【from Editor】
まるで嵐に巻き込まれたような17日間だった。過去最多38個のメダルを獲得したロンドン五輪。現地で取材活動に当たった記者だけでなく、日本に残った運動部員も号外やネット速報も含め、24時間態勢で対応に当たった。そんな熱にうかされたような日々が終わって1カ月。喉もと過ぎれば何とかで、徐々に平穏さを取り戻しつつある。それでも、忘れてはいけない問題もある。
サッカー男子3位決定戦で日本に勝利した韓国選手が韓国語で「独島(竹島)はわれわれの領土」とのメッセージボードを掲げた問題だ。政治的な宣伝活動による五輪憲章違反。国際サッカー連盟(FIFA)は規律委員会で処分を検討しているが、10月に聴聞会を開き、処分を決めるという。どんな処分が下されるのか、注意深く見守っていきたい。
残念ながら、韓国側からはいまだに“反省”の声は聞こえてこない。「政治的意図のない偶発的な行為」として同情的ですらある。おとがめなしどころか、現に、この選手はフル代表にまで選出された。韓国サッカー協会が日本サッカー協会に謝罪文を送ったかと思えば、あれは謝罪ではない、と言い繕う始末である。
まあ、韓国のことはしようがない。肝心の日本協会も公式にこの件に関して、遺憾と言う以外、批判するメッセージを発していない。それどころか、韓国協会に「両協会は友好関係を築いており、これからも関係を発展させていきたい」とする書面まで送った。さらに日本で開催されていたU-20(20歳以下)女子ワールドカップ(W杯)でスタンドへ旭日旗の持ち込みを認めるか否かで混乱させた。日本協会(組織委員会)が過剰なまでに韓国などに配慮したのが原因だった。
ちょうど10年前の2002年、日韓で共同開催されたW杯でのこと。韓国内で取材に当たったが、日本の試合では韓国の人たちは相手チームを応援し、日本がゴールを奪われると拍手し、日本がゴールすると、ため息。周囲に日本人がいようがおかまいなしだ。共同開催による形ばかりの日韓友好なんて白々しいと思ったものだ。
今回、メッセージボードは世界中が注目する五輪の舞台、しかも、日本がかかわった試合で韓国を代表する選手によって掲げられた。その事実は重い。必要な時は、声を出してモノを申すべきだ。それで壊れる友好関係など、それだけのものでしかない。
(運動部次長 江目智則)