇族方が、ロンドン五輪の金メダリストや各界で功績を残した出席者と歓談された。アニメ「サザエさん」の声優、加藤みどりさん(72)とのユーモアあふれる会話もあり、秋の和やかなムードを演出した。
園遊会には両陛下をはじめ、皇太子さま、秋篠宮ご夫妻、寛仁親王家の長女の彬子さま、高円宮妃久子さまと次女の典子さまが姿を見せられ、招待された約1700人が食事や会話を楽しんだ。
陛下は、ロンドン五輪ボクシング男子の金メダリスト、村田諒太(りょうた)選手(26)に「東京オリンピック以来の金メダルですね」と、48年ぶりの金メダル獲得をたたえられた。
その後、記者団の取材に応じた村田選手は「本当に光栄なことで、金メダルがとれてよかったなと改めて思いました」。妻の佳子さんも「私までお声をかけていただいた。私の体の心配をしていただいて…」と笑顔を見せた。
陛下はレスリング女子の金メダリストで、五輪と世界選手権で13大会連続世界一を達成して、国民栄誉賞受賞が決まった吉田沙保里選手(30)にも「ずいぶん厳しい練習を重ねてこられたんでしょう」と声をかけられた。
吉田選手は「そうですね。私はもう3歳からレスリングを始めて…」と幼いときのエピソードを披露。「父親が指導者で、ずっと家の中に道場があるので、逃げ隠れできない状況の中で育ってきました。やめたいということもお父さんに言えず、その時はお母さんがギュッと抱きしめてくれるだけで、落ち着いたというか。また、がんばれたというか…」
緊張気味に話す吉田選手。陛下が「でも、こういう成果がね、出てね。本当に…」とねぎらわれると、吉田選手は「あきらめずにここまで走り続けてきて良かったです」と応えた。
また、柔道女子の金メダリスト、松本薫(かおり)選手(25)とも歓談された。「柔道、本当によかったですねえ、本当にね」と祝福された陛下に、松本選手は「ありがとうございます」「あの…はい、とてもいい体験をさせていただいて、はい。成長しました」と緊張気味に応えた。
思わず周囲からも笑いが漏れたのは、サザエさん役の加藤みどりさんとお話になったとき。
「サザエでございます!」
おなじみのセリフで“自己紹介”した加藤さんに、両陛下はにっこり。
加藤さんが「いつも両陛下のお体のこと、案じております。どうぞお風邪をひきませんように。お招きいただきましてありがとうございます」「だんだんと歳をとりますと、そんなにいろんな声は出なくなります」と話すと、本物のサザエさんのように「あははははは」と笑い、「あの、両陛下はアニメなどご覧になりますか」と“逆質問”をしてみせた。
陛下は「少し…うーん。ねえ…」と、はっきりとした答えはされなかったが、加藤さんは「(サザエさん放送は)まだ44年目ですけれど、これから50年、60年を目指しまして一同頑張っております」と決意表明。陛下は「ああそうですか、どうぞ体を大事にしてね。元気で」と励まされた。
皇太子さまをはじめとする皇族方も、両陛下に引き続いて、加藤さんらと歓談された。加藤さんは記者団の取材で「名札だけではわかりませんので、『サザエでございます』と申し上げました。皇太子さまが『一家で見てますよ』とおっしゃってくださって、大感激でした。秋篠宮さまも『見てますよ』とおっしゃいました」とニコリ。最後はサザエさんの声で「父さん、母さん、私、感激よ。もううちには帰りたくなーい」と大喜びの感想を披露した。
両陛下は、東日本大震災の被災地・仙台市の教育委員長、松坂宏造さんとも話をされた。陛下が「いろいろご苦労が多かったのではないかと思っています」と声をかけられると、松坂さんは「全国各地、そして世界各国からも多くの方々からご支援をいただき、子供たちも少しずつ笑顔が出てくるようになったのが…」と応えた。
松坂さんが「いままで以上にまた子供たちが笑顔になれるように、今後とも一生懸命頑張って参りたいという風に思っております」と話すと、皇后さまは「ありがとうございます。子供たちをお願いいたします」と声をかけられた。
