【国防最前線 日本が危ない】
中国台頭に米国が新態勢構築!
島嶼防衛のため、陸上自衛隊と米海兵隊は共同訓練を行った=22日、グアム島 (大西史朗撮影)
最近、「日米関係は冷え切っている」と指摘されるが、別に仮面夫婦でもいいではないかと私は思う。要は「互いに務めを果たせるかどうか」が大切なのであり、好きか嫌いかなどは関係ない。
ただ、忘れてならないのは、現時点で、日本の安全保障は米国なしでは立ちいかないという現実だ。2国の力を合わせて初めて1国の防衛力を満たす。それが嫌なら、まず現行のGDP1%枠の防衛費をダイナミックに増やすことから始める必要があるだろう。その覚悟と準備をせずに、米軍なしでの防衛や自国の要望ばかりを主張するのは、身の程知らずのそしりを免れない。
かつて米国には「瓶のふた」論があり、日本の頭を押さえる(=軍事力増強を防ぐ)考え方は常に存在していた。他方、最近は近年のアジア地域の安全保障環境の変化もあり「ストロングジャパン」論も高まっている。むしろ、ある程度自立してもらわなければ困る状況になってきたのだ。
米国は年初に新国防戦略を発表した。中国による軍事的台頭を受け、いよいよ正面からそれに抗する態勢構築の方針を明らかにしたのだ。同時に、中国の弾道ミサイルDF21が沖縄を射程に入れたため、海兵隊をグアム、オーストラリア、ハワイに分散配置することも決めている。沖縄の負担軽減にも繋がる転換であるが、この実現のためにも、これらの拠点を柔軟に移動できるオスプレイ配備は欠かせない。
一方で、米国は国防費を10年間で4500億ドル(約34兆6500億円)削減するとしている。日本としては、これまで以上の役割分担の責務が生じることになるだろう。
そうした流れの中で、今、「陸上自衛隊の海兵隊化」といった話題が各所で持ち上がっている。時代の要請であろうか。しかし、注意しなくてはならないのは、この話には誤解や勘違いが多いということだ。
まず、海兵隊とは何か? これが意外に知られていない。彼らは、自らで陸・海・空、そして後方支援も一体的に運用する独立軍種であり、自前の戦闘機や海軍の空母などを用いて、究極の自己完結能力を発揮する前方展開部隊である。
一朝有事となれば、まず先に海兵隊が展開し、その後、陸軍が入る。つまり、そもそも両者は違う役割を担っているのだ。陸自がそのまま海兵隊になるなどということはあり得ない。
必要性が高まっているのは「海兵隊的な」装備を持つことである。まずこの混同を正してから議論しなくてはならない。
■桜林美佐(さくらばやし・みさ)
1970年、東京都生まれ。日本大学芸術学部卒。フリーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を制作後、ジャーナリストに。防衛・安全保障問題を取材・執筆。著書に「誰も語らなかった防衛産業」(並木書房)、「日本に自衛隊がいてよかった」(産経新聞出版)など。