日本の防衛力軽視が招いた現実を直視せよ。 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






中国、韓国、ロシアの狡猾な領有権拡張戦略


草莽崛起:皇国興廃此一戦在各員一層奮励努力。 


2012.09.19(水森 清勇:プロフィール






「日本海」を東海とすべきだというのが韓国の言い分である。同様に、「竹島」を独島と呼称し、日本が国家として機能停止状況にあった隙に、勝手に李承晩ラインを引き不法に占拠してきた。

 中国は国連機関が海底資源調査をしたときから尖閣諸島の領有権を主張しはじめ、最近では「核心的利益」と称して、領海侵犯など威嚇にも似たあの手この手の言動を繰り返している。

 ロシアは大統領や閣僚が北方領土を訪問し、返還するとしてきた歯舞群島の島々にまでロシア語名をつける調査を開始した。

韓国の「日本海」改称運動

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韓国に違法占拠されている日本海に浮かぶ竹島〔AFPBB News

 


 「日本海」は国際的に確立した名称である。しかし、韓国は1992年に国連加盟して以来、日本海に「東海」の併記を訴えてきた。

 最新では2012年4月23日からモナコで開かれていた国際水路機関(IHO)総会で、海図集の改定にあわせて「日本海」に「東海」を併記するように全力を挙げた。議論はまとまらず、次期総会(2017年)に持ち越しとなった。

 日本海は日本の西方沿岸全域に接している。韓国の東方に位置するが、接しているのはほんの一部で、大部分は北朝鮮やロシアの東南方に位置しており、「東海」が普遍的呼称たりえないことは一目瞭然である。

 むしろ韓国の西方沿岸に全面的に接する黄海こそが「西海」にふさわしいのではないだろうか。しかし、こちらの改名については一切主張しないのは、相手が中国であり、華夷秩序を払拭できない韓国の事大主義によるものだろうか。とにもかくにも「東海」は言いがかり以外の何ものでもない。

 韓国は韓国系米国人が多く在住する米国のバージニア州などで教科書に「東海」と併記することなどを求めてきた。今年1月のバージニア州議会では8対7の1票差で併記が否決されるという際どいものであった。

 従軍慰安婦問題の前例があるように、そのうちに、韓国系米国人の増加とロビー活動の活発化で、韓国の主張が大きな声となって米国議会を動かさないとも限らない。

 従軍慰安婦問題が米国の地方議会の決議に発して、最終的には合衆国下院で「従軍慰安婦問題の対日謝罪要求決議」(2007年6月26日、下院外交委員会で賛成39票対反対2票、最終的には同7月30日下院本会議にて採択)が採択されてしまった。

2010年には韓国系米国人が52%を占める東部のニュージャージー州パラセイズパーク市で、「日本の植民地時代に20万人を超える女性、少女が慰安婦として日本軍に連れ去られた。これは人権侵害だ」と綴った慰安婦碑が建立された。

 2012年にはニューヨーク州ウェストバリー市のアイゼンハワーパーク公園にも建てられた。今後もニューヨーク市などに計画され、増える見込みだという。

 パラセイズパーク市には駐ニューヨーク日本総領事や自民党国会議員団が市長を訪問して撤去を要請したが、実現していない。いったん決議された場合の撤去はなかなか難しい。

 地方参政権付与問題が繰り返し提議されるが、日本には朝鮮系や中国系住民がかなり所在する地域もある。

 そうした人たちが地方議会とはいえ議席を得て政治力を行使できるようになれば、米国どころか日本においてさえ「東海」や「慰安婦像」は言うに及ばず、「竹島」はもちろん、「対馬」の領有権さえ主張しかねない。杞憂が現実となる前に、能動的に日本が動くことが求められている。

「辺疆」意識の強い中国

 五星紅旗と呼ばれる中国の国旗は、大きな星が漢民族本土を示し、小さな4つの星が併呑した満州、モンゴル、ウイグル、チベットを示しているとも言われる。

 本来の国境は言うまでもなく漢民族が住む領域であろうが、その縁辺の国々を力でねじ伏せ、自国に組み込むのが古来の中国流国境である。

 こうした観点から、中国には固定的な国境よりも、力で屈服させいくらでも拡大できる「辺疆(へんきょう)」意識が強いと言われる。領有をめぐって周辺諸国と係争している南シナ海の南沙、中沙、西沙は新しく設けた「三沙市」に組み込み自国領を主張している。