皇后さまは20日、78歳のお誕生日を迎えられた。宮内庁は、最近のご様子について、「ご起床時にかなり強い腰痛がおありのようです」と明らかにしている。腰痛は、具体的な病名を特定するような症状ではないとみられるが、同庁は「これからはもう少しご休養の日数を取っていただくよう考えなければなりません」としている。
余談だが、24日の水曜日は当初、陛下のご検査以外は両陛下の公式日程が1件もなく、平日としては珍しい「ご休養の日」となる予定だった。だが、田中慶秋法相が辞任した影響で、認証官任命式が急きょ同日午後に設定され、休養日ではなくなってしまった。
宮内庁によると、皇后さまは朝、腰痛を感じながらも、自分で起き上がり、皇居を散策される。歩いているうちに、痛みは少しずつ軽くなられるという。
昨年夏以降には左肩から左手にかけての頸椎(けいつい)症のため、一部行事を取りやめることがあったが、同庁によると、回復した現在でも左指先に軽いしびれを感じられることがあるという。宮内庁は「長年にわたりお体を酷使されてきた影響が少しずつあちこちに現れ始めている」と推測する。
確かに、皇后さまはこの1年間も忙しい毎日を送られてきた。宮内庁によると、皇后さまとしての「お仕事」は289件。陛下とご一緒の地方訪問先は、10県16市2町2村に上った。東日本大震災の被災地なども訪問されている。
ただ、宮内庁の山本信一郎次長は22日の定例会見で公務について「現時点で直接に、減らしていくというところまでは考えてない」と述べ、単純に減らす考えのないことを示した。公務に対する両陛下のお気持ちやご姿勢を考え、日程調整や行事のあり方を工夫しながら、皇后さまのご体調に配慮していく方針のようだ。
一方で、宮内庁によると、皇后さまは忙しい中でも、自由な時間があるときは、お孫さまに料理を作ったり、ピアノを弾いたり、読書したりされているという。
20日のお誕生日当日には、皇居で行われたさまざまなお祝いの行事に臨まれた。
皇太子さまはルクセンブルクのギヨーム皇太子の結婚式参列のため同国訪問中で、行事には出席されなかったが、皇太子妃雅子さまは予定していたすべての行事に出席された。長女の敬宮愛子さまも、秋篠宮ご夫妻の次女の佳子さまと長男の悠仁さまとともに祝賀に臨まれた。
翌21日には、皇太子さまがご帰国。お住まいの東宮御所(東京都港区)の玄関では雅子さまと愛子さまが出迎えられた。
雅子さまは26日にも、皇太子さまとともにお住まいの東宮御所で、「コスモス国際賞」を受賞したハーバード大のエドワード・オズボーン・ウィルソン博士を接見された。
23日には、英国のエディンバラ大に短期留学中の秋篠宮ご夫妻の長女、眞子さまが21歳の誕生日を迎えられた。山本次長によると、眞子さまは大学近くの学生寮に入り、9月から美術や文化財関係などの講義に通われているという。
各宮家は今週もさまざまな公務を果たされた。
秋篠宮ご夫妻は22日、国営昭和記念公園(東京都昭島市、立川市)を訪れ、「第29回全国都市緑化フェアTOKYO」会場を視察された。26日には、皇居・三の丸尚蔵館で展覧会「描き継ぐ日本美-円山派の伝統と発展」を鑑賞された。
秋篠宮さまは22日、東京大学総合研究博物館(東京都文京区)で研究会に出席された。
常陸宮ご夫妻は23日、明治記念館(港区)で行われた「高松宮殿下記念世界文化賞」の第24回授賞式典にご臨席。その後の祝宴にも臨席された。
ご夫妻は24、25日には長崎県をご訪問。25日には佐世保市で行われた「第10回全国和牛能力共進会長崎県大会」開会式に臨席された。
寛仁親王家の次女、瑶子さまは25日、29歳の誕生日を迎えられた。
高円宮妃久子さまは22日から2日間の日程で高知県を訪問し、「日本スポーツマスターズ2012高知大会」を視察された。また、24日には、国立西洋美術館(東京都台東区)などで、装飾園芸「ハンギングバスケット」の知識と技術向上を目指す日本ハンギングバスケット協会「第14回全国マスター会」に臨席された。