インドネシアの超エリート養成校訪問記 | 皇国ノ興廃此一戦二在リ各員一層奮励努力セヨ 






次世代の国家を担う若者は厳しく躾けられて育つ


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2012.08.27(月夏川 和也:プロフィール






 縁があって過日、インドネシアのエリート養成学校(3年制の高校)の創立20周年の記念式典に参加する機会を得た。スマトラ島のバリゲに所在するヤヤサン・ソポスルング(YAYASAN SOPOSURUNG)校である。整斉かつ熱意のみなぎる式典並びに本校設立の目的と経緯、そして実情は大変興味深いものがあったので、紹介する。

大物の政財界人によって設立された学校

集合中の生徒たち、背景は校舎

 


 本校は、1992年に2人のインドネシア政・財界の大物によって設立された。1人は、シララヒ(T.B.Silalahi)元陸軍中将であり退役後は、スハルト政権下1993年から1998年にかけて政治改革担当大臣として手腕を発揮、大統領の厚い信任を得た。

 ユドヨノ現政権においても、大統領顧問会議委員・中東問題担当大統領特使・安全および軍に関する顧問など等の任にあり、ユドヨノ大統領が最も信頼するアドバイザーであり、側近中の側近と言われている。

 出身地であるバタク地方(北スマトラ州)の子供たちが貧しさゆえに高等教育を受けられないことに心を痛めていたシラヒヒ将軍は、無償で教育することを思い立った。

 開校から現在に至る経緯の中でその思いはさらに進展して、入学対象も全国に広がり、厳しい選抜試験に合格した生徒にスカラーシップを与え、次世代のインドネシアの政治・経済を担う真のリーダーを育成することを目的としている。

 シラヒヒ将軍の思いに同調し協力したのが、インドネシアの大財閥アータ・グラハ銀行グループの総帥トミー・ウィナタ氏を始めとした財界首脳である。

 シララヒ将軍が私財を投じて設立した財団法人ソポスルングが主体となり学校の諸施設を建設し、教育省との折衝・協力によりカリキュラムや教員の充実を図ってきている。

 本校は全寮制であり、当初は無償であったが現在は生徒の親が任意で費用を負担している。

 本校の目的は「次世代のインドネシアの政治・経済を担う真のリーダーを育成する」ことであることは既述したが、この目的を達成するために、段階的にいくつかの項目に考え方がまとめられている。

今後の情勢

 情報技術の発達は、日常生活にインパクトを与える。政治・経済・socio-cultural and
technological issuesは相互にそして全球的に影響をする。

 これは、世界がより複雑にかつより予測困難な社会になることを意味する。そして、より激しい国家間・組織間そして個人相互の関係での競争が生じることを意味する。このような状況を踏まえて、展望と任務を下記の通りとした。

展望(Vision)

●人的資源における質の包括的な向上
●人的資源の質を向上させるために必要な質の高い教育
●質の高い教育には、個人的なintegrityと国家および国際的なmaster knowledgeを有する人材の育成

任務(Mission)

●強いdiscipline(規律、しつけ、修養)、brilliance(輝き)、superior character(高い才能)、 and virtue(美徳)を身につけさせる。
●生徒には、国内的にも国際的にも、高い学問的能力を身につけさせるとともに、高い競争力を持たせる。
●生徒が国家的精神を持ち、国を愛し、そしてやがて彼らの母国にお返しをするように育てる。

 このような情勢判断・展望・任務は、現場でどのように展開されているのであろうか。

 教育:国家教育省がInternational Standard programの指定校としており、英語の教育には熱が入っている。

 英語、化学、物理、数学、生物学は英語で授業が実施され、シンガポールと英国からボランティアの英語教師の派遣を受けている。また、月・水・金を英語の日と定め学生は相互の会話を英語で実施することになっている。

 さらにAAAT(Agency for the Assessment and Application of Technology)との協力協定を結び下記の項目に重点を置いている。

●数学、自然科学における体験学習と検索技術および実用化技術
●教官の能力向上
●優秀者に対する国内外での研修機会の提供
●技能向上
●環境関連知識・技能の向上

 1学年1クラス制で、各学年90人、全校生徒270人が現在の生徒数であり、生徒は各学年の1位、2位、3位を目指し年間を通し競争、年度末に計9人名が優秀者として表彰される。

施設

生徒館:授業、討論、その他のイベント。この建物は大手ホテルチェーン傘下のLyman Group所有者一族からの寄付

語学センター:各種の視聴覚装置を備え、同時に40人の生徒が学習できる。教師は英語ネイテイブ。機器と教師の派遣は労働省が負担。

コンピューターセンター:インターネット接続のコンピューターを40台設置。コンピューターの使用法やプログラミング・データベースを学習。センター外にも約60台のコンピューターがあるが、ほとんどが卒業生の寄付。