 東シナ海の尖閣諸島もこの延長線上にある。中国外務省から流出したとされる資料では沖縄県は言うに及ばず愛知以西の西日本全体が「東海省」、東日本は「日本自治区」、日本海は「東北海」とされている。

 何かと言えば事大主義を取る朝鮮半島は文句なしの「朝鮮省」で、その前に黄海で韓国と争っている蘇岩礁(韓国名離於島〈イオド〉)を辺疆に組み込む動きが活発化しよう。

かつて中国が帝国主義の西洋列強によって虫食い状態にされた時、敢然と立ち上がったのが日本であった。米国は「門戸開放」を掲げて、いかにも西欧列強から中国を守るかのように振る舞ったが、それは米国の付け入る隙を見つける含意でもあった。

 近隣国家であるために大きな影響を受ける日本は、自国の存亡のためとはいえ中国の国家崩壊を危惧し、保全を熱望した。

 黄文雄の『大東亜戦争肯定論 』は、「日本が日露戦争に勝利したことで、ロシアの南下、つまり清国への侵略が阻止されたのである。もし日本が負けていたら、日本というアジアの抵抗勢力がいなくなった以上、まず満洲、朝鮮はロシアの計画通りにその版図に組み入れられた。そして清国でも、ロシアの南下はものすごい勢いで行われ、西欧列強による国土分割に拍車がかけられたことだろう」と述べている。

 その中国が、17年前には「30年もすれば日本という国は存在しない」と豪語し、数年前には太平洋覇権の米中二分を提案した。今は核恫喝もちらつかせながら「核心的利益」を掲げて、宣伝と威嚇と捏造の歴史で、1世紀遅れの現代版中国流帝国主義を再現している。

 日露戦争の勝利が有色人種に勇気を与えたように、尖閣諸島の国有化とその死守はチベットや東南アジア諸国に勇気を与えるに違いない。

 日本にとっては乾坤一擲の真剣勝負であり、中国が繰り出すであろう硬軟両様の戦術、俗に三戦と言われる「世論戦」「心理戦」「法律戦」に翻弄されることなく、国益の一点を見据えて柔軟かつ主導的に対処しなければならない。

アイヌ語が示す日本の領土

 幕末の馬関戦争に勝利した英国は、中国における「香港」と同じように山口県下関市の「彦島」を租借地にしようとした。

 藩主は「租借やむなし」という考えに傾いていたと言われるが、上海で外国に占拠された国の惨めな状況を見てきた高杉晋作が突っぱねて事なきを得たという話が伝わっている。

 江戸湾には米国人が名付けた岬や島が幾つもあった。

 日本を訪れた英国の旅行家は「私たちの船はリセプション湾(久里浜湾)、ペリー島(猿島)、ウェブスター島(夏島、埋め立てで現横須賀市夏島町)、サラトガ島(富津崎)、ミシシッピー湾(根岸湾)を通過した。トリーティ・ポイント(本牧岬)から・・・」(イザベラ・バード著『日本奥地紀行 』)と書いている。

 米国の属国になっていたら今でもこうした名称であったに違いない。

同書を解説した宮本常一の『イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読む 』には、小笠原諸島帰属の経緯にも触れている。

 小笠原貞頼が発見するまでは無人島(ぶにんとう)と呼ばれており、ペリーは航海日誌にブニンの訛った「ボナンisland」と書き、日本人が呼んでいた名前を踏襲した。

 これが効果を発揮して、明治になって、小笠原は日本の領土であると主張した時、米国も認めざるを得なかった。クナシリ、エトロフはアイヌ人がつけた島名で、領有権がいずれにあるかは言うまでもないとも記している。

