“橋下新党”と安倍氏
大阪維新の会は公約に憲法改正を掲げている。維新八策では「憲法改正~決定できる統治機構の本格的再構築」として、「憲法改正発議要件(96条)を3分の2から2分の1」などを掲げている。
実は、維新がよく主張する地方分権も本格的に行うとすると、憲法改正が必要になってくる。地方への権限委譲のために、地方の条例制定権の自立をしようとすると、憲法94条の改正も必要になってくる。こうした問題意識は安倍政権の時と同じだ。当時、安倍晋三首相に「地方分権をやろうとすると、いずれ憲法改正になる」と申し上げたところ、安倍氏は「国のかたちを変えるのだから当然である」と答えていた。
ただし、日本で憲法改正というとすぐに9条改正という話になって、これまで憲法改正の話自体がタブーであった。ところが、世界に目を向けると、憲法改正自体はそれほど珍しいことではない。
戦後における世界各国の憲法改正回数について調べると、アメリカ6回、カナダ18回、フランス27回、ドイツ57回、イタリア15回、オーストラリア3回、中国9回、韓国9回。ところが、日本はゼロだ。
憲法96条では、憲法の改正のためには、「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行われる投票において、その過半数の賛成を必要とする」とされているが、肝心の具体的な手続きが憲法上規定されていなかった。そのため、憲法96条に基づき憲法改正しようにも、2007年までに事実上できなかった。
そこで、安倍政権時代に、憲法96条をワークさせるために、手続き法である「日本国憲法の改正手続に関する法律」(国民投票法)を制定した。
具体的な憲法改正については、国会議員(衆議院100人以上、参議院50人以上)の賛成により憲法改正案の原案が発議され、衆参各議院においてそれぞれ憲法審査会で審査されたのちに、本会議に付される。両院それぞれの本会議にて3分の2以上の賛成で可決した場合、国会が憲法改正の発議を行い、国民に提案したものとされる。
国民投票は、憲法改正の発議をした日から起算して60日以後180日以内において、国会の議決した期日に行われる。国民投票で過半数の賛成となるわけだ。
もし維新の会が国会で主導権を握れば、一番初めに出てくる憲法改正案は、96条の発議要件を3分の2から2分の1に緩和することだろう。その改正案を今の96条と国民投票法によって、実現を図ることとなる。
このようなことから、大阪維新の会と安倍元首相は憲法改正に向けて共通の価値観があるといえる。安倍元首相は、憲法改正へ国民的な議論を行うためには、大阪維新の会の勢力が必要になってくると考えているが、これまでの経緯をみれば当然なのである。
(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)