【古典個展】立命館大教授・加地伸行
芸は身を助くということわざがある。なるほど。
そう言えば、われわれ中国思想(中国哲学)の研究者は貧乏暮らしが当たり前であるが、首が飛んだり、いざというとき、なんとか食べていける芸がある。
それは、商売道具である古典のひとつ、『易』を生かすこと。つまりは大道易者にすぐなれること。
もちろん、本格派であるから、そこらの安物の大道易者とは格が違う。ということはさておいて、久しぶりに易占(えきせん)をしてみた。
そのテーマは、韓国大統領がわが国土、竹島へ不法侵入したことについてである。
すると、占いにこう出た。なんと出(で)も出たり「訟(しょう)」という卦(け)であった。卦とは、その占いの結果であり、その卦の意味はもとより、さらにはそこからの変化(将来)の予言も出る。
それらを整理して言えば、こうだ。「訟」とは、もちろん「争い」であり「訴訟」である。
この争いを強引に行おうとする結果は「凶」と出ている。しかも「大川(たいせん)を渉(わた)るに利あらず」とある。
「大川を渉る」すなわち大川(大問題)に突っ込んだ場合「利あらず」ということ。
それをこう説明している。「大川を渉るに利あらずとは、淵(ふち)に入るなり」と。危険を冒すと深み(淵)にはまってしまうという意味。
ま、そういうことだ。
歴代韓国大統領の大半は、退任後、検察の手にかかっている。中には[疑惑に]耐えきれなかったのか、思いがけない形で亡くなった人もいる。
最近、現大統領も実兄が不正資金事件で逮捕、起訴されたとのこと。と言うことは、任期満了後のご本人の運命も想像できる。そのとき、話をすりかえて、自分は愛国者である、行動で示した、などと言い逃れできる実績作りとしての竹島不法侵入であろう。
「訟卦」の変化にはこうもある。「訟に克(か)たず」と。そのとき「[村へ]帰りて逋(のが)る(逃る)。その邑人(ゆうじん)(村人)三百戸にして、●(わざわい)(災)なし」と。竹島問題に失敗しても、逃げて三百世帯ほどの村里の長(今ならマンションの経営者?)としてつつましく暮らせば、敵(検察)に討たれることはなかろうという予言。当たるも八卦(はっけ)、当たらぬも八卦。
韓国は、大統領以下、どうしてこうも下手な喧嘩(けんか)を日本に売ってくるのだろうか。
韓国よ、冷静に周囲を見てみよ。この二千年間、中国に頭が上がらずにきたのは歴史的事実。中国が韓国を助けることは絶対にない。助けるときは属国にするときのみ。また北朝鮮とは、戦火を交える危険性が高い。ロシアはまったく信頼できない。友好国となってくれるのは、唯一、日本だけではないか。
中国は古代、魯国(孔子の祖国)の君主が遠くの国とばかり友好関係を結び、最も近くの国と親しくしないことに対して、或(あ)る重臣が諫言(かんげん)した。そのとき、こういう喩(たとえ)を述べた。もし失火したとき、その火を消そうとして遠い海から水を運ぼうとすれば、海の水量は多くても間に合わない。近くの川の水こそ大切-「遠水(えんすい)は近火を救わず」(『韓非子』説林上篇)と。
(かじ のぶゆき)
●=生の下に目