 北海道勤務時代にアイヌ語名称に関心を持った。

 帯広はオベレベレケプ(川尻が分かれる川)で、その名を冠したオベリベリ温泉がある。ニペソツ山(シナノキ群生の意、アイヌは衣服の繊維に活用)や十勝川(トカプチ)など、道内の地名や山川など、ことごとくアイヌ語由来である。

 同様に、国後島は「クンネ・シリ」(黒い島)、択捉島は「エトウ・オロ・プ」(岬のある所)に由来するもので、ロシア語名も「クナシル」「イトウルップ」とアイヌ語表記を踏襲している。

 しかし、ロシアは日本領土であることが明瞭で、返還するとして足を踏み込んでいなかった歯舞群島を調査し、呼称のない島々にロシア語名をつける動きを示している(『産経新聞』24.9.9)。歯舞、色丹までも返還しないぞという意思表示でもあろうか。

 ここまでくれば、友好や協力などとは別次元の長期的国益に関わる問題として、ロシア(旧ソ連)による不法占領の経緯を国際社会に向かって執拗に知らせるよりほかにない。日本に足りないのは宣伝力と執拗さではないだろうか。

条約の適用範囲と領有権

 排他的経済水域(EEZ)の起点となる離島は、全国に99島ある。このうち49島には名称がなかったが、10島は2011年5月に命名された。残る39島の名称は所属地方自治体の要望を参考に、2012年3月2日に名称が公表された。

 尖閣諸島関係では久場島付近の3島と大正島1島が関係していた。命名された島は、地図や海図に逐次掲載される。中国政府は翌3日、尖閣諸島周辺を含む71島(細部不明)に命名する対抗措置に出た。

 米国務省報道官による8月28日の定例記者会見 で中国人記者との間で、以下のような質疑応答が交わされたという。

 記者が「米国における尖閣諸島の公式名称は何ですか。『釣魚島』ですか、『尖閣諸島』ですか』と質問すると、ヌランド報道官は「われわれは『SENKAKUS』と呼んでいます」と答えた。

 中国が「釣魚島」と呼び領有権を主張する尖閣諸島について、米政府は公式呼称として「SENKAKUS」(「センカク」で、英語では諸島を意味する複数形)を採用していることを明らかにしたわけである。

その状況をインターネットでさらに詳しく見ると、「そうです。何度も言うように、1960年に締結された日米安保条約の適用範囲です」と述べる報道官に対し、記者は「それは矛盾ではないですか。私にはそう思えます」と食い下がったという。

 報道官は「尖閣諸島は1972年に沖縄に返還されてから、日本政府の管理下にあります」と述べると、記者は「では別の聞き方をしましょう。その島は『日本の領土』ですか」と質問した。

 これに対し、報道官は「もう一度言います。特定の立場を取らないが、安保条約は適用されます」と答え、次の話題に転じている。

 「特定の立場は取らない」ということは、尖閣諸島の領有権を中国も主張しているので、領有権自体については明言しないという意味に解される。

 具体的に言えば、日本の領土であり、所有者が個人から国に代わったわけで、「尖閣=国家」の認識をもって、外交第一を意識しつつも、軍事力もしっかり整備して、いかなる犠牲を払っても保持する姿勢(具体的には「意志」と「能力」)を顕示しなければ、日米同盟さえ機能しないということである。

あとがき

 自分を捨ててでも相手の窮状を慮るという日本人の心優しい民族性が、亡国の危機にあった中国や朝鮮を救ってきた。

 例えば近代化を目指す両国への政府開発援助(ODA)など多額の有償・無償の供与などである。こうした支援にもかかわらず、両国は従軍慰安婦や南京大虐殺などと称する欺瞞の歴史を世界に発信し続け、日本を貶めてきた。

 これまでの日本は離島をはじめ国土の安全保障に対する確固とした戦略も展望も持っていなかった。相手を刺激するなどとして、最小限のバランスに必要な防衛力の整備さえ怠ってきた。

 戦力バランスの空白が、対日攻勢を一気に噴き出させた感さえある。今後は(極力使用しないとしても)軍事力をバックにした国益重視の外交への転換が強く求められている。