昔の爺さんたちは威勢がよかった。若けえモンなんぞに負けてたまるかいと、肩で風を切って町内を歩いた。天下国家を語り、男の道を説いた。不届きな若者には筋の通った説教を垂れ、見も知らぬ悪戯小憎をしかり飛ばした。銭湯の熱い湯船に断りもなく水なんぞ入れようものなら、「埋めるんじゃねえ!」と怒声を発した。
気がつけば時代が変わり、その手の爺さんは絶滅してしまった。現代の爺さんはヘンに優しくて弱々しい。あそこが痛い、ここが悪いと、背中を丸めて病院に通いつめる。若い連中を相手に啖呵をきることもなく、気の効いた警句を発する事もない。何だか元気な婆さんの蔭でひっそり生きている雰囲気だ。
だから、石原都知事が目立つ。年寄りとか爺さんなんて言い方は失礼なのは百も承知だが、ご年配からいけば後期高齢者だ。にもかかわらず、かくしゃくとした姿はダンディで男の色気が漂う。いつも背筋をピンと伸ばし、お国のために命を捨てる覚悟で、日本のあるべき姿を語る。石原さんほどの知性や経験や国家観はなくとも、昔の爺さんたちは何か共通するスピリットや愛国心を持っていたなと懐かしくなる。
さて、その石原都知事が「野田政権は日本人の政府ではない」と云いきった。そうだ、と膝を叩いて納得する。支那にひれ伏して、わが国の名誉を傷つけ、領土領海を放棄するような連中は日本人ではない。さすがは石原さんだ。ひと言で全てを表現してくれた。
石原都知事は野田首相との会談時、都の尖閣諸島寄附金への浄財15億円を国に譲渡する可能性を示唆したらしい。都知事が最適と判断するなら、それもいいだろう。しかし息するように嘘をつく民主党 政権を、そんなに易々と信じていいのか。浄財をネコババされる怖れはないのか。出来ることなら当初の考え通り尖閣諸島を東京都で購入し、実効支配を進めてもらいたい。われわれ国民が信じられるのは都知事だけだ。政府は信じられない。
ところで、石原都首相誕生の可能性はもう無いのだろうか。最近、石原新党の話をふっつりと聞かなくなった。淋しい。