図書館:学業に関するもの、それ以外のものを含めて多くの蔵書がある。

食堂:6人がけのテーブルで一堂に会して食事。躾の重要な場である。

ホール:種々の催物に使用。

生活

居住区:男女別棟 4人部屋、2段ベット、寝室・自習室同室。
楽器演奏室:近代音楽愛好者用のフルバンド用楽器および伝統音楽愛好者用のバタク地方の伝統的な楽器。

体育施設:バスケット、バレーボール、卓球、サッカー、空手、水泳。

指導教官:スポーツの指導教官、生活全般の指導教官(陸軍および海兵隊)、ケアーテーカー、クリニック

 


 本校の特徴は以下に述べる生活にある。

日課(通常:月~金)


0450-0500 起床
0500-0530 早朝トレーニング
0530-0615 シャワー、学業服への着替え
0615-0645 朝食
0645-0700 庭掃除
0700-0710 朝礼
0710-0730 教室への移動(行進)
0730-1400 授業
1415-1445 昼食
1445-1500 別課準備
1500-1800 別課
1800-1830 シャワー
1830-1900 夕食
1900-2100 自習(強制)
2100-2130 ニュースの視聴
2130-2230 自習(任意)
2230-0450 休息

金曜日は上記に加え、1200-1300 金曜礼拝(モスレム)
土曜日は上記に加え、1530-1630 学園内掃除、1630-1830 スポーツ(自由)

別課 強制:補修科目、進学ガイダンス、英語、スポーツ=空手、水泳
選択:サッカー、バスケット、音楽、読書、料理、ジャーナリズム

強制別課の空手

月2回の実家での外泊が週末に許可

 2230に就寝し0450に起床した後は、いろんな日課がびっしりと、しかも時間が指定されて整然と実行されていくのである。さらにクラス全員で移動する際には、整然と行進をする。

 別課は全員参加であり、日課・行事に遅刻した場合には、罰として腕立て伏せが課せられる。 そして1人の過ちの罰は、所属するグループ全員が受ける。

選択別課の音楽

 


 居住施設では、部屋およびロッカーを清潔で整然として置くことが求められるし、衣類の収納は、定められたサイズに折り目正しく畳んだ上で積み重ねることが要求される。

 食事も鍛錬の場であり、開始に当たってスーパーバイザーに報告することが求められている。そして約束事が整然と実施されるようにするために指導官として、現役の陸軍・海兵隊の隊員が配属されているのである。

財団の理事長であるシラヒヒ将軍はスピーチの中で下記の4点を強調していた。

●規律
●Character(IQだけでなく、EQ(emotional)、SQ(spiritual) )
●仲間意識
●すべての事柄を真心を持って遂行せよ。

陸軍・海兵隊軍人の指導官

 

 このような生活指導によって規律と仲間意識がそしてCharacterの大部分が形成されていくのであろう。

 危惧すべきは、規律の維持および仲間意識の醸成のための指導が歪んだ形になることであろうが、短時間とはいえ滞在中の職員等の言動は、まさに最後の強調項目である「すべての事柄を真心を持って遂行せよ」という指導が行き渡っていることを伺わせるものであった。

 シラヒヒ将軍のスピーチは長時間に渡るものであったが、インドネシアを憂う気持ち、若者達への期待、若者達を愛おしむ気持ちに溢れたものであり、その思いが自然に生徒たちに伝わるのであろう。

 加えて、卒業生が既に職員として活動しているが、彼らが将軍の想いを十分に咀嚼して生徒たちの指導にあたっているのであろう。

視察中のユドヨノ大統領、閣僚の姿も見える

 


 式典には2人の国務大臣と政府要職にある人物および財界の要人も臨場していたが、常日頃からの国としての彼らへの期待の大きさを表すものであり、このことも生徒たちの自覚を促す大きな要因となっていると思われる。

 厳しい規律のもとでの団体生活は、ややもすると意図と反する結果を生むことがあるが、本校においては全く心配はなく、素晴らしい成果を上げることを確信した。

 インドネシアは、国力の重要な要素である国土の広さ、人口、資源という面では世界有数の国である。現状はそれらの利点が十分に生かされているとは言いがたいが、将来の姿を見据えその実現に向けて私財を擲って努力をする政・財界の重鎮が存在し、その期待に答える若者が育っている。

 国家への忠誠心、仲間意識、均斉のとれた性格を有する若者たちが中心となって社会を牽引していくようになれば、素晴らしい国になることであろう。

 世界地図を見れば、誰でも分かることであるが、インドネシアは日本経済の原動力である海上交通路に面しており、南シナ海を取り巻きかつ中国の海外への膨張を抑える形で位置しているアセアン諸国の牽引役であり、南半球で存在感を持っているオーストラリアとも一番近い国である。

 その安全保障上の重要性は、日本・インドネシア間の経済活動とともに、我が国にとって極めて重要な国である。 そのインドネシアの将来が明るいことは、日本にとっても大変に喜ばしいことであろう。

 インドネシアの発展と、インドネシア・日本関係の増進を心から願うものである。